研究課題/領域番号 |
22K06749
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
|
研究機関 | 千葉科学大学 |
研究代表者 |
桝渕 泰宏 千葉科学大学, 薬学部, 教授 (10209455)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 薬剤性肝障害 / 細胞障害関連分子パターン / バイオマーカー / アセトアミノフェン / 四塩化炭素 / HMGB1 / 尿酸 |
研究開始時の研究の概要 |
薬剤性肝障害 (DILI) は医薬品の重大な副作用であるが、その発症予測は難しいため、バイオマーカーの活用が有効であるとされている。発症機構に基づいたDILIのバイオマーカーとして、死細胞や損傷細胞から遊離する細胞障害関連分子パターン (DAMP) がある。DAMPは非感染性炎症を惹起するため、DILIの進展や、逆に修復プロセスに重要な役割を果たす可能性が指摘されている。本研究では、実験動物を用いた基礎研究によりDILI発症におけるDAMPの役割を解明することを目的とした。さらに、見出されたDAMPの治療ターゲットとしての適性を評価し、DAMPの制御に基づいたDILIの防御法を提案する。
|
研究実績の概要 |
薬剤性肝障害 (drug-induced liver injury, DILI) の発症回避のため、様々なバイオマーカーの活用が提唱されている。このうち発症機構に基づいたDILIのバイオマーカーとして、死細胞や損傷細胞から遊離する細胞障害関連分子パターン (damage-associated molecular pattern, DAMP) がある。DAMPは、DILIの進展や逆に修復プロセスに重要な役割を果たす可能性が指摘されていることから、本研究では、DILI発症におけるDAMPの役割を解明することを目的とし、令和4年度は以下の検討を行った。 1.マウスDILIモデルの構築:実験動物に肝障害を惹起しうる医薬品としてアセトアミノフェン(APAP) による肝障害モデルマウスを作製した。同肝障害はグルタチオン(GSH)の枯渇を伴い、それによる特異の肝障害メカニズムを生み出す可能性があるため、GSH枯渇を伴わない四塩化炭素(CCl4)によっても肝障害モデルを作製した。 2.Nrf2活性化剤によるAPAP肝障害の防御:肝障害モデルの妥当性検証と防御物質スクリーニングの過程で、APAP誘発肝障害に対して、Nrf2活性化剤であるOPZが防御することを見出した。OPZは、APAPによる肝GSH枯渇後、その回復を促進し、NAD(P)H:quinone oxidoreductase (NQO1)を誘導したことから、酵素誘導による GSH回復促進が肝障害防御に寄与することが示唆された。 3.大豆イソフラボンによる炎症性サイトカインの抑制:これまでAPAPならびにCCl4誘発肝障害に対して、ゲニステインが抑制することを明らかにしてきたが、今回、CCl4誘発肝障害においてDAMPとして作用する炎症性サイトカインをゲニステインが抑制することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究実施計画として掲げた「マウスDILIモデルの作製」を達成でき、加えて「Nrf2活性化剤によるAPAP肝障害の防御」を達成できた。「Nrf2活性化剤によるAPAP肝障害の防御」は、APAP肝障害モデルの妥当性を検証することと、DAMP阻害による肝障害防御を達成するための防御物質スクリーニングを目的としたものであったが、今回、OPZというNrf2活性化剤によって、これまで報告のなかった、APAP肝障害に対する新規防御効果を見出すことができた。また、OPZは、肝GSHの減少ではなく枯渇からの回復を促進し、NQO1の発現を誘導した。これらの結果から、OPZは、肝GSHの回復促進を導く、種々の活性酸素種(ROS)の解毒に寄与すると考えられることから、ROSが低分子のDAMPとして肝障害進展に関与する可能性が示唆された。これとは別に、これまでAPAPならびにCCl4誘発肝障害に対して、大豆イソフラボンの一種ゲニステインが抑制することを明らかにしてきたが、今回、CCl4誘発肝障害においてDAMPとして作用する炎症性サイトカインをゲニステインが抑制することを明らかにし、CCl4誘発肝障害の性差発現とは異なるメカニズムと結論した。以上、研究の順序にやや変更があるものの、本研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の通り、令和4年度はマウスDILIモデルを構築するとともにNrf2活性化剤によるAPAP肝障害の防御ならびにゲニステインによるCCl4肝障害の防御の解明過程で、これら肝障害防御にDAMP抑制が寄与していること、延いては肝障害発現過程そのものにDAMPが関与する可能性に到達した。今後は、研究の順序に若干の変更を加える可能性はあるものの、当初の研究計画通り、血清DAMPの測定とDAMP暴露による過剰分泌モデルの作製、グリチルリチンを例にしたDAMP阻害によるDILI防御の検討、ならびに尿酸修飾薬によるDILI防御の検討を行い、肝障害発現に直接的にかかわるDAMPを同定するとともに、より効果的かつメカニズムに基づいた肝障害防御法を提案するためのデータを蓄積していきたい。
|