研究課題/領域番号 |
22K06753
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
千葉 康司 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (30458864)
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研究分担者 |
岡田 賢二 横浜薬科大学, 薬学部, 准教授 (00396673)
上田 秀明 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 副院長 (40276308)
若宮 卓也 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 医長 (70714781)
池川 健 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 医員 (70784841)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧症 / 小児薬効予測 / 小児薬物動態 / 母集団解析 / モデリング・シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療においては、早期に肺血管抵抗(PVR)を適切に低下させる必要がある。PVR測定は侵襲性が高いが、乳幼児など歩行困難な患者では代替え指標が適用できず直接測定されるため、測定頻度を減らさなくてはならない。PAH治療薬の投与量設定ではPVRの減少を指標とし、その精度の高い予測法が必要とされている。本研究では、主なPAH治療薬であるホスホジエステラーゼ5阻害薬およびエンドセリン受容体拮抗薬などについて、母集団解析モデルおよび標的蛋白に対する解離定数を用い標的蛋白占有率を算出することにより、標的蛋白ごとに共通な薬力学的モデルを構築し、臨床応用することを検討する。
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研究実績の概要 |
ホスホジエステラーゼ5(PDE5)選択的阻害剤であるタダラフィル(TAD)及びシルデナフィル(SIL)の母集団薬物動態解析(PPK)モデルを構築している。本年度はそのバリデーションおよび改良を行った。TADモデルについては、構築したPPKモデルに対して医療施設から得られたデータを用いてバリデーションを実施したところ、結果は概ね良好であった。この研究成果を関連学会にて報告した。SILについては、経口投与が困難な乳幼児患者に対し、院内処方による注腸投与を施した後に経口投与に切り替えることがある。この事例にも適用すべく、注腸・経口投与の同時解析モデルについて検討している。本年度は、このPPKモデルを構築し、そのバリデーションを実施したところ、注腸・経口投与の切り替え症例の例数が少なく、追加データを用いてさらに検討する予定である。本年度は、エンドセリン(ET)受容体拮抗薬であるアンブリセンタン(ABS)のPPKモデルについても検討した。既報PPKモデルを用いてデータを解析したところ、予測値は実測値よりも高値を示し、予測精度は不十分であった。このため新規モデルを構築することとした。今後このモデルのバリデーションを実施する予定である。PDモデルについては、医療施設から得られた情報を追加しTADの薬効予測について検討した。以前の解析において、薬物の平均血漿中濃度(Css)の上昇に伴い、薬効指標であるPVRI減少率が増加する傾向がみられていたが、データを追加したところ、その反応性は明確ではなくなった。この原因として薬物動態に対する薬効発現に時間的なずれがあることが考えられた。そこで投与後の時間とPVRIとの関係について検討したところ、累積曝露量が多くなるほど、PVRIは減少する傾向を示した。今後、この現象のモデル化を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度には、TAD及びSILについて、既報モデルでは予測精度が十分でないことが示され、新たなモデルを構築した。本年度は、この新規PPKモデルのバリデーションを実施した。また、バリデーションの実施とともに、その結果に基づくモデルの改良も行った。ET受容体拮抗薬については、既に報告のあるボセンタンPBPKモデルを再構築し、既報論文の結果を確認した。一方で、当初令和6年度に予定していたABSについて、分担研究者の施設からこの血漿中濃度データが多く得られたことから予定を繰り上げ、ABSのPPKモデルの構築を行った。PPKモデル解析については、概ね順調と判断される。 PDモデルについては、本年度、医療施設から新たなデータが得られたため追加したところ、薬物の推定Css対する薬効指標(PVRI)の減少は、むしろ明確ではなくなった。この原因の解明を試みたところ、効果発現の時間的ずれが考えられた。このため、累積曝露量について検討したところ、この値が多くなるほど、PVRIは減少する傾向を示した。今後、このモデル化を行う予定である。このように、当初の予定とは異なるものの、累積曝露量という新たな指標の可能性を見出せたことから、概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、PDE5阻害剤であるSILおよびTADについて新規に構築したモデルにおけるバリデーションを実施し、バリデーション時に認められた問題点を踏まえ、更なる改良がなされた。TADでは、小児に対する新規PPKモデルについて、欧文科学誌に投稿する予定である。SILのモデルについては、今後、注腸・経口投与の切り替え症例の更なるデータを収集し、モデルの適用性を確認する予定である。ET受容体拮抗薬では、ABSのPPKモデルについて検討し、既報PPKモデルでは、医療施設から得られたデータを用いた場合、十分な予測精度が得られず、新規モデルを構築した。令和6年度には、このバリデーションを実施するとともに改良を行う予定である。PVRIの減少を予測するためのPDモデルについては、累積曝露量の増加に伴うPVRIの減少の可能性が見出されており、令和6年度には、この新たなPK/PD特性について検討し、そのモデル化を行う予定である。また、薬剤の投与量、あるいは各種手術およびその時期とこの反応特性との関連性についても明らかにし、共変量としてモデルに組み込むことも検討する予定である。このモデル化の成否は、他の薬剤の肺動脈性肺高血圧症治療薬の検討にも影響を及ぼす。このため、ET受容体拮抗薬のPDモデルの構築、およびPPKとPDの連結については、令和7年度に実施となる。一方、当初予定していたSIL、TAD、ABS以外の各種PAH薬剤については、PK/PD特性の解明と平行して、既報PPKモデルを活用、または新たなPPKモデルを構築する予定である。令和6年度には、薬物動態関連の国際学会および臨床薬理関連の国内学会等に参加し、モデリング・シミュレーション、肺動脈性肺高血圧症治療薬の薬剤特性、および小児薬物動態特性に関する最新情報を収集するとともに、得られた研究成果を公表する予定である。
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