研究課題/領域番号 |
22K06764
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
橋本 征也 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (90228429)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | キニジン / ビソプロロール / 尿細管分泌 / プロトン/脂溶性カチオン対向輸送系 / 腎尿細管 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに申請者は、多孔性フィルター上に単層培養したLLC-PK1細胞の尿細管腔側に添加したキニジンの細胞への取り込みは、血管膜側に添加したそれに比べて顕著に大きいことを確認した。このため、本研究では「腎上皮細胞の尿細管管腔側膜に大量に存在する物質が、プロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の主要な分子実態である」との仮説検証を行う。リポソームおよびラットを用いた実験系により、腎上皮細胞の尿細管管腔側膜における特異的取り組みに寄与する分子実態解明と生理学的意義の解明を図る。
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研究実績の概要 |
申請者は、イヌ腎上皮由来MDCK細胞において、脂溶性カチオンであるキニジンがプロトンとの対向輸送によって取り込まれ、また排出方向にも輸送されることを2016年に世界に先駆けて報告した。この脂溶性カチオンの尿細管細胞における細胞輸送は、脂溶性カチオンによって特異的に阻害を受けるものの、水溶性カチオンによって阻害を受けないことから、水溶性カチオンに対する側底膜のOCTや冊子縁膜のMATEとは異なる輸送系によって媒介されると考えられた。その後申請者は、キニジンやビソプロロールが、ブタ腎上皮LLC-PK1細胞の惻底膜に比べ冊子縁膜において、プロトン/脂溶性カチオン対向輸送系によって強く認識されるという結果、およびビソプロロールのラットにおける尿細管の分泌が尿のpHによって顕著に影響を受けるとの知見を得た。さらにこのプロトン/脂溶性カチオン対向輸送系は、ヒト腎上皮由来のHEK293細胞にも発現していることを明らかにするとともに、基質認識性を検討した結果、脂溶性カチオンの脂溶性(logD値)と極性表面積(PSP値)に相関することを明らかにした。 上記の知見から申請者は、プロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の分子実体は、タンパク質であるトランスポーターでは無く、腎上皮細胞の冊子縁膜に多く存在する酸性リン脂質が少なくとも一部関わっていると考えた。しかし、ホスファチジルセリンを含むホスファチジルコリンのリポソームでは、脂溶性カチオンの取り込みに、極性表面積(PSP値)に有意な相関が認められなかった。そこで、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンに加え、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、コレステロールを添加した5成分系によるリポソームを作成したところ、基質認識性は脂溶性カチオンの脂溶性(logD値)のみならず極性表面積(PSP値)に相関することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5成分系によるリポソームによる脂溶性カチオンの取り込みを評価したところ、LLC-PK1細胞と同様に、基質認識性は脂溶性カチオンの脂溶性(logD値)のみならず極性表面積(PSP値)に相関することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
尿細管のプロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の分子実体が、酸性リン脂質を含む生体膜である可能性が明らかになったことから、従来より脂溶性カチオンのトランスポーターとして知られるP-糖タンパク質の関与を明らかにすることによって、尿細管のプロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の生理的意義について検討を加える。
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