研究課題
基盤研究(C)
本研究では、腸内細菌叢を介した腫瘍免疫応答が免疫チェックポイント阻害薬の有効性に与える影響と、そのメカニズムの解明を目的とする。第一に、臨床データを用いて、腸内細菌叢を変化させる各種併用薬と免疫チェックポイント阻害薬の治療効果の関連性を解析する。第二に、マウスを用いて、腸内細菌叢と腫瘍免疫応答の関連性を明らかにする。最後に、プレバイオティクスによる腸内細菌叢の改変によって抗腫瘍効果を向上させることが可能かを検証する。
本研究は、腸内細菌叢を介した腫瘍免疫応答が免疫チェックポイント阻害薬の有効性に与える影響とそのメカニズムの解明を目的としている。2022年度は、ドライ研究とウェット研究を平行して実施した。ドライ研究では、多機関共同後方視的観察研究として、進行・再発の非小細胞肺がんの一次治療として免疫チェックポイント阻害薬とプラチナ併用療法を行った患者を対象に、無増悪生存期間および全生存期間を調査した。我々は、治療開始時の併用薬と好中球数/リンパ球数比を組み合わせた指標が全生存期間と有意に関連することを見出した。一方、ウェット研究では、C57BL/6Jマウスにプロトンポンプ阻害薬(PPI)を2週間、1日1回腹腔内投与し、腸内細菌叢の変化を対照群と比較した。糞便はPPI投与前(day 0)と投与2週間後(day 14)で回収した。次世代シークエンサーを用いて糞便の16S rRNA遺伝子解析を行った結果、day 14におけるPPI投与群は、対照群と比較して、Lactobacillus属細菌が増加した。次に、上述のマウスに、大腸がん細胞(MC38)を右足大腿部に皮下投与し(day 0)、28日間腫瘍径を観察した。抗マウスprogrammed death-1(PD-1)抗体はMC38皮下投与後day 5、10、15、20、25で腹腔内投与した。腫瘍体積とday 28で摘出した腫瘍重量から、抗マウスPD-1投与群は、対照群と比較して抗腫瘍効果を示した。一方で、PPI投与マウスでは抗腫瘍効果が有意に減弱した。現在、再現性を検証している。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書に記載した通り、ドライ研究を完了した。引き続き動物実験を継続する。
2023年度以降は引き続き、マウスを用いて腸内細菌叢と腫瘍免疫応答の関連性の解明を目指す。
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Journal of Cancer
巻: 14 号: 5 ページ: 676-688
10.7150/jca.80517