研究課題
基盤研究(C)
本研究では、腸内細菌叢を介した腫瘍免疫応答が免疫チェックポイント阻害薬の有効性に与える影響と、そのメカニズムの解明を目的とする。第一に、臨床データを用いて、腸内細菌叢を変化させる各種併用薬と免疫チェックポイント阻害薬の治療効果の関連性を解析する。第二に、マウスを用いて、腸内細菌叢と腫瘍免疫応答の関連性を明らかにする。最後に、プレバイオティクスによる腸内細菌叢の改変によって抗腫瘍効果を向上させることが可能かを検証する。
本研究は、腸内細菌叢を介した腫瘍免疫応答が免疫チェックポイント阻害薬の有効性に与える影響とそのメカニズムの解明を目的としている。2023年度は、前年度に引き続きウェット研究を実施した。C57BL/6Jマウスに胃酸分泌抑制薬であるボノプラザンあるいはラベプラゾールを2週間投与し、腸内細菌叢の変化を対照群と比較した。糞便は馴化1週間後のボノプラザン投与前(day 0)とボノプラザン投与2週間後(day 14)で回収した。次世代シークエンサーを用いて糞便の16S rRNA遺伝子解析を行った結果、day 14におけるボノプラザン投与群は、対照群と比較して、β多様性が変化し、Lactobacillus属細菌が増加した。大腸がんモデルマウスを用いて、コントロール群、抗programmed death-1(PD-1)抗体群、ボノプラザン群、抗PD-1抗体とボノプラザン併用群の4群を比較した。抗PD-1抗体の抗腫瘍効果はボノプラザンで減弱する傾向を示した。別の胃酸分泌抑制薬のラベプラゾールでも同様の傾向がみられた。preliminaryな結果となるが、胃酸分泌抑制薬が腸内細菌叢を変化させた結果、腫瘍免疫応答を減弱させる可能性が示唆された。今後、FACSでインターフェロンγ産生CD8陽性T細胞の腫瘍への集積などメカニズム解明を目指す。また、抗腫瘍効果がキャンセルされることをキャンセルできないか、プロバイオティクスによる腸内細菌叢への介入を検証する。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書に記載した通りの実験スケジュールで進んでいるから
2024年度以降は引き続き、マウスを用いて腸内細菌叢と腫瘍免疫応答の関連性の解明を目指す。
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Journal of Cancer
巻: 14 号: 5 ページ: 676-688
10.7150/jca.80517