研究課題/領域番号 |
22K06798
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
堀口 幸太郎 杏林大学, 保健学部, 准教授 (10409477)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 下垂体前葉 / CD9 / 幹細胞 / 細胞表面抗原 / ニッチ / 下垂体腺腫 / 組織幹細胞 / SOX2 |
研究開始時の研究の概要 |
成体の組織幹細胞は、多分化能を持ち、ニッチという周囲環境によって制御され細胞供給源となる。内分泌器官である下垂体前葉には、PrimaryニッチとSecondaryニッチの2つが存在する。申請者らは、Primaryニッチ内の組織幹細胞が細胞表面抗原CD9を発現し、Secondaryニッチへ移動・増殖し、ホルモン産生細胞を供給することを報告した。本研究では、薬理学的にホルモン産生細胞増加を引き起こすモデルラットを作成し、組織幹細胞からホルモン産生細胞への分化開始因子を同定する。これにより、組織幹細胞の分化によるホルモン産生細胞供給機構の解明となり、下垂体腺腫の新たな治療法の開発につなげる。
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研究実績の概要 |
成体の組織幹細胞は、ニッチと呼ばれる周囲環境によって制御されて、組織内の細胞がターンオーバーする際の供給源となる。内分泌器官である下垂体前葉には、PrimaryニッチとSecondaryニッチが存在する。申請者らは、ラットを使い、Primaryニッチ内の組織幹細胞が細胞表面抗原CD9を発現し、Secondaryニッチへ移動・増殖し、血管内皮細胞とホルモン産生細胞へ分化することをこれまでに報告した。本研究の目的は、プロラクチン(PRL)細胞、成長ホルモン(GH)細胞、甲状腺刺激ホルモン(TSH)細胞それぞれが増加する腫瘍化モデルラットでのPrimaryニッチにおける組織幹細胞の分化開始を組織学的に観察し、さらに申請者が成功したラット下垂体前葉組織幹細胞の純化法を利用して、それぞれのモデルラットにおけるPrimaryニッチのCD9/SOX2陽性細胞を単離し、RNA sepを利用し、分化開始因を同定することである。2023年度は、GH産生腺腫を引き起こす成長ホルモン放出ホルモンを腹腔投与したラット、TSH産生腺腫を引き起こすプロピルチオウラシルを飲水投与したラットを作成し、Primaryニッチの成体組織幹細胞数及びGH細胞、TSH細胞の割合を計測し成体組織幹細胞からのそれぞれのホルモン産生細胞供給を目視化し、論文として報告した。さらに生理条件でPRL細胞の増加が見られる妊娠ラットとコントロールラットのPrimaryニッチの組織幹細胞を申請者が確立した方法で単離し、RNA seq解析を外部に委託注文し、PRL細胞への分化トリガー因子の抽出に成功し、その解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット下垂体前葉のPrimaryニッチであるマージナルセルレイヤーのCD9/SOX2陽性細胞がCD9陽性、SOX2陰性、ホルモン陽性を示す分化途中の細胞が免疫染色で確認できることを報告している(Horiguchi et al. Histochem Cell Biol. 2021)。では、その分化開始トリガーは何か。その解明のために、申請者は、それぞれのホルモン産生細胞特異的に増殖するモデルラットを作成した。GH細胞増加には、ラット飼育時の床敷きの代わりに水深1㎝の水を張って5日間飼育する水ストレス後に通常の床敷きに戻して2日間リカバリーすることで引き起こした。さらにGH放出ホルモンを腹腔投与することでGH産生腺腫ラットを作成した。またPRL産生腺腫ラットとして、エストロゲンアナログであるジエチルスティルベストロールを投与して作成し、さらに妊娠ラットではPRL細胞が増加するためそれを利用した。TSH産生腺腫モデルラットとして、プロピルチオウラシルを飲水投与したラットを作成した。このモデルラットとコントロールラットのPrimaryニッチの組織幹細胞を申請者が確立した方法で単離し、RNA seq解析を外部に委託注文し、そのデータ解析を行った。その候補因子として、WNTシグナルとNOTCHシグナルに関わる因子の変化を同定している。2023年度に2報の投稿論文が掲載されており、1報投稿中である。研究業績から鑑みても当初の計画通りに進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、RNA seqのデータ解析を行う。既にGH、TSH、PRL細胞へ分化するとき、腫瘍化するときのトリガー候補因子を抽出している。特に、WNTシグナルに関わる因子とNOTCHシグナルに関わる因子の分化に伴う遺伝子発現変化を同定した。これらのシグナル分子の下垂体前葉でのリアルタイムPCR、in situ hybridizationを用いた発現解析、免疫組織化学を用いた局在観察を今後さらに詳細に行っていく。さらにそれぞれの因子の発現を抑制した際に、CD9/SOX2陽性細胞からの分化スイッチが入らないことを確認しようとしている。その方法としては、単離した組織幹細胞であるPrimaryニッチに存在するCD9/SOX2陽性細胞からsphereを形成させ、それら遺伝子発現をsiRNAによって抑制させ、分化誘導を引き起こした際の分化効率を計測し、どのシグナル分子が分化促進トリガーであるのかを決定する。以上を明らかにしていくことで、下垂体前葉の組織幹細胞からのホルモン産生細胞分化トリガー、腫瘍化トリガーの解明という本研究の最終目標を完遂する予定である。
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