研究課題/領域番号 |
22K06801
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
小林 孝 愛知医科大学, 分子医科学研究所, 助教 (00722216)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | iPS細胞 / ヘパラン硫酸 / 細胞分化 / プロテオグリカン |
研究開始時の研究の概要 |
ヘパラン硫酸は細胞外マトリックスや細胞表層に局在するグリコサミノグリカンと呼ばれる硫酸化糖鎖で、多様な生理活性分子と特異的に結合することにより、そのシグナル伝達を制御している。本研究ではiPS細胞の各細胞系譜分化誘導過程でのヘパラン硫酸の構造と機能の解明を試み、細胞分化過程での同糖鎖の役割の実体解明を目指す。
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研究実績の概要 |
ヘパラン硫酸は細胞外マトリックスや細胞表層に局在するグリコサミノグリカンで、多様な生理活性分子と特異的に結合することにより、そのシグナル伝達を制御している。幹細胞から各種組織細胞への分化過程でヘパラン硫酸の修飾・生合成酵素遺伝子には著しい発現変動がみられ、それに伴いヘパラン硫酸の構造も目覚ましい変化を遂げる。そこで本研究では、ヒトiPS細胞の各細胞分化過程でのヘパラン硫酸の構造解析、ヘパラン硫酸と結合すると想定される生理活性分子の同定、ゲノム編集等によるヘパラン硫酸の人為的構造変化によって各細胞系譜におけるHSの糖鎖構造の機能を明らかにする。2023年度は1)CRISPR/Cas9法によってヘパラン硫酸の合成酵素EXT1、EXT2、硫酸転移酵素NDST1、HS6ST1のノックアウトiPS細胞株の樹立を試み、各遺伝子のノックアウト細胞株および一部の遺伝子のダブルノックアウト細胞株を樹立した。2)各ノックアウト細胞株の三胚葉分化に対する影響を調べた。胚様体形成アッセイを用いた実験では、HS2STノックアウト細胞でPAX6、OTX2などの外胚葉マーカー遺伝子の上昇とSOX17の内胚葉マーカー遺伝子の減少が確認された。一方で、HS6ST1ノックアウトではHAND1などの中胚葉マーカー遺伝子の減少がみられた。EXT1ノックアウト細胞とHS2STノックアウト細胞では誘導前からPAX6の上昇が見られており、分化しやすい状態にある可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞分化前後でのヘパラン硫酸の構造的変異の解析に時間を要している。ヘパラン硫酸O-硫酸転移酵素 HS6ST1はヒトゲノム中に偽遺伝子があることがわかったため遺伝子型の特定に時間を要した。この偽遺伝子はデータベースの配列では完全なORFを持っていたが、現在使用している細胞株では一部の配列に変異が入っており酵素活性はないと推測されるので以降の研究には支障がないと考えられる。ヘパラン硫酸の構造と機能の比較のため合成酵素である、EXT1とEXT2のノックアウト細胞をそれぞれ樹立した。EXT1ノックアウト細胞は正常細胞と同様の増殖性を示したが、EXT2ノックアウトは対数増殖期の中後期くらいから増殖性の低下がみられた。外胚葉・中胚葉・内胚葉それぞれへ分化誘導を行った結果、EXT1ノックアウト細胞は外胚葉分化誘導においてPAX6の発現が顕著に高くなっていた。この発現上昇は正常細胞よりも早い段階から起きており、神経外胚葉への分化が亢進している可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
作製したノックアウトiPS細胞株を各臓器細胞へ分化誘導し、その性状に違いがあるか検証する。外胚葉分化において顕著な違いが見られており、神経系への分化を優先的に検討する。その後、ヘパラン硫酸の構造から影響のあったと思われるシグナル系を同定する。以上を論文としてまとめる。
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