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抑制性シナプス形成の分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K06805
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分48010:解剖学関連
研究機関群馬大学

研究代表者

岩崎 広英  群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30342752)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
キーワードシナプス / 抑制性 / テニューリン2
研究開始時の研究の概要

脳には無数の神経細胞があり、それらが互いにネットワークを形成して神経回路をつくることで様々な脳機能を実現している。神経細胞どうしがネットワークをつくる際、シナプスと呼ばれる構造を介して情報をやり取りすることが知られているが、シナプスには大きく分けて興奮性と抑制性の2種類があり、それらがバランスよく形成されることが正常な脳機能に重要であり、そのバランスの崩れは発達障害や精神疾患を引き起こすと考えられている。本研究では特に抑制性シナプスに注目し、どのようなしくみで抑制性シナプスが作られるのかについて分子レベルで明らかにする。

研究実績の概要

本研究課題では抑制性シナプスの形成について、特にシナプス形成初期に関わる膜タンパク質テニューリン2に着目して解析を進めてきた。
その結果、テニューリン2の細胞内ドメインには微小管結合タンパク質であるEB1/3と結合できるモチーフがあることを見出した。このモチーフを遺伝子工学的に改変した分子を細胞に強制発現させると微小管との相互作用が阻害され、とくに神経細胞に過剰量発現させた場合は抑制性シナプスの形成が阻害されることを見出した。一連の解析を通じて、テニューリン2はEB1/3を介して微小管を形質膜近傍へと係留し、抑制性シナプス構成分子の膜近傍への集積を促すことで抑制性シナプスの形成に関わることを見出した。とくに抑制性シナプスにおける神経伝達物質であるGABAの受容体(GABAA受容体)の細胞表面への表出とテニューリン2の分子局在が良く対応することから、機能的な抑制性シナプス形成においてテニューリン2が重要な役割を担うことが明らかとなった。また、テニューリン2の抑制性シナプスにおける局在解析を通じて、抑制性シナプスは共局在する細胞骨格タンパク質によって分類可能であることを見出した。これらの研究成果を2023年度には論文として報告した。
テニューリン2の脳組織・個体レベルにおける機能についてさらに詳細に解明することを目的とし、テニューリン2の脳組織中での詳細な分子局在やテニューリン2と相互作用する分子の探索やテニューリン2の集積作用に関して分子レベルでの解明を目指す。またテニューリン2欠損マウスは既に作出済である。このマウスの行動について詳細に解析することで、テニューリン2の高次脳機能への役割について詳細に解析する。一連の解析を通じてテニューリン2を介した抑制性シナプス形成の分子メカニズムとその生理的意義について明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は、これまでの成果を論文として報告した。本論文において、テニューリン2がEB1/3を介して微小管を形質膜近傍へと係留し、抑制性シナプス構成分子の集積を促すことで抑制性シナプスの形成に関わることを示した。さらにGABAA受容体の細胞表面への表出にテニューリン2が深くかかわることを示し、機能的な抑制性シナプス形成においてテニューリン2が重要な役割を担うことを示した。
これら一連の解析は、主として海馬分散培養系を用いたin vitroの解析が主体であった。そこで、組織・個体レベルでのテニューリン2の機能について詳細に解析することを目指し、そのための実験条件の確立を重点的に行った。
まず、テニューリン2の脳組織における分子局在については、他のシナプス構成分子と同様、従来の免疫組織化学法では抗体の浸透が不充分であり、染色像を得ることが困難であった。そこで最近開発されたglyoxalを用いた固定法の改良を試みた。その結果、脳におけるテニューリン2の詳細な分子局在について明らかにすることができた。今後は得られた結果を元に、テニューリン2発現細胞の詳細なプロファイリングを行い、テニューリン2の脳における生理機能の解明に役立てる。
テニューリン2の集積作用については生化学的なアッセイ法を確立し、現在、分子間相互作用について詳細な検討を行っている。
テニューリン2欠損マウスについては既に作出済であったことから、行動解析に充分な個体数を確保するべく繁殖を重ねた。

今後の研究の推進方策

2024年度は本研究課題の最終年度となることから、これまでの成果を論文として報告することを目指す。
まず、現在解析を進めているテニューリン2の脳における分子局在については、特に海馬に焦点を当てて、テニューリン2発現分子の詳細なプロファイリングを進める。得られた結果を元に、海馬神経回路におけるテニューリン2陽性細胞の機能的意義について、イメージングを主体とした手法により解析を進める。
また、テニューリン2の分子集積作用については、テニューリン2分子内でどの領域が重要であるかについて大まかに絞ることができており、今後は1アミノ酸レベルでの詳細な検討を行う。また分子間相互作用の経時変化について定量的な解析を目指す。一連の解析を通じて、テニューリン2の細胞内における挙動を詳細に解明し、その生物学的意義と対応づける。
最後にテニューリン2の個体レベルにおける生理機能について明らかにするため、テニューリン2欠損マウスの行動解析を行う。既に充分な個体数が得られていることから、まずは行動バッテリー試験を実施し、情動・記憶・認知機能などにおけるテニューリン2欠損マウスの表現型について解析する。野生型と比較してとくに顕著に有意差が認められた項目については、さらに詳細な解析を実施する。
一連の実験を通じて、テニューリン2を介した抑制性シナプス形成の神経細胞内における挙動について分子レベルで解明すると同時に、脳における生理的意義について個体レベルで明らかにすることを目指す。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Interaction between Teneurin-2 and microtubules via EB proteins provides a platform for GABAA receptor exocytosis2023

    • 著者名/発表者名
      Ichinose Sotaro、Susuki Yoshihiro、Hosoi Nobutake、Kaneko Ryosuke、Ebihara Mizuho、Hirai Hirokazu、Iwasaki Hirohide
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 12

    • DOI

      10.7554/elife.83276

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Correlative microscopy and block-face imaging (CoMBI): a 3D imaging method with wide applicability in the field of biological science2023

    • 著者名/発表者名
      Tajika Yuki、Ishii Nobukazu、Morimura Yoshihiro、Fukuda Kyosuke、Shikada Mitsuaki、Murakami Tohru、Ichinose Sotaro、Yoshimoto Yuhei、Iwasaki Hirohide
    • 雑誌名

      Anatomical Science International

      巻: - 号: 3 ページ: 353-359

    • DOI

      10.1007/s12565-023-00705-x

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Insight into the function of a unique voltage-sensor protein (TMEM266) and its short form in mouse cerebellum2022

    • 著者名/発表者名
      Kawai T、Narita H、Konno K、Akter S、Andriani RT、Iwasaki H、Nishikawa S、Yokoi N、Fukata Y、Fukata M、Wiriyasermkul P、Kongpracha P、Nagamori S、Takao K、Miyakawa T、Abe M、Sakimura K、Watanabe M、Nakagawa A、Okamura Y
    • 雑誌名

      Biochemical Journal

      巻: 479 号: 11 ページ: 1127-1145

    • DOI

      10.1042/bcj20220033

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Recent technological advances in correlative light and electron microscopy for the comprehensive analysis of neural circuits2022

    • 著者名/発表者名
      Iwasaki Hirohide、Ichinose Sotaro、Tajika Yuki、Murakami Tohru
    • 雑誌名

      Frontiers in Neuroanatomy

      巻: 16

    • DOI

      10.3389/fnana.2022.1061078

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Editorial: Cutting-edge technologies for the comprehensive analysis of neural circuits2022

    • 著者名/発表者名
      Iwasaki Hirohide、Lee Kea Joo
    • 雑誌名

      Frontiers in Neuroanatomy

      巻: 16

    • DOI

      10.3389/fnana.2022.1101560

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 接着分子と細胞骨格分子による抑制性シナプス形成機序の解析2024

    • 著者名/発表者名
      一ノ瀬 聡太郎, 岩﨑 広英
    • 学会等名
      第129回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] テニューリン2がEBを介して微小管と相互作用することで抑制性ポストシナプスへのタンパク質集積が促進される2023

    • 著者名/発表者名
      一ノ瀬聡太郎、鈴木美博、海老原瑞穂、岩﨑広英
    • 学会等名
      第46回 日本神経科学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 抑制性シナプスの多様性解析2023

    • 著者名/発表者名
      一ノ瀬聡太郎, 岩﨑広英
    • 学会等名
      第128回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] シナプス構築部位におけるテニューリン2はタンパク質集積のための標しである2022

    • 著者名/発表者名
      一ノ瀬 聡太郎, 岩﨑 広英
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 抑制性シナプスの多様性解析2022

    • 著者名/発表者名
      海老原 瑞穂, 一ノ瀬 聡太郎, 鈴木 美博, 岩﨑 広英
    • 学会等名
      第110回 日本解剖学会 関東支部学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Teneurin-2 at synapse construction site is a signpost for protein accumulation2022

    • 著者名/発表者名
      一ノ瀬 聡太郎, 岩﨑 広英
    • 学会等名
      第45回日本神経科学大会 2022年7月1日
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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