研究課題/領域番号 |
22K06823
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
早坂 晴子 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70379246)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 免疫組織 / 転写因子 / 癌微小環境 / 腫瘍組織 / 組織微小環境 |
研究開始時の研究の概要 |
免疫組織や腫瘍組織には、線維芽細胞、血管・リンパ管内皮細胞、組織幹細胞などが存在し、これら非免疫細胞・非癌細胞の働きにより、免疫応答・腫瘍形成に必要な組織微小環境が維持されている。私が所属する研究グループによるリンパ節血管内皮細胞の遺伝子発現解析から、リンパ球移行を媒介する特殊血管高内皮細静脈 HEV の形成にともなって発現上昇する転写因子 が明らかになった。本研究では、リンパ組織構築・腫瘍組織形成における血管新生と転写調節シグナルを明らかにする。
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研究実績の概要 |
Dach1 は胎児期の肢芽、網膜、中枢神経、神経是、冠状動脈、成体では腎臓の糸球体上皮細胞で発現する転写因子であり、近年、リンパ節の血管形成および冠状動脈形成への関与が報告されている。血管形成における Dach1 の機能が明らかになりつつある一方で、腫瘍組織の血管形成における Dach1 の関与についてはわかっていない。そこで本研究では、腫瘍内血管形成および腫瘍増殖における Dach1 の関与を明らかにするため、全身で Dach1 を発現するノックインマウス (Dach1-Tg) および 血管内皮細胞特異的 Dach1 欠損マウス (Dach1-cKO) に LLC 肺がん細胞を移植し、免疫組織解析による血管の検出と腫瘍重量測定をおこなった。血管マーカー CD34 により腫瘍組織内血管面積を解析したところ、Dach1-Tg で形成された腫瘍組織では野生型マウスと比較して、CD34 陽性細胞血管内皮細胞割合の有意な増加がみられた。一方、Dach1-cKO で形成された腫瘍組織ではコントロールと比較して、CD34 陽性面積に減少傾向がみられた。以上のことから、Dach1 発現が腫瘍血管形成を促進する可能性が示唆された。次に、。LLC 腫瘍血管内皮細胞についてRNA-Seq 解析をおこない、WT とDach1-Tg間で比較したところ、Dach1-Tg では、血管形成に関与するパスウェイ (Angiogenesis、Blood vessel morphogenesis、Blood vessel development、Vasculature development) に含まれる遺伝子の発現がコントロールと比較して有意に増加していた 。以上のことから、Dach1は血管形成関連遺伝子発現により腫瘍内血管形成を促進させ、その結果LLC腫瘍増殖が亢進する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Dach1 恒常的発現が血管内皮前駆細胞からの血管新生を促進させる可能性を検討するため、初年度は、Dach1-Tgに移植した肺がん組織から血管内皮細胞を分離し、遺伝子解析を行った。本研究で予定している、腫瘍間質おける Dach1 発現が腫瘍を進展させる可能性については、今後腫瘍間質細胞を分離し、発現遺伝子発現解析を進める予定である。また、血管特異的に蛍光タンパク質 mTFP を発現するレポーターマウスを用いて LLC 腫瘍組織内血管構造解析をおこない、リンパ節全体、および厚みのある腫瘍組織の血管分岐、走行など血管構造解析に成功した。以上のことから、研究課題はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、リンパ節血管内皮細胞、腫瘍内血管内皮細胞を分離することに成功した。今後、Dach1 発現の有無で変動する遺伝子を抽出し、Dach1 の結合コンセンサス配列と照らし合わせることで、腫瘍血管内皮細胞における Dach1 のターゲット遺伝子候補を絞りこむ。 本年度は、DACH1 が腫瘍内血管の形態に与える影響を明らかにするため、mTFP レポーターマウスを用いて厚みのある組織における血管の検出を試み、mTFP レポーターマウスに形成された 100 μm の LLC 腫瘍組織において 30 μm の組織厚に相当する部分の血管を検出することができた。しかし、今回の組織では mTFP シグナルのコントラストが不足しており、DACH1 が血管分岐点や血管長などの血管形態に与えた影響を解析することができなかった。一方、mTFP レポーターマウスを用いたリンパ節血管の解析では、組織透明化処理をおこなうことで、厚みのある組織の血管分岐点や血管長の解析が可能であることが分かっている。今後、腫瘍組織の透明化により、DACH1 が腫瘍組織内の血管形態に与える影響を解析する。
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