研究課題/領域番号 |
22K06826
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷川 恵美 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (40765955)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | レム睡眠 / ドーパミン / 扁桃体 / マウス / 睡眠 |
研究開始時の研究の概要 |
扁桃体外側部におけるDAレベルを光遺伝学や化学遺伝学により調節することによりREM睡眠量を変えることが可能となることで、記憶や自律神経系の制御におけるREM睡眠の役割を明らかにすることができるため、睡眠障害における生活習慣病や精神疾患の発症メカニズムの解明に役立つ可能性がある。
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研究実績の概要 |
本研究では、レム睡眠の開始における扁桃体機能とドーパミンの関連に着目し、扁桃体の活性化とレム睡眠の開始に関与している神経経路とメカニズムを同定することで、レム睡眠ゲーティング機構を解明することを目的とする。睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返すという特徴的な周期を持っているが、どのようにして生成されているかは全く分かっていない。一方、ヒトの脳機能イメージングや頭蓋内記録の研究により、レム睡眠時に扁桃体が賦活することが示されているが、そのメカニズムや生理学的意義は全く不明である。脳幹・視床下部のモノアミン系ニューロンにおける睡眠覚醒状態に応じた発火パターンについてはよく分かっているが、ドーパミンニューロンについては不明な点が多い。本研究では、ファイバーフォトメトリー法や光遺伝学的手法などの神経操作と電気生理学的手法を用いて、ドーパミン動態が扁桃体機能にどのような影響を与えることで、レム睡眠を開始しているかを明らかにすることを目指す。さらにシングル核解析により、扁桃体機能の修飾に関わる分子メカニズムを明らかにする。レム睡眠の抑制に関与している神経核はこれまでに多く見つかっているが、レム睡眠の開始メカニズムに着目した研究は少ないため、どのようなメカニズムがレム睡眠を開始させるのかは未解明のままである。本研究では、ノンレム睡眠中における扁桃体内ドーパミン濃度の一過的上昇に着目し、レム睡眠の発動メカニズムに繋げている点に学術的独自性がある。さらに、睡眠時のドーパミンにおける扁桃体機能の修飾を分子神経科学的に明らかにし、レム睡眠ゲーティング機構の解明へ繋げ、睡眠・覚醒サイクルの生成機構や生理学的意義の解明に取り組む点に学術的創造性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は下記の研究項目に取り組むことができ、本研究はかなり進展した。 研究項目③:レム睡眠発動に関与する扁桃体内の細胞集団特性の探索 扁桃体に投射している腹側被蓋野ドーパミン作動性神経終末を活性化した後、扁桃体内の一部の細胞集団においてcFos遺伝子の発現量が増加しているため、TRAP2-iCreマウス(L. A. DeNardo., et al, 2019)を用いて、ドーパミンを介して興奮する扁桃体内の細胞集団の同定と機能評価を試みた。同定した細胞集団を薬理遺伝学手法にて刺激すると、レム睡眠が誘導されレム睡眠量が増加した。さらに、同定した細胞集団の投射パターンを観察したところ、レム睡眠の制御に関与している脳幹部分の脳領域にて多くの神経終末を確認することができた。このことから、扁桃体内でのドーパミン濃度の一時的な上昇により興奮した扁桃体内の細胞集団が、レム睡眠の制御に関与している脳幹部分の脳領域にシグナルを送り、ノンレム睡眠からレム睡眠への移行に関与していることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、レム睡眠発動に関与する扁桃体内の細胞集団特性の探索を行い、どのようにしてレム睡眠制御領域にシグナルを伝達しているのかを明らかにした。扁桃体に投射している腹側被蓋野ドーパミン作動性神経終末を人為的に操作し、レム睡眠を誘導することで扁桃体内の活性化される細胞集団をラベルすることができた。また、ラベルされた細胞集団がどのような脳領域に神経終末を投射しているのかを明らかにし、レム睡眠制御領域との関係性について示すことができた。 最終年度である2024年度は、ノンレム睡眠中における扁桃体内ドーパミン濃度の一過的上昇がどのように生み出されているのかについて探索を行い、睡眠・覚醒サイクルにおけるレム睡眠の生理学的意義の解明につなげたい。
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