研究課題
基盤研究(C)
N-アシル-PSは、ホスファチジルセリン(PS)のセリン部分のアミノ基に3本目の脂肪酸鎖が結合したリン脂質であり、脳などから単離されているが、生合成や分解のメカニズムはほとんど不明である。N-アシル-PSからの生成が想定されているN-アシルセリンは血管拡張・抗炎症・神経保護・骨形成などの生物活性を示す。本研究では、マウスにおけるN-アシル-PSの生合成及び分解経路を特定し、関与する酵素の実体を解明することを目的とする。
3本の脂肪酸鎖を有する「トリアシル型リン脂質」は、動植物を含む自然界で見出され、代表的なN-アシル-ホスファチジルエタノールアミン(PE)は、脂質メディエーターのN-アシルエタノールアミンの前駆体である。PEからN-アシル-PEを生成するN-アシル転移酵素としては、細胞質型ホスホリパーゼA2εと5種類のPLAATファミリー・メンバー(PLAAT1-5)が知られている。PEがホスファチジルセリン(PS)に置換されたN-アシル-PSも脳などから単離されており、血管拡張・抗炎症・神経保護・骨形成などの作用を示すN-アシルセリンの前駆体であると想像されるが、代謝に関わる酵素は特定されていない。上記N-アシル転移酵素がN-アシル-PS合成能を併せ持つ可能性を考え、ヒトまたはマウスからcDNAを調製し、組換えタンパク質を哺乳類細胞で過剰発現させた。これらの細胞を[14C]エタノールアミンまたは[14C]セリンの存在下で培養した後に脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィーで分離して放射能の分布を測定した。その結果、いずれの細胞においても[14C]エタノールアミンの標識により[14C]N-アシル-PEの生成を認めたのに対し、[14C]セリンによる[14C]N-アシル-PSに相当するバンドの生成は認められなかった。また、細胞ホモジネートを[14C]ホスファチジルコリン と非標識PSと反応させたが、 [14C]N-アシル-PSは検出されなかった。以上より、既知のN-アシル転移酵素によるN-アシル-PSの生成は証明できなかった。並行してPLAAT1とPLAAT5の遺伝子欠損マウスを作製し、それらの表現型を検討した。その結果、PLAAT1欠損マウスでは高脂肪食誘導性の肥満と脂肪肝が軽快すること、PLAAT5欠損マウスの精巣では抗炎症性N-アシルエタノールアミンのレベルが有意に低下することが示された。
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