研究課題/領域番号 |
22K06912
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
|
研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
阿部 雄一 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (00529092)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | ペルオキシソーム / 中枢神経系異常 / BDNF / グリア細胞 / Pex16 / 分裂障害 / メタボローム / 中枢神経 / 分裂異常 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内小器官・ペルオキシソームの形成障害およびその形態形成障害は脳中枢神経系障害を導くが、その病態発症機構は未解明であった。本研究では、研究代表者らが最近明らかにした脳由来神経栄養因子・BDNFおよびその受容体・TrkBの発現異常を介したシグナル伝達障害の詳細な解析により、ペルオキシソーム形成異常症における中枢神経系形態異常の分子機構を解明する。さらに、ペルオキシソームの分裂制御に関わる因子の欠損細胞における代謝異常を明らかにし、その病態発症との関連性を示す。
|
研究実績の概要 |
細胞内オルガネラであるペルオキシソームはエーテルリン脂質の生合成や極長鎖脂肪酸のβ酸化など様々な代謝反応を担っている。ペルオキシソームの形成はperoxin(Pex)と呼ばれるタンパク質群により行われており、その遺伝子の欠損はペルオキシソーム代謝反応の酵素タンパク質の輸送障害を引き起こし、ペルオキシソーム欠損症(形成異常症)を発症させる。ペルオキシソーム形成異常症は脳中枢神経系において重篤な障害を呈することから、脳中枢神経系の形態形成においてペルオキシソームは必須な細胞内オルガネラといえる。本研究は、ペルオキシソーム欠損による病態発症の分子機構解明を目的としている。研究代表者らはペルオキシソーム形成異常マウスを作製し、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびその不活性型受容体・TrkB-T1の発現増加が小脳形態形成異常を導くことを報告している。 今年度、CRISPR/Cas9システムにより培養グリア細胞においてペルオキシソーム形成因子PEX5のノックアウト細胞の樹立に成功した。この細胞において、BDNFの発現が増加していることを見出した。また、ペルオキシソーム欠損細胞において、サイトゾルに誤局在したカタラーゼが細胞質の還元化を導き、BDNF発現異常に関与することが明らかになっている。今年度は、サイトゾル局在性カタラーゼをTet-On発現系を用いて誘導する解析系を確立した。これら細胞を用いることでBDNFや TrkB-T1の発現異常の分子機構解明につながることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペルオキシソーム欠損マウスにおける小脳形態異常の病態発症機構に関して、BDNFおよびTrkB-T1の発現異常の分子機構解明は喫緊の研究課題といえる。しかしながら、生体を用いた遺伝子発現機構の解析は困難であることから、培養細胞系での解析法の確立が重要であると考えた。 今回、CRISPR/Cas9システムにより培養グリア細胞においてペルオキシソーム形成因子PEX5のノックアウトを試みた。その結果、PEX5ノックアウトによりペルオキシソーム形成に障害を呈するグリア細胞のクローン化に成功した。このペルオキシソーム欠損グリア細胞において、遺伝子発現をリアルタイムPCRにより解析すると、ペルオキシソーム欠損マウス小脳で観察されたBDNFの発現増加を見出した。 これまで、培養グリア細胞系においてサイトゾル局在性カタラーゼがBDNFの発現異常に関与することを見出している。今回サイトゾル局在性カタラーゼの発現誘導を行うTet-On発現誘導細胞の作成を試みた。カタラーゼにはC末端にペルオキシソーム局在化シグナルが存在しており、その領域を欠失させた変異体をTet-Onプロモーター領域下流に連結したプラスミドを作成し、安定発現株の作成を行った。その結果、ドキシサイクリン添加によりサイトゾル局在性カタラーゼの発現が誘導される細胞株の樹立に成功した。この誘導系を用いた他因子の遺伝子発現への影響を行っている。 以上のことから、ペルオキシソーム欠損による中枢神経系異常の病態発症機構解明を目的とした本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
ペルオキシソーム欠損による小脳形態異常の原因である、BDNFおよびTrkB-T1の発現異常の分子メカニズム解明の研究を推進する。今年度、CRISPR/Cas9システムを用いてペルオキシソーム欠損グリア細胞を樹立したが、今後は同様の手法を用いて神経細胞でのペルオキシソーム欠損細胞を作成する。 また、ペルオキシソーム欠損グリア細胞を用いてBDNFのプロモーター領域を用いたルシフェラーゼレポーターアッセイ系を確立し、発現調節にかかわる転写因子のプロモーター領域を特定する。また、細胞におけるBDNF受容体TrkBの活性化型(TrkB-TK+)および不活性型(TrkB-T1)の発現解析を行う。 今年度確立した、サイトゾル局在性カタラーゼのTet-On発現誘導細胞株に関して、ドキシサイクリン添加により発現変化が認められる遺伝子をRNAseqにより同定する。変化が認められた遺伝子に関して、より詳細な解析を進めていく。また、ペルオキシソーム欠損グリア細胞でもRNAseqによるmRNA発現解析を行う。 最近、ペルオキシソームおよびミトコンドリアの分裂に関わるダイナミン様タンパク質(DLP1)に対してGTPを供給するNME3が低酸素状態におけるミトコンドリアの分解に関与することが報告された。ペルオキシソームの分解にNME3が関与するか検証を進める。
|