研究課題/領域番号 |
22K06919
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
槇島 誠 日本大学, 医学部, 教授 (70346146)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ビタミンD受容体 / 急性肝炎 / 肝臓 / 炎症 / 免疫細胞 / 肝障害 / 代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、先行研究において見出した、ビタミンD受容体 (VDR) の欠損マウスにおいてKupffer細胞や好中球などの免疫細胞の貪食能などの機能低下が起こり肝炎の病態が変化する、という知見をさらに発展させ、肝障害マウスについてVDRの活性化または欠損の効果、細胞選択的VDR欠損マウスの影響、作用選択的VDRモジュレーターの薬理効果、さらに肝臓免疫細胞VDRシグナルとヒトの肝障害との関連性を検討することによって、VDRの免疫細胞選択的な新規機能を見出し、急性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎などの肝疾患の進展メカニズムにおけるVDRシグナルの役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究課題である肝臓免疫細胞におけるビタミンD受容体(VDR)の役割を見出すため、昨年度に引き続きナタマメ由来レクチンであるコンカナバリンA(Con-A)刺激による急性肝炎モデルの解析を行い、以下の結果を得た。 1.昨年度に実施したRNAシーケンス解析の再解析を行った。昨年度は複数検体をプールしたライブラリーを用いて野生型及びVDR欠損におけるコントロール及びCon-A投与の4群を1検体ずつで比較したが、有意差検定ができないため、変動遺伝子の抽出が困難であった。そこで、改めて野生型及びVDR欠損のCon-A投与群に絞り、各群3検体ずつを用いて2群間比較を行った。その結果、変動遺伝子が192個検出され、そのうち127遺伝子がVDR欠損によって発現低下し、65個の遺伝子の発現が誘導された。Gene Ontology解析を行った結果、ある種の免疫細胞のマーカー遺伝子の発現変化を見出した。 2.昨年度に作製した細胞選択的VDR欠損マウスを用いてCon-A刺激による急性肝炎モデルを検証した。コントロール、全身性欠損、肝細胞、ミエロイド系細胞及びKupffer細胞選択的欠損マウスにCon-Aを投与後、24時間後の血中トランスアミナーゼ値を比較した結果、コントロールと比較し、全身性欠損に加えミエロイド系選択的欠損マウスにおいても肝障害は減少した。先行研究ではKupffer細胞における活性酸素種産生異常を想定していたため、今後は単球、マクロファージ及び好中球の機能に焦点を当て、詳細な解析を進める。 以上、今年度は昨年度から準備を始めたRNAシーケンスや細胞選択的欠損マウスなどの新しい実験材料やデータを用いてVDRの作用標的となる細胞群をある程度まで絞り込むことに成功した。来年度はこれらの細胞の機能解析について詳細に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は野生型及び全身性VDR欠損マウスを用いたCon-A刺激による急性肝炎モデルの解析により、Kupffer細胞やマクロファージなど肝臓に存在する代表的な免疫細胞群についてVDR依存性の表面抗原による細胞分布に変化を認めなかったことから、免疫細胞の量的変化ではなく、何らかの質的及び機能的変化の関与が示唆された。そこで、今年度は遺伝子発現レベルでの変化を見出すこととし、昨年度は1検体ごとに解析したRNAシーケンス解析を今年度は各群3検体ずつを用いて再解析し、より精度の高い解析を行うことにより、これまで考慮していなかったある種の細胞群が関与を示唆する知見を得ることができた。また、昨年度より準備を進めていた3種類の細胞選択的VDR欠損マウスを用いた実験を実施した結果、予想に反してミエロイド系細胞選択的欠損マウスが全身性欠損マウスと同様にCon-A誘導性肝炎を減弱させる、という興味深い知見を得ることができた。Con-A誘導性肝炎の発症及び進展には主にナチュラルキラーT細胞及びT細胞の活性化、Kupffer細胞による活性酸素種産生が必要であることが知られているため、VDR欠損マウスのミエロイド系細胞は、何らかの機能変化によりこれらの免疫細胞群との相互作用に影響することが示唆された。 以上の結果より、今年度は昨年度より解析を大幅に進展させることができ、かつ肝臓に存在する多様な免疫細胞群の中からVDRの制御する免疫細胞をある程度絞り込むことに成功したため、研究はおおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、上記「研究実績の概要」で示した結果1、2を元に、以下について引き続き解析を進める。 1.RNAシーケンス解析で見出したある種の免疫細胞のマーカー遺伝子について、qPCRを用いて発現変化を再度確認するとともに、フローサイトメトリーを用いて細胞分布を解析する。以上の確認が得られた後、Con-A肝炎モデルにおける標的細胞の阻害剤や中和抗体を用いた実験を検討する。 2.細胞選択的VDR欠損マウスの解析を引き続き進める。今年度変化を見出したミエロイド系細胞選択的欠損マウスの解析を中心に、全身性欠損との表現型の比較や、骨髄由来の単球、マクロファージ、好中球などのミエロイド系を中心に、肝臓免疫細胞の詳細な機能解析を行う。これらの免疫細胞群について、コントロールや全身性欠損マウスと比較して明らかな変化を認めた場合、肝臓免疫細胞を用いたシングルセル解析を行い、肝臓免疫細胞の全体像を解明し、VDRによる変化を見出す予定である。 以上、来年度も上記の通りCon-A誘導性急性肝炎モデルの解析を進めるが、本モデルで見出されたVDR欠損による免疫細胞の変化が他の肝障害モデルにおいても観察されるのかを検証するため、食餌誘導性の脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎などのモデルについても実施する予定である。
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