研究課題/領域番号 |
22K06933
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 元彦 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40292122)
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研究分担者 |
山村 彩 愛知医科大学, 医学部, 講師 (40633219)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 転移性前立腺がん / ホルモン抵抗性前立腺がん / G蛋白質 / 細胞内情報伝達 / 三量体G蛋白 / 細胞内情報伝達系 |
研究開始時の研究の概要 |
ホルモン非感受性の転移性前立腺癌の治療には一層の改善が求められている。最近、申請者はヒト転移性前立腺癌細胞にG蛋白活性調節因子(Activator of G-protein signaling 8、AGS8)が高発現しているという予備検討結果を得た。本研究では、AGS8が前立腺癌の新規治療標的となるか、癌細胞のAGS8を抑制し増殖抑制効果を検討する。
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研究実績の概要 |
DU145細胞へのsiRNA導入をエレクトロポレーションにより行い、AGS8発現をquantitative PCRの検出限界程度までノックダウンすることに成功した。ノックダウンした細胞を用いて内因性AGS8の変化をウェスタンブロットで検討したが、明確な変化を確認できなかった。そこで、より高いレベルのAGS8を発現するがん細胞株を探索し抗体の有効性を検討した。メラノーマ細胞G-361細胞がAGS8をより高いレベルで発現することを確認した。抗体(PA5-56603)は正常メラノサイトよりG-361細胞で強く発現する200kD付近のバンドを描出した。これは、quantitative PCRの結果と一致した。内因性AGS8の検出に抗体(PA5-56603)が有効であると考えられた。 次に、AGS8をノックダウンしたDU145細胞を用いてMTTアッセイを行ったが明確な効果は確認されなかった。G-361細胞でもAGS8siRNAによるノックダウンを行ったが、やはりMTTアッセイで明確な低下は確認されなかった。quantitative PCRでは十分なノックダウンが得られたが、ウェスタンブロットでは蛋白が確認されており、AGS8蛋白レベルの十分な低下には他の方法が必要と考えられた。 AGS8発現抑制によるシグナル変化としてHUVECで確認できているVEGF受容体と下流シグナル分子(ERK、AKT、p38MAPK)のリン酸化を検討した。AGS8を高発現するG-361細胞で、AGS8ノックダウン後も明確は変化を確認できなかった。 ヒト正常前立腺上皮細胞および前立腺癌細胞を化合物X存在下で培養し、遊離LDH測定によりED50を求め、化合物Xの毒性を検討したが、明確な毒性は検出されなかった。また、AGS8阻害薬Xは30μg/mlの濃度で、DU145細胞の遊走を約40%抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に問題があったsiRNAによるAGS8のノックダウンはエレクトロポレーション法の諸条件を検討することにより完了することができた。また、内因性AGS8蛋白のウェスタンブロット法による検出も有効な抗体を確認することができた。さらに、この過程でDU145細胞より高レベルでAGS8を発現するメラノーマ細胞株、G-361細胞を見出すことに成功した。一方、quantitative PCRでは十分なノックダウンが得られたにもかかわらず、ウェスタンブロットで確認される蛋白の減少は限定的であり、AGS8蛋白レベルの効果的な低下には他の方法が必要と考えられた。ノックダウン細胞でも一定レベルのAGS8蛋白発現が確認されており、この状態ではMTTアッセイ、シグナル解析では明確な変化を確認できなかった。しかし、全体としては計画した実験を進め一定の結果を得たので、おおむね順当に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今回用いたsiRNAノックダウン後48時間では蛋白発現レベルの低下が十分ではなかった。次年度は48時間のみではなく、72時間後、96時間後のポイントでも細胞から蛋白を回収し、ウェスタンブロットにより内因性AGS8蛋白の低下の程度を確認する。効果的な蛋白低下が見られれば、MTTアッセイおよび細胞内シグナル解析を行う。 一方、蛋白に作用するAGS8阻害薬Xからは想定された結果が得られている。次年度は、ヌードマウスにDU145細胞を移植する。治療群ではAGS8阻害薬Xを局所に注射し、移植後、1から4週で腫瘍塊を摘出し、重量および大きさを比較検討する。また、ヒト前立腺がん組織でのAGS8発現を免疫染色により検討し、組織悪性度の関連を検討する。
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