研究課題/領域番号 |
22K06934
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
宮野 佳 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60444783)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 活性酸素 / NADPHオキシダーゼ / 細胞遊走 / NADPH oxidase / 慢性肉芽腫症 / Nox / p22phox / ROS / 遊走 / 血管新生 / ERAD |
研究開始時の研究の概要 |
血管新生の促進/抑制は多くの疾患等に関係している。本研究では、病態に応じて血管新生を一律に制御できる仕組みを同定・解明し、多様な疾患に適応する治療法につなげる生化学的な基盤構築を目標とする。具体的には、活性酸素を生成するNOX4酵素による血管新生の必須過程の内皮細胞遊走の制御機構の詳細を明らかにする。この制御機構を解明し、遊走の「スイッチ」となれるものを見出し、細胞遊走能 (生化学的分析) と血管新生能 (マウス実験) により実証し、創薬の標的として提示できる分子レベルまで明らかにする。
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研究実績の概要 |
血管新生の促進/抑制は多くの疾患等に関係しており、病態に応じて血管新生を一律に制御できる仕組みを同定・解明できれば、多様な疾患に適応する治療法につながる。以前に私は、活性酸素を生成するNOX4酵素が血管新生の必須過程の内皮細胞遊走を制御していることを見出した。本研究では、NOX4を含めたNOXファミリーのパートナー分子であり、酵素活性に必須で、なおかつNOXファミリーのタンパク質レベルでの安定化に必要なp22phoxの生化学的な特徴づけをおこなった。 NOXは、多くの組織・臓器に発現していると報告されている。NOXの酵素活性は、タンパク質レベルで発現してはじめて機能する。しかしながら、組織・臓器でのNOXの発現分布に関する報告は、各種NOXファミリーのmRNAの存在をもとに論じているものが多い。これは、NOXファミリーに対する高感度な抗体が市販されていないことが原因のひとつとして挙げられる。 NOXファミリーと異なり、p22phoxに対する高感度な抗体は市販されており、入手が容易である。そこで、本研究では、NOXファミリーのパートナー分子であるp22phoxを検出することにより、NOXファミリーを起点とした生体の酸化ストレスやレドックシグナルを見積もることが可能かどうかを検討した。 さらに、NOXファミリーの中でもNOX5が、p22phoxの発現に依存せず、タンパク質レベルで安定に酵素活性を示す機構についても解析し、その仕組みを明らかにした。これは、NOX5の構造に特有のドメインがp22phoxの役割を果たしていることを示すものであり、同じNOXファミリーでも調節機構が2つのグループ(p22phox依存か非依存か)に分かれていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NOXファミリーは、NOX1からNOX5の5種類が知られている。NOX1からNOX4は、パートナー分子p22phoxと複合体を形成することにより酵素活性を示す。本研究で私は、p22phoxのタンパク質レベルでの発現がNOXファミリー(NOX1からNOX4)の共発現に依存していることを見出した。さらにNOXファミリー依存性のp22phoxの発現は、NOXファミリーがp22phoxをタンパク質レベルで安定化しているためであることを明らかにした。これは、p22phoxタンパク質が発現している組織・臓器は、NOXファミリーがタンパク質レベルで発現していることを示唆する。 一方、NOXファミリーの中でもNOX5は、他のNOXと異なり、p22phoxの存在に非依存性に酵素活性を示し、単独でタンパク質レベルで安定に発現する。本研究で私は、NOX5のタンパク質レベルでの安定化と細胞内局在は、NOX5自身のカルシウム結合ドメインが寄与していることを見出した。さらに、このカルシウム結合ドメインは、NOX5に特有の構造であり、本研究によりこのドメインがp22phoxと同じ役割を果たしていることを示した。NOX5は、血管やがん細胞を含め様々な組織・臓器に発現していることが知られている。これまでに不明であったNOX5の安定化や細胞内局在(活性酸素をどの場所に生成するのか)を明らかにすることにより、NOX5依存性のレドックスシグナルや酸化ストレスに対処するための方法を確立するための生化学的な基盤となる。本研究の成果は、FEBS letters, 597(5), pp702-713で報告した。
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今後の研究の推進方策 |
本課題では、2022年度にp22phoxの分解がCys50のチオール基の酸化還元状態により影響を受けることを示した。さらに、2023年度には、NOX1、NOX2、NOX3そしてNOX4がp22phoxをタンパク質レベルで安定化すること、NOX5のp22phox非依存性に安定化される機構を明らかにした。 NOX1-NOX4が存在する細胞、組織、臓器は、p22phoxがタンパク質レベルで発現することになる。従って、p22phoxを検出することによりNOX依存性(NOX5を除く)のレドックシグナルや酸化ストレスが生じていることを見積もることができる。ただし、様々な臓器に混入する食細胞(好中球やマクロファージ)には、NOX2-p22phoxが多量に発現しているためバックグランドレベルが高くなり、容易に組織・臓器中のp22phoxを検出することが困難である。 そこで、好中球のNOX2をノックアウトしたマウスを作出し、食細胞由来のp22phoxを除き、それぞれの組織・臓器に発現しているp22phoxの量を見積もることを計画している。現在、作出したNOX2ノックアウトの食細胞にp22phoxがタンパク質レベルで検出されないことを確認している。今後は、種々の組織・臓器でp22phoxをタンパク質レベルで検出し、非食細胞NOX依存性のレドックシグナルや酸化ストレスの程度を見積もることが可能であることを実証する。 組織・臓器は、内部の血管構造によりその恒常性が維持されている。NOX4依存性のレドックシグナルや酸化ストレスは、血管新生に関わる細胞遊走を制御していことから、さらに研究を進捗させることにより、p22phox依存性のNOX4活性を種々の組織・臓器で検出し、NOX4活性による血管新生の調節との関連を明らかにし、その調節機構の新規制御方法を確立することを目指す。
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