研究課題
基盤研究(C)
孤発性MSI(microsatellite instability)陽性腫瘍は胃癌・大腸癌・子宮体癌に好発する。その分子基盤はDNAメチル化を介したMLH1の不活化に起因するミスマッチ修復機構の破綻により、ゲノム全域に機能喪失性の短縮型変異が蓄積することに特徴付けられるが、TP53は高頻度に変異を回避する。本研究ではMSI陽性腫瘍の本態解明と新規治療戦略の構築を目指し、以下の3点を目的とし研究を展開する。①MLH1不活化機構の解明、②野生型TP53にも関わらず発癌に至る機序の解明、③野生型TP53を利用した治療戦略の開発。
応募者らは、胃癌のDNAメチル化と遺伝子変異の関連について解析を進めている。その中で、高DNAメチル化形質を示すマイクロサテライト不安定性(Microsatellite Instability (MSI))陽性胃癌と超高DNAメチル化形質を示すEpstein-Barr virus (EBV)陽性胃癌が高頻度にTP53変異を回避している点に着目し、野生型TP53を保持したまま発がんに至る機序とその治療戦略について解析を進めている。MSI陽性胃癌細胞とEBV陽性胃癌細胞において、TP53抑制因子の発現が亢進していることが確認された。それらに対して、TP53抑制因子をshRNAにてknockdownする、あるいは阻害剤を投与することで細胞のアポトーシスが誘導されることが示された。この結果はTP53の下流経路は保たれており、翻訳後修飾的にTP53の機能が抑制されているため、治療の標的になり得ることを示唆している。また、高DNAメチル化形質により抑制されている因子がTP53抑制因子に対して抑制性に働いている可能性が考慮され、その機序についても解析中である。さらにMSI陽性胃癌の一部がKRAS変異を有していることを見出し、TP53非依存的にゲノム・エピゲノム異常の相乗効果により早期細胞老化を回避している機構についても解析している。以上についてまとめた論文を執筆中である。
3: やや遅れている
TP53野生型胃癌におけるゲノム・エピゲノム異常についてまとめた論文執筆中であり、解析がやや遅れている。
論文のまとめ作業が完了し次第、新しい解析を進める予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 3件)
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