研究課題/領域番号 |
22K06940
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
山川 けいこ 香川大学, 医学部, 技術職員 (20855704)
|
研究分担者 |
松田 陽子 香川大学, 医学部, 教授 (20363187)
岡野 圭一 香川大学, 医学部, 教授 (20314916)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 2光子励起顕微鏡 / ラベルフリーイメージング / ミトコンドリア / 膵癌 / 病理学 |
研究開始時の研究の概要 |
難治性癌である膵癌の予後向上には顕微鏡レベルでの膵癌細胞の検出、及び癌部と線維化部を正確に区別する必要がある。しかし、現在の病理、画像診断法では迅速な顕微鏡レベルの癌細胞の検出や線維化を伴う膵癌の判定は困難である。本研究では、未固定、未染色の膵組織中の癌細胞、線維化を2光子励起顕微鏡により同定し、膵癌診断の感度、特異度を評価する。2光子励起顕微鏡による癌診断の有用性を明らかにし、低侵襲で迅速、簡便な新規癌診断法の開発を目指す。
|
研究実績の概要 |
本年度は細胞内の自家蛍光像を2光子励起顕微鏡で観察する条件についてさらに検討した。固定による影響を調べるため、培養細胞を未固定または固定(4%パラホルムアルデヒドまたはエタノール固定)、組織を未固定または固定(10%中性緩衝ホルマリン)の状態で観察し、固定の有無による自家蛍光像の変化を観察した。固定培養細胞では未固定培養細胞より自家蛍光輝度の著減が認められた。また、固定組織の上皮細胞では、励起波長720nm、検出波長410~500nmにおける自家蛍光が未固定組織よりも著減し、検出波長541~581nmの蛍光像が優位となった。第2次高調波発生(SHG)によるコラーゲンの描出は固定の影響は受けなかった。このことから上皮細胞内の自家蛍光像を観察するためには未固定状態、線維化の評価には未固定あるいは固定状態が適していることが分かった。次に培養細胞を観察する際の培地の影響を調べるため、FBS含有・フェノールレッド含有培地、FBS含有・フェノールレッド不含培地、FBS不含・フェノールレッド不含培地で培養細胞の自家蛍光像を撮影した。どの条件でも明瞭な自家蛍光像は観察できた。各検出波長における自家蛍光輝度比はFBSの有無による影響は認めなかったが、フェノールレッドの有無によりに差を認めた。このことから、撮影時にはフェノールレッド不含培地が適していることが分かった。 膵癌細胞、正常膵管上皮細胞、線維芽細胞における自家蛍光は、細胞質の核周辺で輝度が高く、ミトコンドリアの局在・形態と一致していた。飢餓培養におけるミトコンドリアの形態的変化と自家蛍光像が一致していたことから、細胞内自家蛍光がミトコンドリアの状態を反映している可能性が示唆された。2光子励起顕微鏡による自家蛍光を指標としたイメージングは固定、染色を必要とせずにミトコンドリア関連細胞内代謝の把握に有用であると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在膵癌手術検体の多くが術前化学治療を行っており、正常部あるいは癌部の細胞の観察が困難であったこと、膵癌組織における線維化の評価については撮影条件の検討は行ったが、詳細な線維化の特徴、症例数を集めての検討はできなかった。また、初年度に自家蛍光像が観察できる撮影条件を検討したが、さらに励起波長、検出波長の範囲を細かく設定して解析を現在行っている。細胞の自家蛍光像の評価法について、主にNAD(P)H、FAD由来と思われる蛍光輝度比を算出しているが、細胞内代謝との関連性についての評価がまだである。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞内代謝と自家蛍光像との関連について明らかにするため、どのような細胞状態が自家蛍光に影響するのかを解析する。飢餓培養、ピルビン酸添加培地による培養下での2光子励起顕微鏡で撮影済みの画像の解析を進める。さらに、ブドウ糖不含培地、2‐デオキシグルコース添加培地での培養下における自家蛍光輝度の変化、NAD(P)H染色との比較、ミトコンドリアの膜電位との相関について解析する。また、膵癌の化学療法で使用されているゲムシタビン存在下では細胞形態が老化細胞様に変化することから、細胞老化とミトコンドリアと自家蛍光像輝度の変化について検討を行う予定である。膵癌組織における線維化の評価については、病理組織学的評価済のホルマリン固定パラフィン包埋薄切標本が150症例あり、こちらの標本を用いて線維化描出の感度、線維化の構築の評価を行うことも予定している。
|