研究課題/領域番号 |
22K06956
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
吉田 誠 秋田大学, 医学系研究科, 講師 (70637553)
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研究分担者 |
前田 大地 金沢大学, 医学系, 教授 (30585500)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 心毒性 / 抗腫瘍薬 / 腫瘍循環器 / 心不全バイオマーカー / 心毒性バイオマーカー / ゲノム解析 / 心筋細胞障害 / 次世代シークエンサー / 剖検心 |
研究開始時の研究の概要 |
医学の進歩した現代において悪性腫瘍は未だに死因の上位に位置している。近年では特に抗腫瘍薬の分野において、様々な分子標的薬が開発され、その抗腫瘍効果には目を見張るものがある。その一方で、それらによる副作用の側面もまた強く表れてきている。抗腫瘍薬において最も致死的な副作用として心毒性が挙げられる。古くはアドリアマイシンの殺細胞性による心筋症が知られていたが、PD-L1阻害薬など分子標的薬が広まった現代においては各種分子標的薬で心毒性が指摘されている。しかしその機序は未だ不明である。本研究は抗腫瘍薬による心毒性のリスクを抗腫瘍薬投与前に評価できるようになることを目指す研究である。
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研究実績の概要 |
本研究では、病理解剖で採取された左室心筋凍結検体を用いて、RNA-seq解析およびプロテオーム解析を施行し、抗腫瘍薬投与下での心機能正常例と左室収縮能 低下症例の比較を行うことで、薬剤の影響による心筋収縮能低下に伴って発現が変動する遺伝子やタンパク質を同定することを第一の目標とする。さらに、それ らの遺伝子やタンパク質に関して、心筋組織でのRT-PCRやウエスタンブロット、免疫組織化学染色などで評価・検討し、心筋生検で心毒性の有無を評価できる免疫組織化学マーカーを確立することを目標としている。初年度はRNA-seqを行って、解析結果を得た。抗腫瘍薬によって心機能が低下した例と、心機能が保たれた例に分類し、比較解析を行った。2年目は、抗腫瘍薬の種類別に解析を追加し、プラチナ系や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などに細分化し、解析を行った。主成分分析やエンリッチメント解析などを行いながら、共通する遺伝子発現などに注目し、心不全に関連する遺伝子を数十種に絞ることができた。現在、RNA-Seq解析と同一症例でプロテオーム解析に着手している。先ほど同定した遺伝子の顆粒にあるタンパクに着目して解析を行う計画で、タンパクの動態から心毒性に影響する因子や心毒性のバイオマーカーとなるタンパクを同定する計画である。本研究から抗腫瘍薬が心毒性をきたす過程で重要な役割を担う蛋白や遺伝子発現が明らかになることを期待している。これらの遺伝子やタンパクは、通常の心臓の細胞活動のなかで、今まで知られて いない役割を担っている可能性がある。心毒性機序の解明は、それと表裏一体である心保護作用の解明につながる重要な研究と位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年以降に蓄積してきた病理解剖例の凍結左室心筋サンプルの中から、①心機能正常群(Control群)10例、②心機能低下抗腫瘍薬非投与群(心不全群)10 例、③心機能正常抗腫瘍薬非投与群(一般癌患者群)10例、④心機能低下抗腫瘍薬投与群(心毒性群)約5例を選定した。 各症例の凍結左室心筋サンプルから RNAを抽出し、RNA-seq解析を行った。解析データから、主成分分析やエンリッチメント解析などを行い、各群に共通する遺伝子や他の群にはない遺伝子などに着目しながら、数十種類の候補遺伝子を同定した。また、RNA-seq解析を行った症例と同一症例のFFPE標本からプロテーム解析を行った。現在はデータ取得および解析を行っている段階で、当初の申請書の計画通り概ね順調に推移している。 RNA-Seq解析結果から活性の上がっている遺伝子を数種類を同定し、関連する蛋白のプロテオーム解析を行う予定。現在はプロテオーム解析施行中である。今後、心筋細胞障害と関連する因子の検討を行う。申請時は 腫瘍の解析ではなく、細胞増殖していない心筋細胞の解析であるため、変動する遺伝子は多くないことも予想していたが、多くの遺伝子発現の変動が観察され、心筋細胞の細胞機能や細胞活性の深淵さが伺われた。心毒性状態で発現が変動する遺伝子のみならず、心筋細胞の保護に有効な因子も同定できるのではないかと期待する。
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今後の研究の推進方策 |
現在、プロテオーム解析が進行中である。プロテオーム解析の結果とRNA-seq解析の結果を統合し、いくつかの候補分子を同定する計画である。その候補分子をRT-PCRおよび免疫染色などで検証し、心毒性との関与の有無について検討する。その後、別の癌患者、非癌患者の心筋生検標本での検証も行い、心毒性バイオマーカーの確立を目指す。当初の申請書には無かったが、もし時間があれば、マウス抗腫瘍薬投与群での心毒性バイオマーカーの研究も計画したい。ここまでの内容を論文としてまとめ、本年度末を目標に報告する。
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