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乳腺浸潤性小葉癌におけるN末端欠如型E-cadherinの発現解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K06973
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分49020:人体病理学関連
研究機関静岡県立静岡がんセンター(研究所)

研究代表者

杉野 隆  静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (90171165)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
キーワード乳腺浸潤性小葉癌 / E-cadherin / CDH1
研究開始時の研究の概要

我々は乳腺浸潤性小葉癌に、N末端が失われ、C末端が保たれる異常なE-cadherinタンパク(N末端欠損型E-cadherin)の存在を見いだした。本研究はこの異常E-cadherinについて、① 臨床病理学的な意義、② 浸潤性小葉癌における産生メカニズム、③ 分子機能、を解明することを目的とする。方法として、手術検体を用いた遺伝子やタンパクの解析、細胞株を用いた実験モデル作製を行う。本研究によりN末端欠損型E-cadherinの臨床病理学的意義や分子メカニズムが明らかになれば、浸潤性小葉癌の発生メカニズムや病態の解明、患者の治療につながると期待する。

研究実績の概要

乳腺浸潤性小葉癌 (ILC)に発現するN末端欠如型E-cadherin (N-/C+ E-cad)の産生メカニズムの解明のため、ゲノムデータとの照合と実験的検討を行った。
当院で行っている癌のmultiomics解析のデータを利用し、E-cadherinをコードする遺伝子CDH1の変異を検索した。通常、ILCの70%がCDH1遺伝子に変異を持つとされているのに対し、N-/C+ E-cadタンパク質を発現する8症例ではCDH1変異例は1例のみと極めて少なく、ゲノム変異以外のメカニズムが関わると考えられた。変異を持つ1例にはCDH1遺伝子の開始コドンにmissense mutationを認めた。
CDH1の開始コドンの変異がN-/C+ E-cadタンパクを産生することを検証するために、in vitroの実験を行った。同様の変異を導入したCDH1の発現vectorをE-cadherinを発現しない乳癌細胞株に遺伝子導入したところ、N-/C+ E-cadは細胞膜に発現し、Western blottingでは野生型E-cadherinよりも約10 kDa小さいタンパクであることが明らかになった。この領域にある開始コドン候補を探索し、種々の変異型CDH1発現ベクターを導入することにより、代替え開始コドンを見いだした。これらの実験から、CDH1の開始コドンのmissense mutationにより、その下流の開始コドン配列からタンパク質翻訳が始まる”alternative translation initiation”によりN-/C+ E-cadが発現することが明らかになった。これらの結果について現在、論文作成中である。
また、CDH1の変異によらないN-/C+ E-cad発現メカニズムについては、翻訳後修飾を想定し、mRNAの発現解析データを用いて、関連する酵素を絞り込み解析を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

N-/C+ E-cadの産生メカニズムの解明は2つのアプローチにより行っている。
1つはCDH1の開始コドンの変異がN-/C+ E-cadタンパクを産生することの検証である。手法として、ヒト乳癌細胞株のCDH1遺伝子に変異を導入するin vitro実験を用いた。その結果、開始コドンの変異がN-/C+ E-cadの発現を誘導することが証明された。さらに、そのメカニズムとして、通常の開始コドンの下流にある他の開始コドン配列からのalternative translation initiationが関与することが明らかになった。これら一連の現象は、過去に報告がなく、新たなE-cadherin発現異常のメカニズムであると考えられる。今後、CRISPR/Cas9による開始コドンの変異をノックインする実験を追加し、論文発表をする予定である。
もう1つのアプローチは、主流と目される変異によらないN-/C+ E-cadタンパク質の産生メカニズムを解明することである。タンパク分解酵素による翻訳後修飾(タンパク質プロセッシング)を想定し、その関連分子を同定するために、N-/C+ E-cadを発現するILC症例に特異的高発現する酵素を検索し、すでに候補を絞り込んでいる。今後、免疫染色による酵素とN-/C+ E-cadの発現の相関を解析する予定である。
さらに、この異常E-cadherinの発現を他の癌種に広げることを企画している。まず、同様の形態を示すスキルス胃癌において、N-/C+ E-cadタンパクの発現があるか否かについて胃癌切除標本を用いた免疫染色を行い、解析中である。
以上、メカニズム解明の一端を解明することができたこと、他のメカニズム解明に対しても目途が立ってきたこと、さらに他癌種への応用が進んでいることなどから、研究は順調に進展していると自己評価する。

今後の研究の推進方策

今後の研究課題は次の2つである。
1.N-/C+ E-cadタンパク質の発現メカニズムの解明
1) CDH1の開始コドンのmissense mutationの実験データを揃え、論文発表する。CDH1においてこのタイプの変異は頻度が低く、ILCにおけるN-/C+ E-cad産生のメカニズムの主流ではないと想定される。しかし、CDH1 N末端領域の遺伝子異常にも応用できる可能性は残され、さらなる検討が必要である。また、E-cadherinでは開始コドンの変異についての分子生物学的なデータがほとんどないことから、この分野における研究への貢献が期待される。
2) タンパク分解酵素によるE-cadherinの翻訳後修飾は、この異常タンパク質産生の主たるメカニズムと想定される。候補となる酵素としてMMPs, ADAMsが挙げられる。N-/C+ E-cadを産生するILCのmRNA発現データを解析し、分子を絞り込み、実験的に証明する。
2.他の癌種におけるN-/C+ E-cad発現の解析:E-cadherinの機能喪失はILCのほか、他の癌種にも関わっている。特に、スキルス胃癌はILCと同様、細胞間の接着性が失われ、個々ばらばらに浸潤することが特徴であり、E-cadherinやCDH1の異常が関与すると想定される。スキルス胃癌の症例を収集し、免疫染色法を用いてN-/C+ E-cad発現の存在を検討する予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Expression and mechanism of N-terminal deficient E-cadherin protein in invasive lobular carcinoma of the breast.2022

    • 著者名/発表者名
      Takashi Sugino
    • 学会等名
      第81回日本癌学会総会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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