研究課題/領域番号 |
22K06978
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
狛 雄一朗 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (40714647)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 食道癌 / 癌微小環境 / 線維芽細胞 / マクロファージ / 癌間質相互作用 / 直接接触 |
研究開始時の研究の概要 |
癌組織には癌細胞だけでなくマクロファージや線維芽細胞などの間質細胞が含まれています。癌細胞と間質細胞との間の相互作用が癌の悪性化に関与することが報告されており、この相互作用を標的とした新規の癌治療法の開発が注目されています。食道癌は治りにくい癌の一つであり、新規の癌治療法の開発のためには癌の悪性化のメカニズムを解明する必要があります。本研究では食道癌における癌細胞、マクロファージ、線維芽細胞の相互作用を解析することで、食道癌の悪性化のメカニズムを解明し、将来的には癌治療法の開発につなげたいと考えています。
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研究実績の概要 |
食道扁平上皮癌(ESCC)細胞・マクロファージ・線維芽細胞の間の「直接接触による細胞間相互作用」を媒介する分子の役割を各種培養細胞や病理組織標本を用いて解析した。 研究①:前年度に確立したESCC細胞とヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)との直接共培養系を引き続き解析した。「単独培養後のESCC細胞株」と「直接共培養後のESCC細胞株」、あるいは「単独培養後のMSC」と「直接共培養後のMSC(CAF様細胞)」との間でcDNAマイクロアレイ解析を実施し、直接共培養後に癌細胞あるいはCAF様細胞で高発現する分子を複数見出した。このうち一つは解析が終了し、既に論文がアクセプトされたが、出版が次年度のため今年度の研究実績の概要欄では詳細を割愛する。 研究②:既に確立していたESCC細胞株とマクロファージとの直接共培養系を解析した。マクロファージと直接共培養後のESCC細胞株においてmatrix metalloproteinase 9 (MMP9)とinterferon-inducible protein 16 (IFI16)の発現が亢進していた。MMP9はSTAT3経路の活性化により発現が亢進し、癌細胞の運動・浸潤能を促進した。MMP9を癌胞巣において高発現するESCC症例は不良な予後を示した。また、IFI16は癌細胞の生存・増殖・運動能に関与し、この表現型はIFI16によって発現調節されるinterleukin-1α (IL-1α)を介していた。IFI16を高発現するESCC症例は予後不良な傾向を示した。以上からマクロファージとの相互作用によって癌細胞において発現亢進するMMP9やIFI16がESCCの進展に寄与することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究①で実施した「単独培養後のESCC細胞株」と「直接共培養後のESCC細胞株」、あるいは「単独培養後のMSC」と「直接共培養後のMSC(CAF様細胞)」との間のcDNAマイクロアレイ解析では、直接共培養によって種々の遺伝子が癌細胞あるいはMSCにおいて高発現していることを見出した。現在、そのうち数種類の遺伝子の解析を進め、直接共培養によって亢進する癌細胞の悪性形質との関連を明らかにしつつある。このうち一つは既に論文がアクセプトされたが、出版が次年度のため詳細を割愛する(解析分子はCAFで高発現していたペリオスチン)。 研究②ではマクロファージとの直接共培養によって癌細胞において発現亢進するMMP9とIFI16の機能解析を実施した。ESCCにおけるMMP9とIFI16の意義を明らかにし、それぞれ国際誌の論文として発表できた。 いずれの研究内容においても国内学会において複数の学会発表を実施し、前者のペリオスチンに関する研究発表(大学院生担当)については第43回日本分子腫瘍マーカー研究会において大会長特別賞を受賞した(2023年9月)。
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今後の研究の推進方策 |
研究①で実施したcDNAマイクロアレイの結果から複数の分子に注目しているが、引き続きこれらの分子がESCCの進展に関与するかどうかをESCC細胞株やESCC組織を用いて解析する。現在解析中の分子の一つは直接共培養後の癌細胞において発現が亢進し、癌細胞の表現型への影響だけでなく線維芽細胞にも作用することを明らかにしつつある。また、この他に直接共培養後の癌細胞とCAFのいずれにおいても発現亢進する接着分子やCAFにおいて発現・分泌亢進する液性因子の解析を進めている。 研究②ではマクロファージとの直接共培養によって発現亢進する分子を引き続き解析する。 さらには線維芽細胞とマクロファージとの間の相互作用を媒介する可能性のある分子についても見出すことができれば、ESCC細胞・マクロファージ・線維芽細胞の3者の間の相互作用をさらに解明することができると期待されるため、この観点でも解析対象分子を検索する。
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