研究課題/領域番号 |
22K06983
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
小野 佑輔 札幌医科大学, 医学部, 助教 (90812355)
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研究分担者 |
高澤 啓 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00593021)
小山内 誠 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60381266)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | レチノイン酸 / 膵がん / 口腔がん / CYP26A1 / ビタミンA / がん悪性化 / 膵癌 / 舌癌 / トランスクリプトーム |
研究開始時の研究の概要 |
これまで主に発生,胎生期で重要と考えられていたビタミンAの活性体であるレチノイン酸とその特異的代謝酵素とされるCYP26A1は,がん組織において悪性化に関わっている可能性がある.本研究を進めることで、がん組織でのレチノイン酸の果たす役割だけでなく,レチノイン酸代謝酵素とされてきたCYP26A1の未だ解明されていない役割を定義することが可能になる.これらはがん治療戦略に新しい選択肢を提示できる.
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研究実績の概要 |
レチノイン酸特異的代謝酵素とされるCYP26A1は一部のがん腫で高発現し、がんの悪性化と関わることが報告されている。本研究では、複数の臓器を標的としCYP26A1の臓器横断的ながん悪性化機構の解明を目指している。膵がん、舌扁平上皮がんで外科的切除された症例に対して免疫染色を行い、CYP26A1が高発現する症例があることを明らかとした。また、舌癌では高発現群で有意に予後が悪いことを明らかとした。膵がんでは、免疫染色の結果で予後との有意な関連は示されなかったが、TCGAのデータを用いた解析で、高発現群での有意な予後の悪化が示された。また、CRISPR-Cas9システムを用いて膵がん、舌がん細胞株いずれにおいてもCYP26A1ノックアウト細胞株を作製した。これらの細胞株ではレチノイン酸投与によって増殖能やコロニー形成能、運動能などのがん悪性化に関連する機能が低下することが示された。 また、本研究ではレチノイン酸特異的代謝酵素とされてきたCYP26A1がそれ以外の機能を有する可能性について検討することも目的としている。 CYP26A1ノックアウト細胞株を用いて、トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析を行った結果、ノックアウト株ではレチノイン酸投与によって大きな変化がおこる。レチノイン酸を投与しない環境下で検討すると、CYP26A1発現の有無自体でも発現プロファイルが異なることが示された。このことはCYP26A1にレチノイン酸代謝以外の機能があるという仮説を支持すると考える。 そこで、CYP26A1ノックアウト細胞株でレチノイン酸を投与しない環境下で機能解析を行った。増殖能、コロニー形成能、遊走能のいずれも、CYP26A1ノックアウト株で低下した。これらにより、CYP26A1がレチノイン酸代謝以外の機能を有し、がんの悪性能に関わる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までに、乳がん、膵がん、舌扁平上皮がんの手術材料を用いてCYP26A1の免疫染色を行い、評価した。その結果、CYP26A1が高発現を示す症例が存在すること、一部のがん種では高発現郡で有意に予後が悪化していることが示された。また、樹立した膵がん、舌がんのCYP26A1ノックアウト細胞株において、CYP26A1の発現欠損とレチノイン酸投与によって、がんの悪性能が抑制されることが示された。また、ノックアウト細胞株を用いて、トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析を行い、CYP26A1のノックアウトによってレチノイン酸投与による影響を大きく受けることと、レチノイン酸を投与しない条件下でも、CYP26A1の発現の有無そのものによって大きな変化が生じることが示された。 ノックアウト細胞株を用いたさらなる検討で、レチノイン酸を投与しない条件でもCYP26A1のノックアウトでがんの悪性能が低下することを示すことができた。しかし、これらの減少を引き起こすメカニズムの解析は十分ではなく、やや遅れている。また、目標としていた子宮頸がん細胞株を用いたCYP26A1のノックアウト株の樹立に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は臓器横断的なCYP26A1の機能と、その作用メカニズムの解明のため、膵がん、舌がんに加えて、新たに子宮頸部扁平上皮がんの手術検体を用いた免疫染色と子宮頸部扁平上皮がんの細胞株を用いて、CYP26A1ノックアウト株を作製し各種機能解析を行う。これらのノックアウト株でのトランスクリプトーム解析、プロテオーム解析の結果を解析して得られた候補分子について検討することで、CYP26A1の下流で作用する分子について検討を進める。最終的にはレチノイン酸投与によってがん悪性能が抑制される原因となる分子、CYP26A1のレチノイン酸非依存性の機能を起こす分子を解明する。
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