研究課題/領域番号 |
22K06987
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 浜松医科大学 (2023) 藤田医科大学 (2022) |
研究代表者 |
酒井 康弘 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20754394)
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研究分担者 |
桑原 一彦 近畿大学, 大学病院, 講師 (10263469)
櫻井 浩平 藤田医科大学, 医学部, 講師 (10608756)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | SAC3D1 / 中心体 / 乳癌 / 核異型度 / 転写共役型DNA傷害 / 中心体複製 |
研究開始時の研究の概要 |
乳癌は人によって再発リスクや薬剤感受性が異なる。このメカニズムや、患者の予後に影響する因子を解明することで、乳癌の新たな治療戦略を発見することができる。本研究では,細胞分裂に関与する中心体複製因子SAC3D1に着目して、乳癌が悪性進展していくモデルを解明するとともに,SAC3D1の発現に基づいて乳癌の悪性度を病理学的に分類することで,乳癌の長期治療の精度向上と患者転帰の改善を図る。
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研究実績の概要 |
乳癌は女性に最も多い悪性腫瘍であるが、その生物学的特性は単一ではなく、悪性度・予後・薬剤感受性は様々である。そのため、乳癌の分子化学的な発癌メカニズムの解明とともに、予後マーカーや薬剤感受性マーカーの開発が急務である。一方で、ヒト遺伝子SAC3D1は中心体複製制御因子で、肝細胞癌ではその発現と予後が相関していることが近年報告された。今回、乳癌においてSAC3D1発現が核異型度や予後と相関することを明らかにするとともに、ERシグナルを介したSAC3D1の発現調節機構について解析した。 外科切除されたヒト非遺伝性乳癌623例の組織を用いてKaplan-Meier解析を行った。その結果、無病生存期間はSAC3D1高発現群の方が低発現群より有意に長かった。ER陽性乳癌487症例で解析を行うとSAC3D1高発現群で有意に長かったが,ER陰性乳癌135症例で解析を行っても有意差は得られなかった。多変量解析ではSAC3D1の発現強度・核異型度・リンパ節転移の有無が無再発生存期間の独立因子であることが分かった。 次に、乳癌279例のFFPE標本を用いてSAC3D1発現を免疫組織化学で解析したところ、無病生存期間において同様の傾向と有意差が得られた。多変量解析では、SAC3D1発現は核異型度の増加と腫瘍径の増大に影響することが示された。 さらに、乳癌細胞株MCF-7にtamoxifenを加えて培養したところ、SAC3D1の発現は容量依存性・時間依存性に低下した。一方で、estradiolで刺激するとSAC3D1に発現は上昇した。 これまでの結果から、乳癌のSAC3D1高発現群は低発現群と比較して予後が悪く、SAC3D1は乳癌の予後マーカーとなることを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の研究計画通りに進展しており、現在のところ研究の遂行に支障はない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ヒトの乳癌組織材料を用いてSAC3D1と臨床病理学的因子の相関解析を進める。また、セルベースアッセイとしてSAC3D1過剰発現・低発現株を樹立し、増殖能や核異型度を評価して、SAC3D1発現が乳癌の予後を悪化させるメカニズムを明らかにしていく。さらにSAC3D1の下流にあるいくつかの転写因子と乳癌の予後との相関を解析する予定である。
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