研究課題/領域番号 |
22K06996
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
大森 泰文 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (90323138)
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研究分担者 |
川嵜 洋平 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (00644072)
廣嶋 優子 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (30770044)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ギャップ結合 / コネキシン / がん幹細胞 / 細胞内輸送 / ストレス応答 |
研究開始時の研究の概要 |
コネキシン(Cx)ファミリーは、細胞膜上でギャップ結合(GJ)を構成するタンパクであり、GJとして腫瘍抑制的に機能する。腫瘍においてGJの機能は減弱しているが、Cxの細胞内への異常局在がその原因の1つであることが知られている。研究代表者らは、ゴルジ体に局在するCxが、腫瘍細胞の増殖や造腫瘍能の亢進、さらにがん幹細胞の自己複製の促進といった「固有の機能」を有していることを明らかにし、ゴルジ体に局在するCxがストレスへの適応応答経路を活性化することで腫瘍細胞の生存を高めることを見出した。本研究においては、腫瘍形成の過程でCxが細胞膜から細胞内、特にゴルジ体に局在を変える分子機構を明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、以下の点について研究を進めた。 Rab5やRab9のGEFやGAPの発現量とCxの局在の関連を探った・・・Rab5はコネキシン(Cx)をはじめとする膜タンパクのエンドサイトーシスに関与しており、Rab9はエンドソームからトランスゴルジネットワークへの逆行輸送に関与しているが、これらのRabファミリータンパクの機能変化は、発現量ではなく活性の変化によるものである。そこで、これらのRabタンパクを活性化するGEF (guanine-nucleotide exchange factor)や不活化するGAP (GTPase-activating protein)の発現量を、様々な細胞を用いてウェスタンブロットで検討した。材料としては、肝細胞癌や頭頸部扁平上皮癌、乳癌、皮膚扁平上皮癌などの腫瘍由来でCxが細胞膜に局在する細胞やゴルジ体に局在する細胞など、局在の異なるCxを発現している細胞シリーズを用いることとした。Rab5、Rab9とも複数のGEFやGAPが存在するので、これら制御タンパクの発現量とCxの細胞内局在および局在量を対比させたところ、Cxが膜に局在する細胞では、Rab5の主たるGAPであるRabGAP-5の発現が高い傾向があり、Cxが主にゴルジ体に局在する細胞では、Rab5のGEFであるRin3とRab9のGEFであるDENND2が有意に増加していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
われわれは、ゴルジ体に局在するCxがストレス適応応答を惹起し、この適応応答ががん幹細胞の自己複製を促すことを提唱しているが、最近、適応応答に重要な役割を有するHSP70やHSP40の機能をcurcumin類縁体が阻害し、がん幹細胞の自己複製が促進されるすることを見出した (Suzuki M, 他4名, *Omori Y. FEBS Open Bio, 13:434-446, 2023. *corresponding author)。curcuminの抗腫瘍効果は広く知られていることから、Cxの異常局在により惹起されたストレス適応応答が腫瘍進展抑制の標的になることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
- Cxのゴルジ体への逆行輸送に関与するRab5やRab9のエフェクターを同定する・・・Rab5やRab9の直接的な作用で機能が増強するタンパクは「エフェクター」と呼ばれ、Rabファミリーの機能の方向性を決定している。Rab5にはEEAなどの、Rab9にはTIP47などのエフェクターが知られているが、どのエフェクターがCxのゴルジ体への局在をサポートしているのか、エフェクターとされるタンパクの発現を様々な細胞で調べ、これらの発現とCxの局在およびCxの分子種を対応させる。この結果からCxのゴルジ体への局在に関与することが予想されるエフェクターを、shRNAベクターもしくはsiRNAによりノックダウンし、Cxのゴルジ体への局在が解除されるかどうかを検討する。 - Rab5やRab9の活性化型変異体による誘導されるCxのゴルジ体への局在、これによるストレス適応応答の惹起やがん幹細胞の自己複製能および造腫瘍能の亢進が生じるかどうかを検討する・・・Rab5やRab9の常時活性化型変異体、Rab5Q79LおよびRab9Q66Lを、細胞膜にGJを形成する細胞に導入し、Cxの局在がゴルジ体に移行するかどうかを蛍光免疫染色で検討する。その際、Cxの分子種によってこれら変異体の機能が異なるかどうかも確認する。Cxがゴルジ体に局在することによってATF6αが活性化し適応ストレス応答が惹起されているかを検証するとともに、その際にがん幹細胞画分が増加しているかどうかを申請者が使用している様々なマーカーでFACS解析を行い検討する。また、Cxが細胞膜に局在し、エストロゲン非存在下ではマウスに腫瘍を形成できないヒト乳癌MCF-7細胞を用いて、ゴルジ体にCxが移行した後に造腫瘍能を獲得するかどうかを検討する。
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