研究課題/領域番号 |
22K07009
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
有村 裕 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (10281677)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 心理的ストレス / 免疫応答 / レポーターマウス |
研究開始時の研究の概要 |
心理的ストレスは免疫系に影響をもたらすが、そのメカニズムは完全には理解されていない。私達は最近、ストレスで発現が誘導される遺伝子にGFP(緑色蛍光タンパク)をつないだ発現レポーター(ストレス可視化)マウスを作出した。このマウスにストレスを負荷し、細胞、組織、個体の各レベルでストレスがどのように伝わるかを追跡し、免疫応答がどう変化するかを解析する。またストレス可視化マウスを、ストレス伝達分子に多型性または欠損があるマウスと交配させ、ストレスによる免疫制御、免疫疾患にどのように影響するか、その仕組みを明らかにすることを試みる。
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研究実績の概要 |
心理的ストレスがどのように免疫系に影響をもたらすか、そのメカニズムをより深く理解するために、最近、私達はストレスで発現が誘導される遺伝子にGFP(緑色蛍光タンパク)をつないだ発現レポーター(ストレス可視化)マウスを作出した。まず、このマウスにストレスを負荷し、実際にGFP発現が増強するか検討した。Ddit4遺伝子にGFPを導入(knock in: KI)したマウス(Ddit4-KI)を利用して以下の方法で実験を行った。(1)まず、マウスのストレス負荷後に4つのタイミングで末梢血細胞を採取してGFP発現をフローサイトメーター(FACS)で測定した。①ストレス負荷直後、B細胞では平均蛍光強度(MFI)が増加傾向を示した。②ストレス後に3時間放置すると、白血球全体では減少傾向であった。③同じく24時間放置後は白血球全体、T細胞、B細胞でMFIが増加傾向であった。④ストレス負荷を2回かけた後では、T細胞は変化が乏しかったが、B細胞はMFIが増加した。GFPのMFIの増加率は、T細胞、B細胞では拘束直後に上昇し、3時間後に減少し、24時間経過後に再び上昇する傾向が見られた。これらの結果からGFPの変動の程度は白血球の種類によっても異なるが、測定は拘束の24時間後が最も適していると考えられた。(2)またタンパク発現をウエスタンブロットで測定すると、解除直後にGILZのみ増加が見られた。GFPはmRNA発現にばらつきが見られたが、タンパク質発現は解除直後に微増していた。(3)さらに脾臓の凍結切片を用いてGFP発現細胞を検出することを試みた。その結果、固定が1時間では不十分であり、4時間では細胞が染まりにくく、2時間でGFP、T細胞共に染色可能と考えられた。引き続きタンパク質発現やGFP染色の条件を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記したように、令和4年度は作出したDdit4-KIマウスを用いて主に3つの実験を行った。(1)ストレス負荷後に末梢血を採取してGFP発現をFACS解析し、また(2)タンパク発現をウエスタンブロットで測定、さらに(3)脾臓の凍結切片を用いてGFP発現細胞を免疫組織学的に検出することを試みた。実験(1)では、ストレス負荷から解放24間後にGFPが比較的安定に増加する傾向が見られたが、実験(2)ではむしろストレス負荷解放直後に増加が見られることが多く、一致しない結果となった。その原因を究明したい。実験(3)の凍結切片では十分に明瞭にGFP発現を検出できていない。したがって引き続き条件検討を実施する必要がある。これらにより、細胞、組織、個体の各レベルにおいてストレスがどのように伝わるかを追跡したい。 上記の概要に入らなかった実験項目として、社会的敗北ストレスモデルの予備実験も実施した。以前に拘束ストレス実験で発現が変動した19遺伝子について、本ストレスを受けたマウスの脾臓細胞における発現変動をqPCRにて無処置マウスと比較した。その結果、予想に反して、BALB/cマウスでは2遺伝子、C57BL/6マウスでは3遺伝子がそれぞれ減少した。それら以外も、有意差はないが全体的に減少傾向を示す遺伝子が多かった。一方で増加傾向を示した遺伝子については統計的有意差が見られたものはなく、例えばMkp1遺伝子に関してBALB/cマウスで上昇した個体が認められたが、ばらつきがあった。さらに血中コルチコステロンの濃度はばらつきがあり、有意差が認められなかった。したがって実験方法について、さらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
1)Ddit4-KIマウスに対するストレス負荷の条件を引き続き検討する。拘束、傾いたケージでの飼育、社会的敗北ストレスモデルなどを使い分けて、ストレスの強弱、期間の違いがGFP発現量に反映されるか調べる。また、ストレス反応性遺伝子であるTsc22d3のKIマウスでも上記と同様の実験を行い、脾臓や末梢血の様々な細胞におけるGFP発現が変動するか解析する。本遺伝子はX染色体上にコードされているため、雌に生じるX染色体不活化の影響があるか、雌雄差も比較する。 2)ストレスによりアレルギー疾患は明らかに悪化することが知られているので、本マウスに薬剤によるアレルギー性皮膚炎やDNP抗原を用いたアナフィラキシー反応を惹起し、並行して上記のストレス負荷を加え、症状の変動があるかを確認し、またGFP発現との相関を解析する。アレルギーの機序として、2型ヘルパーT細胞への分化偏向と制御性T細胞の機能不全が知られており、ストレスがこれらに働きかけている可能性がある。アレルギーには一般にIgE抗体産生が重要だが、そのためにはIL-4が必要である。IL-4を産生する細胞としてTh2細胞、濾胞ヘルパーT細胞、好塩基球が知られている。これらの細胞の割合やGFP発現の変化を確認する。 3)ストレス解析を多角的に進めるために、ストレス伝達を担うホルモンCRHや糖質コルチコイド受容体(GR)の影響を調べる。CRH欠損(KO)マウスと上記KIマウスの掛け合わせを進めており、マウスの用意が出来しだい、ストレスによるGFP発現がどう変化するか、合成糖質コルチコイドであるデキサメサゾンの投与も併せて試す。また異なる系統のマウスのGRを相互置換したGRコンジェニックマウスも用意しており、ストレスによりGFP発現の違いの有無を解析する。
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