研究課題/領域番号 |
22K07014
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
|
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
久恒 智博 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 主席研究員 (10321803)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 筋ジストロフィー / カルシウム / 骨格筋 / カルパイン |
研究開始時の研究の概要 |
肢体型筋ジストロフィーR1はタンパク質分解酵素の一つ、カルパイン3の遺伝子変異により発症する難病である。その患者は徐々に筋力低下、筋萎縮が生じることにより運動機能障害をおこすことが知られている。現在までにその治療薬はなくその発症メカニズムの詳細も明らかとなっていない。我々はこれまでの独自の研究により、肢体型筋ジストロフィーR1の発症には、カルパイン3の酵素活性に非依存的なメカニズムが関わることを示唆するデータを得ている。そこでこの点に着目した肢体型筋ジストロフィーR1の発症メカニズムの解明を目指す。また、明らかにした肢体型筋ジストロフィーR1の発症メカニズムに基づいた治療法の開発をめざす。
|
研究実績の概要 |
肢帯型筋ジストロフィーR1(LGMDR1)は、カルシウム依存性プロテアーゼのCalpain3を責任遺伝子とする進行性の筋ジストロフィーである。その治療法の確立のためにもLGMDR1の発症機序を分子レベルで明らかにする必要がある。2022年度は既報にある小胞体カルシウム貯蔵量に関する知見を土台にLGMDR1の発症メカニズムに関する実験を試みたが、そもそも貯蔵量に関する野生型とカルパイン3欠損マウス筋細胞において違いが自らの実験系で見出せなかった。そこで2023年度は方針を変え、カルパイン3が筋細胞でいつ・どこで活性化するのかをまず明らかにすることにし、その後にカルシウム動態との関連を明らかにすることにした。 その結果、カルパイン3が自己分解されて初めて活性化することを利用し、活性化型カルパイン3を可視化する実験系を確立することができた。この手法を用いてウアバイン投与におけるカルパイン3の活性化を筋細胞で明らかにすることに成功した。また上記刺激条件下で細胞骨格関連分子が分解されることも明らかにした。さらに、この現象はカルパイン3欠損マウスやカルパイン3活性変異体のノックインマウスではみられないことを確認した。加えて、カルパイン3の4次構造がカルパイン3の特異的な自己分解消化パターンと関連することを明らかにした。また、LGMDR1変異体をカルパイン3欠損マウスに発現させ、その筋細胞内局在を筋組織で調べた。その結果、野生型カルパイン3とLGMDR1変異体にはその局在に大きな違いがあることを明らかにし、この変化がLGMDR1の発症に関わることが推測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度、既報にある野生型とカルパイン3欠損マウスのカルシウム動態の違いが明らかにできなかったため、2023年度は別の視点からLGMDR1の発症メカニズムを明らかにすることにした。その結果、カルパイン3活性化の可視化に成功し、またLGMDR1変異の細胞内での局在異常を明らかにすることができた。LGMDR1の発症メカニズムに関わるカルパイン3の活性化に関わる機構を筋細胞で順調に明らかにできており、遅れを取り戻したので該当評価とした。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度ウアバイン刺激時における筋細胞内のカルパイン3の活性化を可視化することに成功した。また、LGMDR1変異体が筋細胞内で異所発現することを明らかにできた。今後はカルパイン3のより生理的な活性化条件を明らかにしていくことが、LGMDR1の発症メカニズムの解明に繋がると考えている。具体的には、筋細胞分化、筋収縮、筋損傷におけるカルパイン3の活性化を確立した手法を用いて調べていく予定である。
|