研究課題/領域番号 |
22K07016
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
疋田 智也 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍制御学分野, 主任研究員 (20600935)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 細胞外小胞 / がん / イメージング / 脂肪 / 代謝 / 脂肪分解 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞はナノメートルサイズの微小な小胞(EV:細胞外小胞)を放出し、取り込むことで細胞間のコミュニケーションを行なっている。がん細胞のEVは正常細胞のものとは異なり、がん病態促進的な作用を有することが数多く報告されているが、その解析は細胞レベルに留まり、生体レベルで機能しているかは明らかでない。我々は、生体においてEVが集積する臓器や組織をイメージングにより明らかにし、脂肪組織に強く集積することを見出した。また、EV集積に伴って脂肪の組織学的変化や分解が見られ、EVの脂肪代謝への機能が予測された。本研究では、脂肪代謝へのEVの関与及びその分子機構を解明し、新たながん治療や予防について考える。
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研究実績の概要 |
本研究では、がんEVの脂肪代謝への脂肪褐色化・分解への関与を明らかにすると共に、その機能発現に至る分子機構を解明することを目的とする。褐色脂肪細胞には多くのミトコンドリアが存在し、エネルギー代謝活性化により脂肪分解が誘導されることから、がん細胞由来EVを介したミトコンドリア移入が脂肪分解の引き金になっているのではと考え解析を開始した。EVはその形成過程や大きさの違いからエクソソーム(exosome)とマイクロベシクル(microvesicle: MV)に大別されるため、どちらが脂肪分解に重要であるか検討を行なった。細かな条件設定を行い両分子を分離回収した結果、1) ミトコンドリアはMVを介して分泌されること、2) 脂肪細胞3T3-L1へのMV添加では脂肪分解を誘導できないことが、本年度の解析により明らかとなった。3T3-L1細胞は脂肪前駆細胞であり、この細胞から分化誘導した脂肪細胞は白色脂肪細胞ではなく、多数の脂肪滴を有する褐色脂肪細胞様の形態学的特徴を示す。そのため、褐色化誘導を評価する系としては不適切であると考え、膜成熟性アディポサイト凝集培養(MAAC:Membrane Mature Adipocyte Aggregate Cultures)法を用いてマウスから成熟化した白色脂肪細胞を単離培養する方法を構築した。現在、この初代培養系を用いてミトコンドリア豊富ながん細胞由来MVに脂肪分解作用があるかを検討中である。 一方で、がん細胞由来EVが集積した脂肪組織では交感神経線維が発達し、その数も明らかに増加していることを見出した。近年、がん細胞由来EVが腫瘍の自律神経支配を制御することが明らかとなったため、脂肪へのEV集積は自律神経支配を介して脂肪分解を誘導するのではないかと考えた。現在、この可能性についても解析を開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、脂肪の褐色化・分解はがん細胞由来EVを介したミトコンドリア移入により誘導されると予測していたが、3T3-L1細胞へのEV添加では脂肪分解は起こらなかった。そのため、当初の研究計画の見直しを行う必要性が出てきたが、がん細胞由来EVが集積した脂肪組織では交感神経線維が発達し、その数も明らかに増加していることを見出した。現在、交感神経とがん細胞由来EVとの関連性について研究を開始したところである。このように計画の見直しを行なったため、現在までの進捗状況としては遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
3T3-L1細胞ではなく膜成熟性アディポサイト凝集培養(MAAC:Membrane Mature Adipocyte Aggregate Cultures)法を用いてマウスから成熟化した脂肪細胞を単離培養する方法を構築し、この初代培養系を用いてミトコンドリア豊富ながん細胞由来MVに脂肪分解作用があるかを検討する。その一方で、脂肪組織における交感神経の活性化は、褐色化に伴う脂肪分解を誘導することが知られているため外科的または薬剤による交感神経除去により、がん細胞由来EVによる脂肪分解が抑制されるかについても検討を行う。また神経の関連が示唆された場合は、神経細胞や脊髄後根神経節(DRG:dorsal root ganglion)を用いて、がん細胞由来EVが神経伸長作用を示すかどうかを検討すると共に、マルチオミクス解析によりEVの機能推定を行い、神経伸長や脂肪分解への関与やその分子メカニズムについて明らかにする。
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