研究課題/領域番号 |
22K07026
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
田中 正彦 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (60267953)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 小腸 / グリア細胞 / 炎症 / カルシニューリン / ノックアウトマウス |
研究開始時の研究の概要 |
我々が最近作製したグリア細胞特異的calcineurinノックアウトマウスは、小腸の変性・炎症を起こし、消化・吸収機能が低下して死亡した。これらの実験結果は腸管グリア細胞の異常が腸炎の原因となることを示唆していることから、本研究では「腸管グリア細胞が腸炎の新規治療標的となりうるか?」を明らかにする。そのために、このノックアウトマウスの小腸グリア細胞の異常を詳細に解析するとともに、腸炎を防ぐ効果が期待される物質・薬剤の投与効果を解析し、腸管グリア細胞を標的とした新しい腸炎治療法の開発につなげることを目指す。
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研究実績の概要 |
小腸炎を起こすことがわかっているグリア細胞特異的calcineurinノックアウトマウスを用いて、以下の実験を行った。 (1)小腸のグリア細胞から神経細胞や上皮細胞へと働く栄養因子・生理活性物質の異常の解析:このノックアウトマウスにおける腸管グリア細胞の異常を詳細に解明することを目的として、小腸グリア細胞単離培養系 (Teramoto et al., 2022) を用いたグリア細胞分泌物質の異常の解析をWestern blotting(発現)及びELISA(分泌)によって行った。ノックアウトマウス由来の小腸グリア細胞におけるS100Bの発現上昇、GDNFの発現減少、TGF-β1の分泌減少を確認するとともに、新たにTGF-β1の発現減少を明らかにした。腸管グリア細胞におけるこれらの分泌異常がこのノックアウトマウスの小腸炎の原因であることが示唆された。 (2)小腸グリア細胞と上皮細胞との細胞間相互作用の異常の解析:小腸グリア細胞と上皮細胞 (Caco-2) を共培養し、上皮細胞のバリア形成に対するグリア細胞の影響を評価する実験系を確立した上で、ノックアウトマウス由来の小腸グリア細胞では上皮バリア形成促進機能が低下していることを明らかにした。 (3)抗菌薬や抗炎症薬等の投与効果の解析:前年度までに、アンピシリンの飲水投与やケトチフェン(マスト細胞安定化薬)の腹腔内投与によってノックアウトマウスの成長低下や死亡がある程度改善される一方で、カナマイシン(ヒト腸炎治療薬として用いられる)やメサラジン(抗炎症薬)の飲水投与は無効であることが明らかになっていた。今年度、アンピシリン・カナマイシン併用飲水投与、シプロフロキサシン(ヒト腸炎治療薬として用いられる)飲水投与、メサラジン腹腔内投与の効果を調べた結果、シプロフロキサシン飲水投与がある程度有効だった一方で、アンピシリン・カナマイシン併用飲水投与とメサラジン腹腔内投与は無効であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「5.研究実績の概要」に記した通り、(1)小腸グリア細胞からの分泌異常、(2)小腸グリア細胞と上皮細胞との細胞間相互作用の異常、(3)抗菌薬や抗炎症薬等の投与効果という各研究項目に関して解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)小腸のグリア細胞から神経細胞や上皮細胞へと働く栄養因子・生理活性物質の異常の解析:このノックアウトマウス由来の小腸グリア細胞においてNF-κB p65のリン酸化及びNF-κBにより転写制御を受けるiNOSの発現量が増加していたことから、iNOSによって産生されるNOの濃度がノックアウトマウスの小腸グリア細胞(初代培養系)で増加しているかを活性測定によって調べる。また、ノックアウトマウスの小腸グリア細胞での発現変化が明らかになったS100B、GDNF、TGF-β1に関して、免疫染色による確認も行う。 (2)小腸グリア細胞内calcineurin下流シグナルの異常の解析:Western blottingによって判明したノックアウトマウス小腸グリア細胞におけるNF-κB p65のリン酸化亢進を、免疫染色によっても確認する。 (3)神経細胞の活動異常の解析:ノックアウトマウスの腸管神経系の機能異常を明らかにするために、神経細胞の活動性をc-fosの免疫染色によって調べる。 (4)発現・分泌減少を起こした栄養因子・生理活性物質の投与効果の解析:ノックアウトマウスの小腸グリア細胞において発現量や分泌量が減少していることが判明したGDNFやTGF-β1をノックアウトマウスに腹腔内投与し、小腸の変性・炎症、腸管神経系の形態異常、個体レベルでの成長低下や死亡等が改善されるかを調べる。 (5)抗菌薬や抗炎症薬等の投与効果の解析:種々の抗菌薬(アンピシリン、カナマイシン、シプロフロキサシン)や抗炎症薬(メサラジン)の投与効果について、例数を増やして確認する。さらに、このノックアウトマウスの表現型が離乳期後に見られるという特徴に着目し、免疫・抗菌作用をもつ母乳成分であるラクトフェリンの投与効果を調べる。また、成長低下や死亡を改善する効果のあった薬物について、小腸の変性・炎症や腸管神経系の形態異常に関しても改善するかを調べる。
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