研究課題/領域番号 |
22K07037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 愛媛大学 (2023) 国立研究開発法人国立がん研究センター (2022) |
研究代表者 |
塩川 大介 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (90277278)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 大腸がん / がん転移 / 浸潤先端細胞 / シングルセル / がん微小環境 / 共培養 |
研究開始時の研究の概要 |
ゼノグラフト大腸腫瘍をシングルセルRNA-seq法により解析し、腫瘍を構成する細胞の全体像を解明、特に腫瘍内に少数存在する「浸潤先端細胞」を特徴付けるマーカー遺伝子の特定を行う。さらに各種細胞のレセプター・リガンド発現に着目し、がん微小環境に於ける細胞間相互作用の全容を明らかにする。大腸がんオルガノイド・間質細胞共培養系に於ける浸潤先端細胞マーカー遺伝子発現を評価、当該細胞発生を担う間質細胞、及びレセプター・リガンドペアの特定を行う。さらにここで見出された細胞間相互作用の治療標的としての可能性を動物レベルでのがん転移実験で評価し、新たながん治療薬の開発へと繋がる分子標的の同定を目指す。
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研究実績の概要 |
がん組織は、がん細胞自身に加え、免疫、内皮、線維芽細胞、さらに細胞外基質等の間質組織より構成される複雑な集合体である。がんの増殖・浸潤・転移等 様々な過程はがん細胞の性状のみにより規定されるのではなく、それを取り巻く微小環境に大きく影響を受けることが近年の研究成果により明らかになってきた。即ち、がん微小環境に於ける細胞間相互作用は、新たながん診断法や治療法開発を目指す上で有望なターゲットである可能性が高い。 本課題に於いては、まず腫瘍構成細胞のシングルセルデータに基づきがん微小環境に於ける細胞間相互作用をデータ上で再構築し、特にがん微小環境依存的な 「浸潤先端細胞の発生」を制御する細胞間相互作用の同定を試みる。さらに浸潤先端細胞の発生を再現可能な共培養系を作成し、上述にて同定した細胞間相互作用の検証実験、さらに創薬ターゲットとしての可能性を評価することを目的としている。 本研究課題令和5年度の研究として我々は、大腸がん組織に於ける主要な間質構成細胞であるがん繊維芽細胞、マクロファージをゼノグラフト腫瘍より樹立、大腸がんオルガノイドと共培養することにより浸潤細胞 の発生に必要ながん微小環境のin vitroでの再構築をおこなった。その成果として、浸潤細胞の発生は大腸がんオルガノイド単独培養では観察されず共培養系においてのみ再現されること、浸潤細胞の発生をサポートするのはがん線維芽細胞であることを明らかにした。さらに令和4年度の成果として得られた浸潤細胞、がん線維芽細胞のトランスクリプトームデータに基づき当該細胞間の相互作用予測を行った。得られた結果に基づきin vitroでの検証実験を行い、主要な浸潤細胞マーカー遺伝子発現はがん線維芽細胞が分泌するTGFB1により制御されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の研究計画に於いては、初年度の達成目標を(1)シングルセルRNA-seqによる大腸腫瘍構成細胞の遺伝子発現プロファイル解析に定め 、次年度以降に(2)共培養系による浸潤先端細胞の発生メカニズムの解明 、及び(3)動物レベルでのがん転移実験による治療標的分子の評価を行う計画であった。しかし実際の研究では、当初律速段階になるであろうと予想されていたゼノグラフト腫瘍のシングルセルRNA-seq解析及び空間トランスクリプトーム解析を順調に進めることができ、令和5年度の研究課題を前倒しで開始することができた。令和5年度の達成目標である「浸潤先端細胞発生を制御するがん微小環境を再現可能なin vitro共培養系の開発」を無事に完了し、現在動物レベルでの転移実験をスケジュール通りに進めている。
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今後の研究の推進方策 |
動物レベルでのがん転移実験による治療標的分子の評価 令和5年度までに行われた研究成果により、大腸がん浸潤先端細胞の発生をコントロールする細胞間シグナル伝達経路、さらに浸潤先端細胞の機能に重要な役割を果 たすと考えられる遺伝子の候補を複数得ことができた。さらにがん微小環境を再現するin vitro共培養系を構築し、浸潤性細胞の発生ががん線維芽細胞の分泌するTGFB1により制御されることを見出した。令和6年度の研究計画においては、免疫不全マウスによる大腸がん肝転移モデルを用い、TGFBシグナル経路、さらにその下流で発現誘導される浸潤先端細胞マーカー群の転移における機能を動物レベルで解析する。大腸がん肝転移に必須な分子を明らかにし、がん転移の抑制を目指す新たな創薬ターゲットとしての可能性を評価する。
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