研究実績の概要 |
(1)未知エフェクターの検出:前年度に引き続き、作出済みのトランスポゾン挿入変異Legionella pneumophila (Lp) 菌株と繊毛虫Anteglaucomaの共培養実験を実施した。変異株全体(n=782)の共培養実験を完了し、56株(56/782, 7.2%)の病原性喪失株(繊毛虫が生残)を選抜した。AP-PCR法とシークエンスでトランスポゾン挿入部位を確認した結果、Ⅳ型分泌装置関連遺伝子(dot, icm等)の変異(n=17), 既知のエフェクタータンパク遺伝子の変異(n=6)、各種トランスポータータンパク遺伝子の変異(n=7)などを特定した。既報でヒト細胞または原生生物細胞への病原性が知られているものを除外し、まだ報告がない病原性遺伝子の候補として10遺伝子(lpg1859, lpg1343, lpg1206, lpg2856, lpg1828, lpg1013, lpg0077, lpg2345, DEAD/DEAH box helicase, hypothetical protein)を特定した。 (2)ヒト細胞への影響:上記の10遺伝子が変異したLp菌株をHeLa細胞に感染させて48時間後の細胞生存性を確認した結果、7株で細胞が生残した。これらの7遺伝子がコードするタンパクは繊毛虫細胞とヒト細胞の双方に病原性を及ぼす未報告のエフェクターだと考えられる。研究調書に記載したTHP-1細胞とLpの共培養も開始したが、まだ結果が出揃っていない。 (3)部位特異的変異株による再現実験:部位特異的変異によってLpの遺伝子を改変しても同様の結果が得られるかを検証するために、相同組換えによって上記の10遺伝子を欠損させた株の作出を試みたが、R5年度中には欠損株の樹立には至らなかった。
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