研究課題/領域番号 |
22K07053
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 帯広畜産大学 (2023) 京都大学 (2022) |
研究代表者 |
相川 知宏 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (70725499)
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研究分担者 |
野澤 孝志 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10598858)
中木戸 誠 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (80784511)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | A群レンサ球菌 / 金属輸送体 / MntE / CzcD / 抗体治療薬 |
研究開始時の研究の概要 |
耐性菌を極力生ない新たな作用機序を持つ治療薬剤の開発が求められている。本研究では、A群レンサ球菌(GAS)の新たな治療薬剤となり得る人工抗体の取得を試みる。現行抗菌薬の多くが正常細菌叢など標的外の細菌種にも作用してしまうのに対し、抗体は一般的に標的細菌にのみ奏功するため、潜在的な耐性菌の出現や正常細菌叢の撹乱による健康被害を最小現に留めることが可能である。また、抗体の標的にはGASの表層に存在する金属輸送系分子を設定することを特色とする。これらの分子は細菌が生存し、病原性を発揮する上で必須な宿主環境中の金属イオンの獲得や排出を担っており、抗体の標的として有用であると考えられる。
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研究実績の概要 |
本研究は、A群レンサ球菌(GAS)の有する金属輸送体の生理機能と病原性への影響を解析により、これら輸送体を標的とした菌種特異的な人工抗体を作成することを目指している。当該年度においては、本菌の有する金属輸送体ファミリーである陽イオン拡散促進因子(CDF)に着目し解析を行なった。CDFは細菌病原体における細胞内金属ホメオスタシスと毒性に寄与する、幅広い特異性を持つ二価金属トランスポーターの大きなファミリーである。GASは、MnとZnをそれぞれ選択的に輸送する2つの相同なCDF排出トランスポーター、MntEとCzcDを発現している。申請書らは、マクロファージ分化THP-1細胞と好中球の内部においてMntE欠損株とCzcD欠損株の生存率が著しく低下することを発見した。さらに、両欠損株を感染させたマウスの生存率は著しく上昇した。過去の研究と一致して、MntEは細胞内のMnレベルを維持することによってPerR依存性の酸化ストレス応答を制御し、GASの増殖に寄与していた。また、GASの重要な病原因子である連鎖球菌システインプロテアーゼ(SpeB)の成熟とタンパク質分解活性は、亜鉛と銅によって阻害されることが報告されている。ZnはCzcD欠損株の培養上清中のSpeBの成熟とタンパク質分解活性を阻害した。さらに、MnはMntE欠損株のSpeBの成熟とタンパク質分解活性を阻害した。SpeB欠損株の宿主病原性は著しく低下したことから、MntEおよびCzcDを介したGASの細胞内マンガンおよび亜鉛レベルの維持は、この細菌に金属耐性を付与するだけでなく、その病原性にも必須の役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記に示したA群レンサ球菌の2つのCDFであるMntEと CzcDに関する解析の成果は、BBRC誌に受理されたことから、研究の進捗は概ね良好といえる。ただし、いずれのCDFも5-7の膜貫通タンパク質であるために菌体の表層に露出している部位が少なく、人工抗体の標的として結合するための分子構造として適しているとは言えない。今後は、金属獲得に関与し、かつ抗体の標的となり得る本菌の表層タンパク質の機能解析と抗体の標的としての有用性を評価する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、A群レンサ球菌の金属獲得分子の解析を進めていく。具体的には、亜鉛獲得分子であるAdcレギュロンの構成分子の生理機能と病原性への寄与について解析を行う。これまでに、個々のAdcレギュロンの構成分子の欠損菌株の作成を終えていることから、これらの変異株を用いて、増殖試験、細胞感 染実験、マウス感染実験を実施していく予定である。亜鉛獲得分子群は菌体表層に、大部分が露出した状態でアンカリングしていることから、抗体の標的として も適していると考えられるため、変異株を用いた解析から得られた知見をもとに、抗体の標的分子の絞込みについても実施していく。また、本菌の有するヘム鉄獲得分子であるShrについても、当該分子の多くの部分が表層にを露出していることを鑑み、Adcレギュロンと並行して抗体の標的となり得るのかについて解析を実施していく。
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