研究課題/領域番号 |
22K07054
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
清水 隆 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (40320155)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 野兎病 / Francisella / MAIT細胞 / 免疫抑制 / 宿主因子 / CRISPR / 病原因子 |
研究開始時の研究の概要 |
人獣共通感染症は動物を介してヒトに感染する感染症で、近年の気候変動などからそ の再興が危惧されている。中でも野兎病菌は感染力が強く、罹患時の死亡率が高いことから二種病原菌に指定され、バイオテロへの悪用も危惧されている。しかしながら野兎病菌の研究にはBSL-3の実験施設が必要であり、他の病原性細菌と比較し研究は遅れている。その病原性メカニズムにはいまだ不明な点が多く、感染に重要な宿主側の因子もほとんどわかっていない。本研究では野兎病菌を多角的に解析することにより、その病原性因子および感染に重要な宿主因子を同定し、治療法やワクチン開発の礎としたい。
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研究実績の概要 |
人獣共通感染症は動物を介してヒトに感染する感染症で、その再興が危惧されている。中でも野兎病菌Fransicella tularensisは強い感染力と高い死亡率から二種病原菌に指定され、バイオテロへの悪用も危惧されている。しかしながら野兎病菌の病原性メカニズムには不明な点が多く、感染に重要な宿主側の因子もほとんどわかっていない。本研究は野兎病菌の病原性を決定している因子を同定することを目的とし、A. 比較ゲノムによる生体内病原因子の同定、B. 免疫抑制機構に関わる因子の同定、C. 感染における宿主因子の同定、の3項目の研究を行う。本年度はそのうちAとCに焦点をあて、以下の研究を行った。 Aでは、昨年度までにribD遺伝子がMucosal associated invariant T(MAIT)細胞の活性化に重要であることを見出し報告した。今年度はMAIT細胞活性化に重要な宿主因子を同定するために、CRISPR遺伝子編集を用いてランダムにMAIT細胞の遺伝子を破壊したMAIT細胞遺伝子破壊株ライブラリーの作成を行った。現在、その細胞を用いてMAIT細胞の活性化能に影響を及ぼす遺伝子をスクリーニング中である。 Cでは、野兎病菌感染における宿主因子を同定するためにCRISPR遺伝子編集を用いて宿主細胞の遺伝子をランダムに破壊し、野兎病菌の感染により死滅しない細胞をスクリーニングした。gRNAの配列から野兎病菌の感染に重要な2つの因子、DNAJC14とGLS1を同定した。これらの遺伝子の発現を抑制すると、野兎病菌の増殖により細胞が死滅せず、より多くの菌が細胞内で増殖することが明らかとなった。このことから、これらの遺伝子産物が野兎病菌の増殖を抑制する因子であることが明らかとなった。現在、解析結果を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では野兎病菌Fransicella tularensisの生体内における病原性を決定している因子を同定することを目的とし、A. 比較ゲノムによる生体内病原因子の同 定、 B. 免疫抑制機構に関わる因子の同定、C. 感染における宿主因子の同定、の3点に焦点を当て研究を行っている。 Aでは、昨年度までに高病原性F. tularensisと低病原性F. novicidaのゲノムを比較し、アミノ酸変異が蓄積しているリボフラビン合成経路に関連するribD遺伝子に着目した。ribD遺伝子はMucosal associated invariant T(MAIT)細胞のリガンドである5-(2-oxopropylideneamino)-6-D-ribitylaminouracil (5-A-RU)の産生に重要であり、宿主MAIT細胞の活性化および病原性に重要であることが明らかとなった。その結果をLife Sci Alliance誌に報告した。今年度はMAIT細胞活性化に重要な宿主因子の同定に着手している。 Bでは、昨年度までに野兎病菌のトランスポゾン変異株ライブラリ4000株から炎症性サイトカインの誘導が増強する変異株をスクリーニングすることにより、免疫抑制に関わる遺伝子としてpyrC遺伝子を同定し、その結果をFront Cell Infect Microbiol誌に報告した。本年度以降にpyrC遺伝子以外の同定遺伝子について解析予定である。 Cでは、本年度にCRISPR遺伝子編集を用いて野兎病感染に重要な2つの宿主因子DNAJC14とGLS1を同定した。これらの因子について解析を進め、現在論文を投稿中である。 これらのことから研究プロジェクトは概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
野兎病菌によるMIAT細胞活性化機構の詳細を検討するために、CRISPRを用いて宿主細胞のランダム遺伝子破壊株ライブラリを作成し、野兎病菌によって活性化されないMAIT細胞をスクリーニングすることによりMAIT細胞活性化に重要な因子を同定する計画である。 また、野兎病菌の感染に重要な宿主因子の同定では、CRISPRを用いた変異株ライブラリのスクリーニングにより野兎病菌感染によって死滅しない細胞株をスクリーニングしたが、感染自体は起こっており、より多くの細菌を細胞内に保持する細胞株が取得された。しかし、当初の計画では感染が起こらない細胞株の樹立が目的であったため、今後はGFP発現野兎病菌を感染させ、非感染細胞をフローサイトメトリーとセルソーターを用いて分離することにより、野兎病菌が感染できない細胞株の樹立を試みる予定である。
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