研究課題/領域番号 |
22K07055
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
幸田 知子 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 講師 (80336809)
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研究分担者 |
片平 じゅん 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 准教授 (30263312)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ボツリヌス神経毒素 / モノクローナル抗体 / ボツリヌス毒素 / ボツリヌス毒素抗体 / 抗体医薬品 |
研究開始時の研究の概要 |
致死性の疾患であるボツリヌス症の治療には、現在、ウマ抗毒素が唯一の効果的な治療薬として用いられている。しかし、異種動物の血清投与には常に一定のリスクを伴い、均一な抗毒素製剤の安定的な供給体制の維持は、非常に困難である。本申請研究では、既存のウマ抗毒素に替わるヒト抗ボツリヌス毒素抗体カクテル製剤の安定な供給体制構築のため、申請者らが樹立した抗ボツリヌスE型毒素ヒト型モノクローナル抗体のユニークな毒素活性中和機構を明らかにし、毒素‐抗体複合体モデルの構造情報をもとに、抗体遺伝子を改変し、A、B、F型毒素を中和するヒト型モノクローナル抗体パネルを開発する。
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研究実績の概要 |
申請者が所属する研究室で開発された抗ボツリヌスE型神経毒素(BoNT/E)完全ヒト化モノクローナル抗体(hmE9-4)は、BoNT/Eの酵素活性ドメインである軽鎖(L/E)を認識し、単独、かつ、ごく低用量でBoNT/Eの毒素活性を中和する。hmE9-4のBoNT/E毒素中和機構を明らかにするために本年度は、ELISAとhmE9-4のエピトープに関わる領域の同定とhmE9-4とL/Eの分子間相互作用をELISAと等温滴定型カロリメトリー(ITC)により測定した。 L/EとhmE9-4の構造情報を基にしたドッキングシミュレーションソフトから予想された領域2か所(m2, m3)とL/Eの疎水性ポケットの一つで234-244までの連続した領域で250 loopと呼ばれる不安定で結晶化されない部分(m4, m5, m6)をターゲットとした。さらにL/Eの酵素活性中心である亜鉛結合モチーフの点変異体(m8)を加えて合計7つのL/E変異体を作製した。野生型L/Eおよび変異体L/Eを抗原とし、ELISAを行った。hmE9-4を1次抗体、2次抗体に検出用のgoat anti-human IgGを反応させ、基質を発色させた。m3だけが優位に結合の低下が見られた。 さらに、hmE9-4とL/E分子間の相互作用をITCで測定した。1 μMのL/Eに対し、10 μMのhmE9-4をリガンドとし滴下すると発熱が観察され飽和状態に達した。hmE9-4 1分子に2分子のL/Eが結合し、解離定数は約0.57 x 10^10 Mと高く、イオン結合や水素結合によって起こるエンタルピー変化であることが分かった。また、m3 L/Eの解離定数は、約16.0 x 10^10 Mで、野生型L/Eがm3 L/EよりもhmE9-4に対し高い結合親和性を持っており、ELISAの結果と一致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
hmE9-4の認識エピトープを明らかにするために、分子量150 kDa のIgG抗体では分子量が大きすぎるため、共結晶化は困難であるため、重鎖Fc部分を改変し、Fab発現ベクターを構築し、Fab抗体(分子量50 kDa)を作製した。hmE9-4 FabとL/Eとの複合体を作製し、陽イオンクロマトグラフィー、ゲルろ過により精製した。現在、精製複合体の結晶構造解析を実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
結晶構造解析によりhmE9-4のエピトープと抗原認識に関わる可変部アミノ酸が明らかにする。hmE9-4可変部の配列情報を加味し、ドッキングモデルの修正・再構築を行う。また、hmE9-4エピトープに相当するアミノ酸をL/E以外のヒトのボツリヌス症を引き起こすA, B, F型L(以下L/A, L/B, L/F)についても、当研究室保存のmAbを用いてhmE9-4のエピトープ認識するmAb候補を選抜する。これら候補mAbのBoNT中和能やITCによるL/A, L/B, L/Fとの結合親和性を調べ、有用なmAbについて可変部のシークエンス解析を行い、リコンビナントmAbを作製し、抗体カクテルのシードとして用いる。
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