研究課題/領域番号 |
22K07057
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
相根 義昌 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (00624660)
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研究分担者 |
宮下 慎一郎 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (20883292)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ボツリヌス毒素 / 変異 / 血球凝集素 / ムチン / ボツリヌス食中毒 / 経口毒素 / ドラッグデリバリー |
研究開始時の研究の概要 |
ボツリヌス食中毒の発症過程において、食品とともに摂取されたボツリヌス毒素複合体(TC)は、消化管で分解されることなく小腸を通じて、体内に侵入する。TCは、毒性を有する神経毒素(BoNT)が4種の無毒タンパク質から構成された無毒タンパク質複合体(NC)と結合して形成される。先に、我々は、5種のTC構成成分のうち、HA-33にのみ変異を有する菌株を見出し、本菌由来のTCが標準的な菌株のそれと比較し、マウスに対する経口毒性が数十倍高くなることを示した。本研究では、変異株および標準株を用いて、TCの経口毒性の上昇に決定的な影響を与える構成成分とその分子内領域を特定することを目的としている。
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研究実績の概要 |
ボツリヌス食中毒を引き起こすボツリヌス神経毒素(BoNT)は、Clostridium botulinumによって産生される。BoNTは、非毒非血球凝集素と血球凝集素(HA)の複合体(HA-33、HA-17およびHA-70から構成される)が会合したProgenitor Toxin Complex(PTC)を形成する。PTCは純粋なBoNTよりも高い経口毒性を示すため、PTCの形成は経口毒性を発揮する上で重要な機能を有するものと推測されている。先に、我々は、ボツリヌスC型菌Yoichi株が産生するPTC(33vPTC)を構成するHA-33は、同じC型菌の参照株が産生するPTC(wtPTC)のそれと比較し、C末端側領域において複数のアミノ酸残基の置換が生じていることを明らかにした。本研究で、我々は33vPTCとwtPTCのマウスへの腹腔内投与による毒性はほぼ同等であるのに対し、33vPTCの経口毒性はwtPTCのそれよりも90倍高いことを見いだした。一方、33vPTCの経口毒性は、ガラクトースを含む糖との混合投与により低下したことから、33vPTCの小腸上皮からの体内への吸収には、ガラクトースを末端に持つ糖鎖が関与している可能性が示された。さらに、33vPTCのムチンに対する結合は、wtPTCのそれよりも顕著に低かった。これらのことから、33vPTCは、そのHA-33のC末端領域のアミノ酸残基の置換により、小腸上皮組織上のムチン層にトラップされることを免れ、経口毒性が上昇していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HA-33タンパク質に特有の変異を有するC型菌Yoichi株由来のボツリヌス毒素複合体が、同じC型菌の参照株が産生する毒素複合体と比較し、その経口毒性が顕著に上昇することを明らかにした。さらに、その理由の一つとして小腸上皮組織上のムチン層への結合が低下することを実験的に確認したことから、本研究の目的であったHA-33タンパク質の変異と経口毒性との関連性を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
HA-33のアミノ酸置換により、HA-33タンパク質の構造に変化が起こることが推測されているが、その詳細について未解明の部分が残されていることから、今後は、変異を有するHA-33タンパク質内の糖鎖との結合部位の解明、立体構造の変化などを明らかにする予定である。
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