研究課題/領域番号 |
22K07058
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
川崎 信治 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (50339090)
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研究分担者 |
佐藤 拓海 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (10806417)
豊島 拓樹 東京農業大学, 生命科学部, 助教 (20965529)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 嫌気性菌 / ビフィズス菌 / 酪酸菌 / 乳酸菌 / 活性酸素 / O2感受性 / O2耐性 / クロストリジウム菌 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は嫌気性菌のO2感受性機構の解明を目的として、偏性嫌気性菌のクロストリジウム菌やビフィズス菌を用いて研究を行っている。これまでに高いプロバイオティクス活性を持つ乳児由来のビフィズス菌:Bifidobacterium infantisが低濃度のO2下で生育が著しく阻害されることを報告した。本菌株からO2感受性の原因となる活性酸素H2O2を生成する酵素の同定に成功し、1つの酵素反応がビフィズス菌のO2感受性を左右する可能性が推定された。本研究ではビフィズス菌のO2感受性の原因酵素を同定し、O2に高い感受性を示すが故に産業上未利用の有用菌種の育種開発に貢献することを目的とする。
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研究実績の概要 |
申請者は嫌気性菌のO2感受性機構の解明を目的として、絶対嫌気性菌の酪酸菌や嫌気性菌のビフィズス菌、酸素感受性の乳酸菌を用いて研究を行ってきた。ビフィズス菌は乳児腸内菌叢の優占種であり、高いプロバイオティクス効果を持つが、高いO2感受性をもつが故に産業利用が困難な菌種の1つである。これまでにプロバイオティクス活性が高い乳児由来のビフィズス菌:Bifidobacterium infantisが低濃度のO2下で生育が著しく阻害されることを見いだし、本菌株からO2感受性の原因となる活性酸素H2O2を生成する酵素を同定した。また本酵素をコードする遺伝子をO2耐性株のB. minimumに導入したところ、B. minimumがO2感受性に変化した。本結果から、1種類の原因酵素がビフィズス菌のO2感受性を左右する可能性を推定し、研究を進めている。 本申請ではO2に高い感受性を示すB. infantisから申請者らが発見したH2O2生産酵素NPOXに着目して研究を行っている。本酵素は主に成人腸内に生息するO2高感受性のB. adolescentisにも分布し、かつH2O2生成酵素NPOXの精製に成功したため、酵素化学的な諸性質の解析を行った。その結果、B. adolescentisのNPOXは、B.infantisと同様にH2O2生産に関与する原因酵素として機能することが強く示唆された。そこで昨年度は、O2に高い耐性を示すB. minimumが持つNPOXとの比較解析に着手し、部位特異的変異の技術を用いて、酵素化学的な諸性質の解析を行った。また別の角度からの研究アプローチとして、酸素に高い耐性を持つビフィズス菌の探索を行った結果、昆虫に生息するビフィズス菌が、O2が21%の大気下でもコロニーを形成することが判明し、その単離に成功した。単離微生物はビフィズス菌の新種として提唱し受理された。現在は、単離したビフィズス菌が保持するNPOX活性を含むO2関連酵素群の機能解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
O2に高い感受性を示すB. infantisとB. adolescentis、ならびにO2に高い耐性を示すB. minimuや、申請者らが単離した21%O2下でも生育可能なビフィズス菌の単離株を研究材料として用い、筆者らが同定した原因酵素NPOXの機能解析を進めている。それぞれのNPOXの一次構造の比較解析の結果から同定した数カ所の変異部位をターゲットとして、部位特異的変異の技術を用いて、それぞれの遺伝子上に変異を挿入し、変異タンパク質の精製と酵素化学的な諸性質の解析を行っている。一方、昆虫に生息するO2が21%の大気下でコロニーを形成可能なビフィズス菌の単離に成功し、かつ新種提唱に至った。現在は酵素化学的な観点から、単離株の高いO2耐性能を可能とする分子機構の解明に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
O2に高い感受性を示すB. infantisとB. adolescentis、ならびにO2に高い耐性を示すB. minimuや21%O2下でも生育可能な単離株を研究材料として用い、引き続き酵素化学的諸性質の検討、ならびに再現性の取得を行う方針である。変異株を用いた研究成果が得られ次第、国際誌への発表を行う方針である。O2に高い耐性を示す新菌株に関しては、その単離に関する論文を投稿し、受理された。単離株の全ゲノム解読に成功したため、申請者らがO2感受性の原因酵素として同定したNPOXやDHOD、さらには活性酸素防御酵素であるSODやcatalaseに着目して、それらの酵素活性の検出と菌株間での比較解析を中心に研究を進めている。一部に有意な結果を得ており、再現性を取得後に国際誌への発表を行う方針である。
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