研究課題/領域番号 |
22K07080
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
松永 望 岡山理科大学, 理学部, 講師 (30780142)
|
研究分担者 |
片山 誠一 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70169473)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 宿主細菌相互関係 / フィブロネクチン / デルマトポンチン / フィブロネクチン結合タンパク質 / 創傷治癒 |
研究開始時の研究の概要 |
創感染は病原細菌が宿主組織へ付着し、創傷の治癒は著しく遅延する。創感染を引き起こすウェルシュ菌は複数のフィブロネクチン結合タンパク質(Fbps)により、宿主細胞外マトリックスタンパク質の一つであるフィブロネクチン(Fn)に結合する。 一方、創傷の治癒過程においてFnの線維化は重要であり、その促進因子としてデルマトポンチン(DPT)が知られている。 本研究は遺伝子組換え体FbpsやFbps欠損株等を用いてDPTによるFn線維化促進に対する作用や三次元皮膚培養モデルにおける創傷治癒過程に及ぼす影響を調べ、その作用メカニズムについて解析する。
|
研究実績の概要 |
宿主組織に対する病原細菌の付着因子は感染症成立のために重要である。病原細菌の付着因子の一つにフィブロネクチン(Fn)結合タンパク質(Fbps)が知られている。Fnは、宿主が有する細胞外マトリックスタンパク質の一つであり、血漿中や細胞表層に存在する。初期の創傷治癒過程においてはFnが重合し、線維化する。病原細菌はFbpsを介して宿主のFnへ付着し、感染症を成立させていると考えられている。 ウェルシュ菌は創感染により不可逆的な組織破壊をもたらすガス壊疽を引き起こす病原細菌である。申請者らはFnが本菌と宿主コラーゲンとの付着に関与していること、および本菌から複数のFbps(FbpA、FbpB、FbpC、FbpD)を特定し、さらに本菌のオートリシン(Acp)やglyceraldehyde-3-phophate dehydrogenase (GAPDH)もまたFnと結合することを見出した。 申請者らはFbpA・FbpBが生体内においてFn線維化を誘導するDermatopontin(DPT)へ結合し、Fn線維化を阻害していることを見出した。さらに申請者らはその阻害作用がDPTの活性中心の領域であるDP-4とFbpA・FbpBが結合すること、また、FbpAにおけるDP-4への結合サイトを特定した。これらの発見は、本菌による創傷治癒遅延と感染拡大のメカニズムについての理解に貢献したと考えられる。 また、FbpCおよびFbpDの欠損株は野生株と比較し、Fnの結合性は変化しなかったが、Acp欠損株ではFnの結合性が野生株と比較して有意に低下した。このことから、AcpはFnの結合に関与している可能性が考えられた。さらに菌体内で存在しているはずのGAPDHがAcpを介することで菌体表層上に存在している可能性も考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の進捗として、活性中心を有するDP-4がFbpAとDPTの結合およびFbpBとDPTの結合を阻害することをELISAを用いて証明した。また、DP-4がFbpA・FbpBともに結合することも証明した。これらのことから、DP-4はFbpAやFbpBと強く結合するということが考えられた。さらにDP-4に結合するFbpAの領域についてはFbpAオーバーラッピングペプチドを用いた実験により特定することができた。また、ELISAなどを用いた方法によって菌体表層上のGAPDHはAcpを介して表出している可能性が考えられた。 しかしながら、、DP-4に結合するFbpBの領域については未だ特定できていない。コラーゲン-Fnに対する組換え体Acp(rAcp)の結合について検討したが、rAcpがコラーゲンに対して結合してしまったため、コラーゲン-Fnに対するrAcpの結合性の評価ができなかった。 また、3次元皮膚培養創傷モデルやマウスへの感染実験については進んでいない。したがって、やや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
FbpBについてもオーバーラッピングペプチドを作製し、FbpBのDP-4への結合領域を特定することを試みる。また、本菌のAcpがFnとの結合に関与していることから、Acpのどの領域がFnとの結合に関与しているかについて決定する。申請者らは、本菌がAcpを介してGAPDHを菌体表層に表出させていると考えている。今迄の研究結果により、本菌GAPDHのFnへの結合力は低いと考えられ、菌体表層中のGAPDHが宿主Fnとの接着を調整している可能性があり、acp遺伝子欠損株などを用いて、このことについて証明していく予定である。 また、3次元皮膚培養創傷モデルについても立ち上げていく予定である。 一方、FbpDはウェルシュ菌のFn結合にはあまり関与しないことが判明したが、研究過程において本菌の新規のペプチドグリカン加水分解酵素(PGH)の一つである可能性が挙げられた。今後は本菌のペプチドグリカンを精製し、組換え体FbpD(rFbpD)を反応させた後、質量分析を行い、ペプチドグリカンのどの部位の認識・切断に関与しているかを特定する。
|