研究課題/領域番号 |
22K07084
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
大場 真己 東京農工大学, 農学部, 准教授 (30816559)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 組換えウイルス / 豚エンテロウイルスG / 豚トロウイルス / EVG-Type1 / EVG-Type2 |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナウイルスの次の新興感染症に備えることは重要である。新興感染症を起こし得るウイルスの特徴の一つとして変異ウイルスが挙げられる。申請者は国内のブタサンプルを解析し、豚エンテロウイルスにコロナウイルスの仲間である豚トロウイルスの部分的な配列が挿入されているリコンビナントウイルス(エントロウイルス)を発見した。リコンビネーションは変異の一種である。エントロウイルスは、変異したことにより豚エンテロウイルスが今まで持っていなかった能力を獲得した可能性が極めて高い。 本研究では、エントロウイルスの獲得した能力を明らかにし、ウイルスの変異が発生する機構や頻度を解明する糸口をつかみたい。
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研究実績の概要 |
本研究で研究対象としているエントロウイルスは、エンテロウイルスとトロウイルスの自然発生組換えによって生じたウイルスであり、エンテロウイルスの一部にトロウイルスの一部(PLCP;パパイン様システインプロテアーゼ)が挿入されたゲノム構造をしている。エンテロウイルスにトロウイルスの一部が挿入されたものを EVG-Type1と呼び、エンテロウイルスのゲノムのうち構造タンパクをコードする部分が欠落し、代わりにトロウイルスの一部が挿入されたものを EVG-Type2 と呼んでいる。 本研究ではまず、挿入された PLCP がタンパクとして機能できる状態で発現されるのかを明らかにしたいと考えた。 そこで、EVG-Type2 の全長配列を合成し、細胞内でレプリコンとして複製されるような状態を作ること、また PLCP をはじめとする EVG-Type2 の各種遺伝子がコードするタンパクの抗体を作成して細胞中の PLCP をはじめとしたタンパクがプロセッシングを受けているかどうかをウェスタンブロットで確認することを目指した。レプリコンに関しては、合成したEVG-Type2全長ゲノムに相当するRNAを培養細胞に導入することに成功し、real-time PCRによって細胞内でRNAの複製が行われていることを確認した。抗体に関しては、EVG-Type2 の各タンパクのリコンビナントを培養細胞で作成してから、作成したリコンビナントタンパクでマウスを免疫する方法を計画しているが、すでに作成したプラスミドでは十分な量のタンパクが発現されなかった。そのため別のプラスミドを使用して再度タンパク発現を試みている。 EVG と豚トロウイルスの共感染による組換えの再現実験を計画しているが、豚トロウイルスは難分離ウイルスであり現在も分離ができていないため、Type2レプリコンを使用した同義となりうる実験を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に比べEVG-Type2レプリコンの作成が進み、細胞内でのRNA発現が確認できるなど、 EVG-Type2 のゲノムにコードされている PLCP 等が機能できる状態で発現しているかの研究が進みだしたことから、おおむね順調と判断した。また、EVG-Type1と非組み換え型のEVGを培養細胞に共感染させてどちらが優勢に複製するかを確認する実験についても、両ウイルスを識別し定量する系が完成したことで複数回実施することができた。このこともおおむね順調とした理由である。 一方で依然として豚トロウイルスの分離は叶わず、豚トロレプリコンも完成していないことから、豚トロウイルスとEVGの培養細胞における共感染と組換えの再現試験については実施の目途が立っていない。そのため、豚トロウイルスの分離は引き続き挑戦するものの、EVG-Type2 レプリコンを使用した細胞内のウイルスゲノムの組換え再現試験をもって、豚トロウイルスや豚トロレプリコンを使用した場合と同義となるような実験を計画している。これにより豚トロウイルスの分離が叶わない場合でも研究計画は遂行できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、完成したEVG-Type2レプリコンを使用して、EVG-Type2ゲノムにコードされている PLCP 等の遺伝子からなるタンパクがプロセッシングを受けているかどうかを明らかにする。また、EVG-Type2レプリコンが感染している細胞において、非組み換え型の EVG や EVG-Type1 を共感染させる。 EVG-Type2 レプリコンとウイルスの共感染が、ウイルス単体での感染と比べた時に、ウイルス複製や細胞変性効果に変化をもたらすのかどうかについて観察する。これらによってウイルス外殻を持たない EVG-Type2が、非組換え型の EVG や EVG-Type1 の複製等に影響を及ぼす可能性について言及できると考えている。さらに、上述共感染を継続していくことによって、非組み換え型の EVG や EVG-Type1 のゲノムに変異が生じるかどうかを明らかにしていく。 前年度から課題となっている豚トロウイルスもしくは豚トロレプリコンと EVG の共感染による組換え再現試験については、細胞内におけるゲノムの組換えと言う観点から考えると EVG-Type2 レプリコンと非組換え型 EVG の共感染によっても同義での試験が可能と考えている。そのため、最終年度は豚トロウイルスの分離は挑戦し続けるものの、豚トロレプリコンの作成には注力せず、 ウイルス分離が叶わない場合には EVG-Type2 レプリコンを使用した実験を主に実施していく予定である。
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