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新規宿主因子M-SecによるHTLV-1感染伝播メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K07094
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分49060:ウイルス学関連
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

日吉 真照  国立感染症研究所, 次世代生物学的製剤研究センター, 主任研究官 (40448519)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワードHTLV-1 / 感染伝播 / ウイルス粒子形成 / 宿主因子 / HTLV-1感染伝播 / 細胞間伝播
研究開始時の研究の概要

成人T細胞白血病(ATL)等を発症させるヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は一度感染すると生涯体内から排除されない。その一因は、HTLV-1ウイルスは主に感染細胞が標的細胞と密着してウイルスを受け渡し(細胞間感染)、免疫細胞から逃避するためであると考えられている。現在、HTLV-1の細胞間感染メカニズムの詳細は不明である。
これまでの研究において感染T細胞が発現するM-Secの機能を阻害するとHTLV-1感染が抑えられることを見いだしている。そのためM-SecはHTLV-1 感染に重要と考えれらるため、本研究ではHTLV-1感染細胞におけるM-Sec機能の詳細を明らかにする。

研究実績の概要

宿主因子M-Secは正常なT細胞では発現しないが、HTLV-1感染によってT細胞で異所的に発現が誘導される。これまでに、HTLV-1感染T 細胞で発現するM-Secの機能阻害によってHTLV-1感染伝播が抑制されることがわかっているが、その詳細なメカニズムは不明である。これまでにT細胞株においてM-SecはHTLV-1ウイルス粒子の形成に重要なGagを細胞内で凝集させることを見いだしている。
そこで今回、HTLV-1感染キャリア由来の感染T細胞においても同様にM-SecによるGagの凝集が誘導されるか検証した。その結果、HTLV-1感染キャリア由来のCD4+CDAM1+T細胞でもGagの凝集体が確認された。このとき、独自に同定しているM-Sec機能阻害剤を作用させたところ、Gagの凝集体が消失することがわかった。これまでの報告では、HTLV-1 においてGagの凝集体形成は効率の良いウイルス粒子形成に重要であることが示されている。これらのことから、M-SecはHTLV-1ウイルス粒子形成を促進する可能性が示唆された。この可能性を検証するため、培養細胞を用いてM-Sec発現の有無で細胞内のGagとEnvの発現量、及び細胞から放出されたウイルス様粒子(VLP)の量を比較したところ、細胞内のGagとEnvの発現量に違いはなかったが、放出されたVLP量はM-Sec発現によって若干増加することがわかった。このことは、M-SecによるHTLV-1感染伝播増強の一因であると考えられた。
一方、M-Secは細胞骨格因子と相互作用することが報告されている。そこで、M-Secの発現の有無でT細胞株における細胞骨格の細胞内分布が変化するか調べたところ、M-Sec発現によって細胞内の一部にVimentinが収束することがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの本研究において、培養細胞ではM-SecによってHTLV-1ウイルス粒子の形成に重要なGagが細胞内で凝集することを見いだしていたが、今回の研究でHTLV-1キャリア由来の感染T細胞においても同様にGagの細胞内で凝集することがわかった。このことから、M-SecによるGagの細胞内凝集はヒト体内においても普遍的に起こる現象であると考えられた。これまでの報告ではHTLV-1 Gagの凝集体形成は効率の良いウイルス粒子形成に重要であることが示されている。そこで今回、M-Secがウイルス粒子形成を促進する可能性を検証した。培養細胞を用いた解析の結果、M-Sec発現の有無で細胞内のGagとEnvの発現量に変化はなかったが、M-Sec発現細胞から放出されたウイルス様粒子(VLP)の量は若干増加することがわかった。
一方、M-Secは細胞骨格因子と相互作用することが報告されているため、今回、M-Secの発現の有無でT細胞株における細胞骨格の細胞内分布が変化するか調べた。その結果、M-Sec発現によって細胞内の一部にVimentinが収束することがわかった。
これらのことから、M-Secは細胞骨格の制御を介して細胞内輸送を変化させることでGagの凝集を誘導している可能性が示唆された。このように、M-Secが制御するHTLV-1感染伝播のメカニズムの一端を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

今回の研究により、M-Secが発現した細胞から放出されるVLP量が若干増加することがわかった。しかし、これまでの研究におけるHTLV-1感染ヒト化マウス及びキャリア由来感染細胞を用いた感染実験で見られたような、M-SecによるHTLV-1感染伝播の増強を考慮すると、他にもM-Secが寄与するHTLV-1感染伝播メカニズムがあると予想される。そこでさらなる分子メカニズムの解明を目指す。そこでまず、M-Sec発現細胞おけるHTLV-1タンパク質の挙動について詳細に解析する。今回の研究で、M-SecによってHTLV1-1 Gagが細胞内で凝集することがわかったが、他のHTLV-1タンパク質の細胞内局在に対する影響について共焦点レーザー顕微鏡によって解析する。特に、HTLV-1の感染成立に重要なHTLV-1 Envタンパク質の細胞内局在への影響を詳細に解析する。さらに、M-Sec発現細胞から放出されたウイルス粒子について、粒子の大きさ及び構造に違いがあるのか電子顕微鏡で解析を行う。また、ウイルス粒子中に取り込まれるHTLV-1の量をM-Sec発現の有無で比較する。特に、Envは感染成立に直接関係するため、他のグループから報告されている放出されたHTLV-1ウイルスにおけるEnv量を比較する実験系を用いて詳細に解析する。
一方、M-SecによるGagの細胞内凝集を誘導する分子メカニズムの解明を試みる。これまでに他グループから、Gagとリン脂質であるPIP2との相互作用が報告されている。M-Secもまた、脂質との相互作用の報告があるため、脂質を介したM-SecとGagの相互作用が予想される。そこで、細胞内のリン脂質、M-Sec及びGagの局在を解析してその関連を調べる。また、リン脂質を分解する因子を細胞に強制発現させたとき、M-SecによるGagの凝集がどうなるか解析する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 新規宿主因子M-SecによるHTLV-1ウイルス粒子形成の制御2023

    • 著者名/発表者名
      日吉 真照, 高橋 尚史, Youssef Eltalkhawy, 鈴 伸也
    • 学会等名
      第70回日本ウイルス学会学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 細胞骨格制御因子によるHTLV-1感染伝播の分子メカニズム解明2023

    • 著者名/発表者名
      日吉 真照, 高橋 尚史, Eltalkhawy Youssef, 鈴伸也
    • 学会等名
      第69回日本ウイルス学会学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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