研究課題/領域番号 |
22K07099
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中野 雅博 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (90456997)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | インフルエンザウイルス / 二本鎖RNA / 自然免疫 / 高速原子間力顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者はこれまでに、インフルエンザウイルスのリボヌクレオタンパク質がin vitroでループ状の二本鎖RNAを合成すること、一部の感染細胞で二本鎖RNAが検出されることを明らかにしてきた。本課題ではまず、インフルエンザウイルス感染細胞において二本鎖RNAがどのような条件で産生されるのかを明らかにする。次に、二本鎖RNAの細胞内での局在について解析し、宿主の自然免疫応答を引き起こすことができるかどうかを検討する。さらに、様々な変異ウイルスや変異リボヌクレオタンパク質を用いることで、二本鎖RNA形成のメカニズムについても明らかにする。
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研究実績の概要 |
ウイルス感染により生じる二本鎖RNAは、宿主の自然免疫を誘導することが知られている。これまでに我々は、二本鎖RNAを作らないものと考えられてきたインフルエンザウイルスの感染細胞において二本鎖RNAが検出されることを明らかとしてきた。しかし、二本鎖RNAが検出される細胞の割合が非常に少ないことから、感染細胞内で二本鎖RNAが産生されるためには、ある特定の条件が必要とされると考えられた。そこで本研究では、インフルエンザウイルス感染細胞において二本鎖RNAが産生される条件およびメカニズムを見出し、二本鎖RNAによる自然免疫誘導機構を明らかにすることを目的とする。 本年度はインフルエンザウイルス感染細胞内で二本鎖RNAが産生される条件を検討した。まずは感染させる細胞種を検討した結果、既に二本鎖RNAが産生されることを明らかにしていたVero細胞に加え、A549、HeLa、Huh-7、293T細胞でも二本鎖RNAを検出できた。この結果から、二本鎖RNA産生はどの細胞でも起こりえる普遍的な現象であることが示唆された。続いて二本鎖RNAが産生される感染条件について検討した結果、二本鎖RNAは低いウイルス感染価で感染させた場合に産生され、逆に高いウイルス感染価で感染させた場合は産生されないことが明らかとなった。低いウイルス感染価で感染させた細胞においては1種以上のウイルス蛋白質が欠損することがあると報告されている。そこで次に、二本鎖RNA産生とウイルス蛋白質発現の関係性について調べた。その結果、二本鎖RNAはNS1蛋白質を欠損している感染細胞において検出されることが明らかとなった。この結果から、インフルエンザウイルスは感染細胞内ではNS1により二本鎖RNAをマスクし、自然免疫から逃れているのではないかと示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにインフルエンザウイルス感染細胞ではVero細胞のみ二本鎖RNAを検出できており、他の細胞では検出できていなかった。Vero細胞では二本鎖RNAが比較的検出されやすく感染後10 hの細胞で検出できるが、他の細胞の場合、単に感染時間を14 h以上に伸ばすことで二本鎖RNAが検出できるようになった。また、その他の感染条件としてウイルス感染価を検討した。当初はウイルス量を増やすことで二本鎖RNA産生量も増えると予想していたが、予想に反して高いウイルス感染価では二本鎖RNAはほとんど産生されず、低いウイルス感染価で感染させた場合のみ二本鎖RNAが検出された。この結果からウイルス蛋白質の発現と二本鎖RNAの産生には深い関わりがあるのではないかと考え、NS1を発現していない感染細胞において二本鎖RNAが産生されていることを見出した。以上のことから、二本鎖RNAの産生のためのインフルエンザウイルス感染条件について新しい知見を次々と得ることができたが、宿主側の蛋白質発現と二本鎖RNAの産生についてはまだ不明な点が残されており、概ね当初の計画通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初めに、感染細胞で検出される二本鎖RNAが、以前にin vitro RNA合成実験で観察されたループ状二本鎖RNAと同一のものであるかを、高速AFMを用いた微細構造学的手法により明らかにする。具体的には、インフルエンザウイルス感染細胞からvRNPを抽出・精製し、ループ状のRNAと結合したvRNPが観察されるかどうかを高速AFMにより検討する。続いて、核で産生された二本鎖RNAが細胞質に移行する可能性について検討する。我々はこれまでに、NS1欠損型インフルエンザウイルス感染細胞では、二本鎖RNAが核内だけではなく細胞質にも検出されることを発見している。この二本鎖RNAの細胞質への局在が、核から細胞質へと移行した結果によるものかを検討する。具体的には、二本鎖RNAを蛍光ラベリングし、核から細胞質へ二本鎖RNAが移行するかどうかをライブイメージングによって解析する。さらに、二本鎖RNAが細胞質にも局在することは、細胞質に存在するRIG-IなどのRNAセンサーにより二本鎖RNAが認識され、自然免疫を誘導する可能性を示唆する。よって、核または細胞質に二本鎖RNAが局在する細胞において自然免疫が誘導されているかどうかを免疫蛍光染色法で調べることにより、二本鎖RNAの局在と自然免疫の誘導の関連性について明らかにする。また、二本鎖RNAの産生と局在に影響を及ぼす宿主蛋白質についても探索する。
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