研究課題/領域番号 |
22K07104
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
有海 康雄 長崎大学, 高度感染症研究センター, 准教授 (60303913)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | SARS-CoV-2 / RNAウイルス / RNAヘリケース / コロナウイルス / RNA顆粒 / P-body / ストレス顆粒 |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナウイルスSARS-CoV-2は30kbと巨大なRNAゲノムを保持しているが、この巨大なウイルスRNAゲノムをどのように制御維持しているのか不明である。すでに申請者は、核小体に局在するRNAヘリケースDDX21をノックダウンしたヒト培養細胞にSARSCoV-2を感染させると、約4000倍ウイルスRNA複製レベルが顕著に増加することを見出している。そこで、本研究では、RNAヘリケースのSARS-CoV-2 RNAゲノム複製制御における役割を解明し、SARS-CoV-2 RNAゲノムやRNAヘリケースを標的としたRNA創薬を目指した新たな抗ウイルス治療戦略につなげたい。
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研究実績の概要 |
RNAヘリケースはRNAの転写、スプライシング、翻訳、分解など、種々のRNA代謝に関与し、P-body、ストレス顆粒や核小体などRNA顆粒に局在する。新型コロナウイルスSARS-CoV-2は30kbとRNAウイルスでは最大クラスのRNAゲノムを保持している。本研究では、この巨大なウイルスRNAゲノムをどのように制御維持しているのか、宿主RNAヘリケース及びRNA顆粒にフォーカスをあて、巨大なSARS-CoV-2のRNAゲノムを制御するメカニズムを解明し、創薬につなげたい。 SARS-CoV-2感染に伴い、感染細胞内のP-body形成が破綻することを初めて報告した(Ariumi Y. J.Virol.96:e0000222, 2022)。SARS-CoV-2によるP-body形成破綻には、SARS-CoV-2にコードされるNucleocapsid (N)蛋白質が関与することが見出された。一方、SARS-CoV-2感染後にストレス顆粒は誘導されなかった。また、SARS-CoV-2感染Vero E6 TMPRSS2細胞の培養温度を42℃にシフトし、ヒートショックをかけても、コントロールの非感染細胞はG3BP1のストレス顆粒が誘導されたが、SARS-CoV-2感染細胞では、ストレス顆粒は誘導されなかった。さらにSARS-CoV-2 N蛋白質がストレス顆粒因子G3BP1と相互作用し、ストレス顆粒形成を阻害した。共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞内局在の観察により、SARS-CoV-2 N蛋白質とG3BP1が共局在すること、免疫沈降実験により、両者が結合することが見出された。 ストレス顆粒因子G3BP1は、インターフェロン応答など、自然免疫系の誘導に深く関与しているので、SARS-CoV-2によるG3BP1を介したストレス顆粒形成阻害は、自然免疫系の抑制につながることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、SARS-CoV-2感染に伴い、感染細胞内のP-body形成が破綻することを初めて報告した(Ariumi Y. J.Virol.96:e0000222, 2022)。一方、SARS-CoV-2感染後にストレス顆粒は誘導されないことを見出した。さらにSARS-CoV-2 N蛋白質がストレス顆粒因子G3BP1と相互作用し、ストレス顆粒形成を阻害することを明らかにした。ストレス顆粒因子G3BP1は、インターフェロン応答など、自然免疫系の誘導に深く関与しているので、SARS-CoV-2によるG3BP1を介したストレス顆粒形成阻害は、自然免疫系の抑制につながることが示唆された。本研究成果をイギリスで開催されたRNA Granule 2023 Meetingにおいて発表することが出来たので、本研究の進捗状況は概ね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、SARS-CoV-2がどのような分子メカニズムでP-body形成を破綻させているのか解明したい。一方、もう一つのRNA顆粒であるストレス顆粒形成をSARS-CoV-2抑制するメカニズムについても解明したい。これに関連して、SARS-CoV-2によるP-body形成破綻には、SARS-CoV-2にコードされるNucleocapsid (N)蛋白質が関与することが見出している。また、ストレス顆粒形成抑制についても、SARS-CoV-2 Nがストレス顆粒因子G3BP1と相互作用することを見出したので、N蛋白質のどの機能ドメインが、P-body形成破綻やストレス顆粒形成阻害に関与しているのかドメイン解析を行う。さらに、SARS-CoV-2のみならず、SARS-CoVをはじめその他のコロナウイルスのN蛋白質にもその機能ドメインが保存されているのか検討を行う。 一方、先行研究ですでに見出しているDDX21 RNAヘリケースの抗ウイルス活性の分子機構についても明らかにしたい。SARSCoV-2自身もNSP13 RNAヘリケースをコードしているので、宿主RNAヘリケースとの相互作用についても解析を行う。そして、異なるRNAヘリケースがどのようにして、30kbという巨大なSARS-CoV-2 RNAゲノムを制御しているのか、その制御機構の全容を解明し、RNAヘリケースを標的とした創薬に繋げていきたい。これに関連して、RNAヘリケース阻害剤をスクリーニングを行い、抗ウイルス効果について解析を行い、抗ウイルス薬の開発を目指す。
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