研究課題/領域番号 |
22K07117
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石川 絵里 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (20546478)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 自然免疫型T細胞分化 / 転写プログラム / セリンスレオニンキナーゼ / 自然免疫型T細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は通常のT細胞は正常であるが、自然免疫型T細胞のみが消失するシグナル分子欠損マウスを見出した。また、当該シグナル分子の基質として、リンパ球分化に寄与することが知られている転写因子を同定し、さらにこの転写因子の結合モチーフが自然免疫型T細胞分化に必須の転写因子PLZFの上流に存在することを見出した。 本研究では、基質分子のPLZF転写制御における役割、またリン酸化の意義を調べることにより、当該シグナル分子からPLZF発現誘導に至る分子機構を明らかにし、自然免疫T細胞分化を担う新たなシグナル経路の同定を目指す。
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研究実績の概要 |
自然免疫型T細胞に属するインバリアントナチュラルキラーT (iNKT) 細胞や粘膜関連インバリアントT (MAIT) 細胞の胸腺での分化機構は、従来のT細胞に比べ未だ不明な点が多い。また、自然免疫T細胞の分化には転写因子PLZFが必須であるが、T細胞受容体からPLZF発現に至る分子機構の詳細は明らかになっていない。これまでの研究で、プロテインキナーゼD (PKD)のCD4-Cre TgによるT細胞特異的欠損マウスにおいて、従来のT細胞は正常であるものの、自然免疫T細胞のみが消失することを見出した。この消失はPLZF Tgの導入により回復し、PKDがPLZFの発現誘導に寄与することが示唆された。本研究では、自然免疫T細胞のみが特異的に消失するユニークなPKD欠損マウスを用い、PKDの基質分子を同定し、リン酸化の意義を明らかにすることで、自然免疫T細胞分化に至る転写プログラムの誘導機構を明らかにすることを目的としている。 これまでの研究によりiNKT細胞においてPKDは、TCR刺激により活性化することを見出している。また、iNKT細胞におけるPKD基質として転写因子を同定済みであることから、当該転写因子がiNKT細胞で特異的に制御する可能性のある遺伝子をクロマチン免疫沈降ChIP-seqにより解析した。その結果、当該転写因子のPLZF遺伝子上流への結合が認められたため、ChIP-qPCRおよびルシフェラーゼアッセイを行い、PLZFの転写制御に寄与するか否か検討を行った。 さらに、PKDによるリン酸化が基質分子にどのような機能変化をもたらすかを調べるため、TurboID融合基質コンストラクトをiNKT細胞株に導入し、BioID (近位依存性ビオチン化) 法を用いて、リン酸化により制御される相互作用分子の同定を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iNKT細胞におけるPKD基質として同定した転写因子が、iNKT細胞特異的に制御する可能性のある遺伝子を解析するため、全胸腺細胞および分取した胸腺iNKT細胞を用いて、当該転写因子のChIP-seq解析を行った。その結果、胸腺iNKT細胞特異的に、当該転写因子のPLZF遺伝子上流への結合が認められた。また、当該転写因子が胸腺細胞において転写を制御すると報告されている遺伝子のプロモーター部位にも結合が見られたことから、本解析は信頼できるものと考えられた。この結果を検証し、当該転写因子がPLZFの転写制御に寄与するかを調べるため、ChIP-qPCRおよびルシフェラーゼアッセイを行った。ChIP-qPCRにおいてもChIP-seq解析で認められたPLZF遺伝子上流配列への結合が認められた。また、ルシフェラーゼアッセイでは当該遺伝子の導入によりPLZFプロモーター活性が上昇した。以上の結果から、PKDの基質である転写因子は、PLZFの転写制御に寄与することが示唆された。 PKDによる基質転写因子のリン酸化の意義を調べる目的で、BioID (近位依存性ビオチン化) 法を用いてリン酸化により制御される相互作用分子を調べるため、TurboID融合基質のコンストラクトを作成した。iNKT細胞株に導入し、TurboID融合タンパク質の発現や、ビオチン添加による他のタンパク質のビオチン化を確認し、TCR刺激前後のサンプルでビオチン化ペプチドのマススペクトル解析を行った。刺激によりビオチン化が上昇する分子として、基質分子自身と共にPKDが検出され、当該転写因子がPKDの基質であることをサポートする結果が得られた。また、他にもTCRシグナルに関わる転写因子を含め、いくつかの分子が同定された。 以上の結果から、研究は概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果から、iNKT細胞におけるPKD基質である転写因子が、PLZF遺伝子上流部位に結合し、その転写に働くことが示唆された。実際、PLZF遺伝子上流には、当該転写因子の結合モチーフがいくつか存在することから、これらの結合モチーフを欠損させたマウスを作製し、in vivoでのPLZF転写制御および自然免疫T細胞分化における役割を検証する予定である。 当該転写因子のPKDによりリン酸化されるアミノ酸残基はすでに同定済みであり、そのリン酸化不能型変異体ノックインマウスでは、iNKT細胞数が野生型マウスの半分程度に減少することを見出している。この結果から、当該転写因子のリン酸化はiNKT細胞分化に重要である可能性が示唆された。そこで、まずはリン酸化不能型変異体を導入した細胞株を用いてルシフェラーゼアッセイを行い、当該転写因子のリン酸化がPLZFレポーター活性に与える影響を調べる。また、リン酸化不能型変異体ノックインマウスより採取した細胞を用いてChIP-qPCRを行い、PLZF遺伝子上流への結合を野生型と比較したいと考えている。 BioID法により、基質転写因子のリン酸化依存的な相互作用分子として、いくつかの分子が同定された。この中には、TCRシグナル下流で働くことがすでに知られている転写因子が含まれていたが、ノックアウトマウスは作製されているものの、自然免疫T細胞分化における働きは未だ報告されていない。また、転写因子同士の相互作用であることから、本候補分子がPKD基質分子と協同してPLZFの転写制御を担う可能性も考えられる。本候補分子の自然免疫T細胞分化やPLZF転写制御における役割を、ノックアウトマウスの解析およびルシフェラーゼアッセイにより検証したいと考えている。
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