研究課題/領域番号 |
22K07140
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
森田 林平 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (00362541)
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研究分担者 |
佐々木 文之 日本医科大学, 医学部, 助教 (10706469)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | クラスリン / エンドサイトーシス / インフラマソーム / NLRP3 / マクロファージ / 炎症 / 自然免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
マクロファージはファゴサイトーシスやエンドサイトーシスにより細胞外物質を積極的に取り込み、炎症性サイトカインに産生により炎症を誘発する。これまで炎症性サイトカインの産生を制御する様々な分子機構が見出されてきた。 一方、本研究ではクラスリン重鎖に焦点を当て、「エンドサイトーシス自体がNLRP3インフラマソームの形成を制御する」という新しい炎症制御機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
マクロファージ特異的クラスリン重鎖(CHC)ヘテロ欠損マウス(Cltc+/fl;LysM-cre)を作製し、LPS敗血症モデル実験を行った。Cltc+/flマウスに比べ Cltc+/fl; LysM-creマウスでは、血清IL-1βの濃度が低下し、生存率が有意に上昇することを見出した。一方、腹腔常在性マクロファージを用いたin vitro実験では、CHCの減少は、nigericinやimiquimodによるNLRP3 inflammasomeの活性化の低下を引き起こすことを見出した。これは前年度に行ったCltc-knockdown J774-1細胞株の実験結果と一致する。加えて、CHCの減少はNLRP3のE3リガーゼMARCH7との結合を促し、NLRP3のユビキチン化を増加させることを見出した。 NLRP3はearly endosome(EE)とtrans-Golgi network(TGN)で活性化することが報告されている(Zhang et al. Na Immunol. 2023. & Chen et al. Nature. 2018)。私たちはCHCの減少はマクロファージ内のEEとTGNの形成不全をもたらすことを共焦点レーザー顕微鏡で確認した。つまりCHCは、NLRP3が活性化する場であるEEとTGNの形成に必須の分子であることも見出した。 さらに腹腔常在性マクロファージにトランスフェリンを作用させクラスリン依存性エンドサイトーシス(CME)を亢進させることにより、NLRP3とCHCの結合は減少し、NLRP3はMARCH7と結合しユビキチン化を受け、inflammasomeの活性化が低下することを見出した。 一方、Nlrp3欠損不死化マクロファージでは、CHCとCLC(クラスリン軽鎖)の結合とトランスフェリンの取り込みが亢進していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究により、クラスリン依存性エンドサイトーシスとNLRP3 inflammasomeの活性化はCHCによりバランス制御を受けていることが明らかとなった。つまりCHCはearly endosomeとtrans-Golgi networkの形成を安定化させ、さらにNLRP3と結合してinflammasomeの活性化を促す。一方でエンドサイトーシスにより細胞外物質を取り込む際、CHCはNLRP3を離れCLCと結合し、クラスリン依存性エンドサイトーシスを促す。その際NLRP3 inflammasomeの活性化は抑制される。 現在のところ、NLRP3 inflammasomeの活性化を促す物質(βアミロイド、シリカ、コレステロール結晶など)はファゴサイトーシスにより取り込まれ、lysosomal ruptureあるいは活性酸素種の産生を引き起こすことによりNLRP3 inflammasomeの活性化を誘導すると考えられている(Sharma et al. J Cell Biol. 2016)。しかし、エンドサイトーシスとNLRP3 inflammasomeの活性化の関係は不明であった。本研究では、CHCがこれら2つの細胞活動をつなげるキー分子であることを示した。 これらの研究成果は、「CHCを介してエンドサイトーシスとNLRP3 inflammasomeは相互制御する」という新しい細胞活動の発見につながり、現在、論文を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
① 本研究では、NLRP3のWalker A motifのアラニン置換変異体の発現マクロファージを用いた免疫沈降実験により、CHCはNLRP3のWalker A motifに結合する可能性を見出している。Walker A motifはNLRファミリー分子で保存されていることから(Sandall et al. Molecules. 2020.)、本研究で認めた現象は、NLRP6を発現する腸管上皮細胞やNLRP10を発現する皮膚表皮細胞でも生じていることが予想される(http://biogps.org)。 そこで、本研究の論文を投稿した後に、マウス腸管上皮細胞や皮膚ケラチノサイトを用いて、CHCとNLRP6やNLRP10の結合を免疫沈降法やproximity ligation assayにより調べる。また、Cltc+/fl;Villin-creやCltc+/fl;K14-creの作製を開始する。 ② 本研究の中で、マクロファージのCLCの減少はcaspase11の活性化を引き起こすことを見出している。これはCHCと異なりCLCはcaspase11によるnon-canonical inflammasomeの活性化を(直接)抑制している可能性を示唆している。 そこで今後は、マクロファージにおけるCLCとcaspase11の結合を解析し、CLCの新たな機能の解明につなげる。
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