研究実績の概要 |
本研究では癌の進展に伴って起こるリンパ節免疫抑制環境構築機序の解析を行った。 初めにマウスメラノーマ細胞16F10の背部皮下接種によって、所属リンパ節においAutoimmune regulator (Aire)の発現が亢進することを免疫組織化学により発見した。Aireは主に胸腺髄質上皮細胞(mTEC)に発現し、膨大な種類の自己抗原(tissue restricted antigen:TRA)遺伝子の発現を誘導して、自己反応性T細胞の排除に寄与している。さらに二次リンパ組織においてAireを発現する細胞群はいくつか報告されているが、Aireが発現誘導するTRAは自己反応性T細胞の抑制に寄与しているが、癌に応答するT細胞群との関連性を含め、癌の進展におけるこれらの細胞群の役割は不明である。 次に、癌の進展に伴って増加するAire+細胞の同定を試みた。本実験のためにAireレポーターマウス(AGF-KI, J Immunol (2015) 195(11):5149-58)を用いた。AGF-KIマウス背部皮下にB16F10細胞を皮下接種し、Aire発現細胞をGFPにより測定しフローサイトメトリーにより解析した。その結果、B16F10細胞の接種により所属リンパ節において経時的にLNSC画分(CD45-)にAire発現細胞が増加することが認められた。LNSCは主にリンパ管内皮細胞(LEC, gp38+CD31+), 血管内皮細胞(BEC, gp38-CD31+), 線維芽細胞様網状細胞(FRC, gp38+CD31-)に分類されるが、本研究で認められたAire+細胞はこれらのどれにも分類されないDoubleNegative細胞だった。また、組織切片の詳細な観察ではこのAire;細胞群はB細胞濾胞の周囲に局在していることを明らかにした。
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