研究課題/領域番号 |
22K07149
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 敦 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (20569610)
|
研究分担者 |
井上 正宏 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (10342990)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 大腸管状腺腫 / オルガノイド培養 / スフェロイド増殖能 / 大腸前癌病変 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、前がん病変である大腸ポリープを利用して、患者に由来する腫瘍のオルガノイド培養を行う。樹立したオルガノイドにおけるスフェロイド増殖能の獲得が大腸前がん病変の悪性化に関連するとの仮説を検証するとともに、遺伝子変異や遺伝子発現、液性因子などの観点からスフェロイド増殖能の獲得に関与するメカニズムの解明を図る。本研究の成果は、新しい視点に立脚したがん化予防法や新規のがん治療法の開発につながることが期待される。
|
研究実績の概要 |
内視鏡的あるいは手術的に切除した大腸がんの前駆病変である大腸ポリープ(管状腺腫)の切除組織の一部を利用して、これまでに管状腺腫87病変に由来するオルガノイド培養を作製した。そのうち26病変に由来するオルガノイドを単細胞に遊離・培養してspheroid増殖能を評価した結果、管状腺腫由来オルガノイドは大小のspheroidを形成する病変(dual-pattern, d-pattern)と小さいspheroidのみを形成する病変(small-pattern, s-pattern)とに分かれた。一方で、比較対照として作製した早期大腸がんに由来するオルガノイドはd-patternを、正常大腸上皮組織に由来するオルガノイドはs-patternを示した。このことから管状腺腫由来オルガノイドにおけるspheroid増殖能の幅が、管状腺腫の悪性化に関与する可能性が考えられた。 管状腺腫由来オルガノイドにおけるspheroid増殖能に関与する因子を検討したところ、病理学的異型度(低異型度・高異型度)やKRAS遺伝子変異など悪性化に関連する既知の因子とspheroid増殖能との関連は明らかでなかった。次にspheroid増殖能がd-pattern(n=3)およびs-pattern(n=3)を示す管状腺腫由来オルガノイド計6サンプルを用いてマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行ったところ、d-patternを示すオルガノイドではs-patternを示すオルガノイドと比較して遺伝子Aの発現が共通して亢進していた。さらにs-patternを示すオルガノイドに遺伝子Aを過剰発現してspheroid増殖能を評価すると、d-patternに変化することが分かった。これらの結果から、遺伝子Aが管状腺腫由来オルガノイドにおけるspheroid増殖能を規定していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに、当初の計画で予定していた50病変を越える管状腺腫からのオルガノイド培養を作製し、単細胞培養によるspheroid形成能・増殖能の評価を進めている。また研究計画に従って、一部のサンプルを対象として次世代シークエンサーを用いた遺伝子パネルによる遺伝子変異解析を実施した。さらに当初の計画では2023年度以降に予定していた実験のうち、オルガノイドにおける遺伝子発現解析や遺伝子過剰発現・ノックダウンによるspheroid形成能・増殖能の影響の評価などを前倒しして開始している。一方で、コントロールとして予定していた大腸がんおよび正常大腸上皮に由来するオルガノイドの作製とspheroid形成能・増殖能の評価については、当初の計画より遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は大腸がんおよび正常大腸上皮に由来するオルガノイドの作製を進めて、spheroid形成能・増殖能の評価を行う予定である。このために、内視鏡切除検体に加えて外科手術検体からのオルガノイド作製を推進していく。また遺伝子過剰発現やノックダウン実験を含むin vitro実験を進めることにより、大腸管状腺腫由来オルガノイドにおけるspheroid形成能・増殖能の意義と、spheroid増殖能の獲得に関与するメカニズムの解明を推進する。
|