研究課題/領域番号 |
22K07153
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
吉田 年美 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 客員准教授 (80639154)
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研究分担者 |
滝澤 仁 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特別招聘教授 (10630866)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | BCP-ALL / IKZF1 / PDX / メタボロミクス / B前駆細胞型急性リンパ性白血病 / BCR-ABL1 / ヒト患者腫瘍組織移植モデル / ゲノム編集 / ゲノミクス / シングルセル |
研究開始時の研究の概要 |
転写因子IKAROSはリンパ球の早期分化に必須の調節因子であり、その遺伝子IKZF1における変異は高リスクなB前駆細胞型急性リンパ性白血病(BCP-ALL)、特にPh+BCP-ALLに高頻度に見られる。しかしながら、IKZF1変異に伴うBCP-ALL悪性化の機序および悪性化した細胞の特性について詳細な解析はなされていない。本研究では、ゲノム編集により患者由来のBCP-ALLにIKZF1変異を導入しヒト患者腫瘍組織移植モデルを樹立し、IKZF1変異による遺伝子発現変化と細胞特性変化及びシングルセル遺伝子発現比較解析を行うことで、IKZF1変異による悪性化の原因となっている標的分子経路を解明する。
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研究実績の概要 |
転写因子IKAROSはリンパ球の早期分化に必須の調節因子であり、その遺伝子IKZF1における変異は高リスクなB前駆細胞型急性リンパ性白血病(BCP-ALL)、とりわけBCR-ABL1 (Ph+) BCP-ALLに高頻度に見られる。また、IKZF1変異は不良予後因子であることも明らかになっている。しかしながら、IKZF1変異に伴うBCP-ALL悪性化の機序および悪性化したBCP-ALL細胞の特性について詳細な解析はなされていない。近年、我々はDNA結合能を失ったIKAROSタンパク質の発現により、B前駆細胞が前白血病状態に変化する分子機序をマウスモデルで示した。これらの知見を踏まえ本研究では、ゲノム編集により患者由来のBCP-ALLにIKZF1変異を導入し、ヒト患者腫瘍組織移植モデル(PDX)を樹立し、IKZF1変異による遺伝子発現変化と細胞特性変化及びシングルセル遺伝子発現比較解析を行うことで、IKZF1変異による悪性化の原因となっている標的分子経路を解明する。 本研究ではヒト検体の遺伝的背景の違いを克服するため、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて、患者由来のPh+BCP-ALL細胞におけるIKZF1のDNA結合部位に変異を導入し、ヒト患者腫瘍組織移植モデル(PDX)を樹立することで、同一の患者検体由来のIKZF1変異型細胞とコントロール細胞との比較解析を行うという独自のストラテジーを用いた。また、先端技術であるゲノミクス、メタボロミクスのマルチ・オミックスアプローチ及びシングルセル・レベルでの遺伝子発現解析を組み合わせ、IKAROSの代謝経路における役割を理解するとともに、IKZF1変異がもたらすより悪性度の高い細胞亜集団を同定し、悪性化の標的となる分子経路を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)代謝解析: Liquid Chromatography Mass Spectrometry (LC-MS) を用いたメタボロミクス解析によりWTとIKZF1変異型 Ph+BCP-ALL細胞集団の遺伝子発現や代謝物に差が見られている。IKE5-/-においてはプリン・ピリミジン代謝経路が減少していること、ペントースリン酸経路が増強している。これらにより、IKE5-/-はDNA/RNA合成が減少し解糖系へのシフトが起きているdormantな幹細胞様の表現系を獲得している可能性が考えられた。これらにより、IKE5-/-はDNA/RNA合成が減少し解糖系へのシフトが起きているdormantな幹細胞様の表現系を獲得している可能性が考えられる。メタボロミクス解析で得られた結果に基づき、実際にPh+BCP-ALL細胞の解糖系代謝に変化が生じているかを細胞外フラックスアナライザー(Seahorse XFe24(Agilent))を用いて検証した。PDX骨髄由来のIKE5-/-; Ph+BCP-ALLではWTに比べてbasal glycolysis及びcompensatory glycolysisが増強しているという予備結果が得られた(Glycolytic Rate Assay) (2)Ikzf1変異型造血幹前駆細胞のシングルセル発現解析 IKZF1変異による造血系への影響を分子レベルで詳細に解析するため、マウスモデルを用いて造血系の遺伝子発現変化をシングルセルレベルで検証している。IKAROSは造血幹前駆細胞から発現しており、IKAROS欠損によりB細胞分化が損なわれるが、その分化異常は造血幹前駆細胞分画のLMPPの異常に由来する。今年度ではまずIKAROS欠損の影響が最初に現れる分化段階での解析にフォーカスしている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)次年度では独立したPDXサンプルでメタボロミクスおよび細胞外フラックスアナライザーによるglycolysis解析をさらに進めるとともに、ミトコンドリアの機能解析を細胞外フラックスアナライザーにより行う。 (2)次年度では引き続きマウスモデルを用いたシングルセル遺伝子発現解析、シングルセルクロマチン構造解析を造血幹前駆細胞を用いて行うとともに、IKAROS欠損B前駆細胞に対しても同様の解析を行う予定である。これらにより、エピジェネティクス因子であるIKAROSによるリンパ球分化機序およびIKAROS機能欠損によるB細胞悪性化に新たな知見が得られると考えられる。
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