研究課題/領域番号 |
22K07178
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
佐藤 礼子 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (90469966)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 膵臓癌 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の最終目標である、新たな治療標的分子と治療薬シードの同定の為に、(膵臓癌の悪性度と関連する転写因子である)ZIC5が制御する遺伝子の解析を行い、『膵臓癌の生存や抗がん剤耐性を亢進させている新たな分子機構を解明』する。また、関与が明らかになったタンパク質に対しては、治療標的としての有望性を、担癌マウスを用いた解析により検証する。同定された遺伝子を抑制する誘導性shRNA導入、核酸医薬の基盤となるアンチセンス配列の投与、タンパク質の機能を阻害する薬剤、抗体などを抗がん剤と併用投与し、腫瘍の縮小効果を調べる
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研究実績の概要 |
仮我々はこれまでに、様々な癌において高発現する転写因子ZIC5を見出した。本研究では、膵臓癌の悪性度と関連する転写因子であるZIC5が制御する遺伝子の解析を行い、『膵臓癌の生存や抗がん剤耐性を亢進させている新たな分子機構を解明』する。 ZIC5 mRNA発現が全く検出されなかった症例 (ZIC5陰性)と比較すると、ZIC5陽性膵臓癌症例の生存率は有意に低く、ZIC5が膵臓癌の進展と関連していることが示唆された。3種類の膵臓癌細胞株において、ZIC5を発現抑制したところ、全ての細胞株においてアポトーシスが誘導され、ゲムシタビンによる細胞死誘導率も増加した。これらのことから、ZIC5は膵臓癌細胞の生存を促し、抗がん剤に対する感受性の低下を引き起こしていると考えられる。 ZIC5により発現制御をうける遺伝子の網羅的探索のため、RNA-Seq解析を行った。ZIC5を発現抑制した膵臓癌細胞において、発現変動する遺伝子群を同定し、この中から、ヒト膵臓癌組織において、ZIC5と発現が相関する遺伝子を同定した。さらに、非癌部と比較し、膵臓癌部で発現が高い遺伝子を抽出した。さらに重要遺伝子を絞り込むため、臨床データを用いた生存分析を行い、発現亢進が予後不良と関連する遺伝子を抽出した。 このようにして同定された遺伝子(以下、候補遺伝子とよぶ)は、膵臓癌細胞においてZIC5により発現制御をうけ、膵臓癌組織で高発現し、ZIC5と発現が相関する遺伝子であるため、ZIC5が膵臓癌組織において主に発現調節に関与している可能性が高いと考えられる。得られた候補遺伝子について、定量的PCRを行い、ZIC5の発現抑制により発現が低下するもの、過剰発現によって発現が亢進するものを複数同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ZIC5により発現制御をうける遺伝子の網羅的探索のため、RNA-Seq解析を行った。ZIC5を発現抑制した膵臓癌細胞において、発現変動する遺伝子群を同定し、この中から、ヒト膵臓癌組織において、ZIC5と発現が相関する遺伝子を同定した。さらに、非癌部と比較し、膵臓癌部で発現が高い遺伝子を抽出した。さらに重要遺伝子を絞り込むため、臨床データを用いた生存分析を行い、発現亢進が予後不良と関連する遺伝子を抽出した。 このようにして同定された遺伝子(以下、候補遺伝子とよぶ)は、膵臓癌細胞においてZIC5により発現制御をうけ、膵臓癌組織で高発現し、ZIC5と発現が相関する遺伝子であるため、ZIC5が膵臓癌組織において主に発現調節に関与している可能性が高いと考えられる。得られた候補遺伝子について、定量的PCRを行い、ZIC5の発現抑制により発現が低下するもの、過剰発現によって発現が亢進するものを複数同定した。これらの中には、既に膵臓癌の悪性化と関連することが報告されているものが複数存在したが、膵臓癌との関連が報告されていないものもあった。また、創薬標的になりやすい酵素活性をもつタンパク質をコードする遺伝子も複数同定されており、膵臓癌の新たな生存機構の解明と治療標的の同定に十分有望なものが同定されてきている。また、当初予定になかったGSEA解析によって重要な生物学的現象が同定されてきている。
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今後の研究の推進方策 |
膵臓癌の新たな生存機構の解明と治療標的の同定に有望な遺伝子が複数同定されているため、これらの機能解析を行う。複数の膵臓癌細胞において、発現抑制、または安定過剰発現を施し、膵臓癌細胞の生存や抗がん剤感受性について試験する。キナーゼであれば、キナーゼ活性中心に変異を入れて影響を調査する。膜受容体や分泌因子であった場合、阻害抗体や阻害ペプチドの作製を行い、阻害の影響を調査する。また、どのようなシグナル経路に作用するか検証を行う。ZIC5の下流因子としての重要性も検証する。 上記の解析により、膵臓癌の生存や抗がん剤耐性に重要であることが示されたタンパク質や因子について、マウス生体内腫瘍の生存における重要性を試験する。ヒト膵臓癌細胞を免疫不全マウスに移植(皮下または同所)した担癌マウスまたは膵臓癌発症モデルマウス(KPCマウス)を使用する。同定されたタンパク質の阻害薬や阻害抗体が既にあるものについてはその阻害剤を投与し、腫瘍増殖や転移が抑制できるか、抗がん剤と併用することで腫瘍縮小効果が増大するかを試験する。阻害法が確立されていないタンパク質に関しては、誘導性shRNA導入細胞を用いて検証を行う。または、アンチセンスオリゴの投与により阻害を試みる。必要に応じて、阻害抗体の作製、阻害ペプチドの探索、阻害化合物の探索を行う。並行して、ZIC5タンパク質の機能を阻害する化合物の開発を現在進めているため、ZIC5を標的とする治療薬シードについても同時に検証を行う。 これらの解析により、ZIC5またはZIC5が制御する因子の中から、膵臓癌の生存や抗がん剤耐性を阻害するための治療標的分子が同定されることが期待される。
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