研究課題/領域番号 |
22K07186
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坪田 庄真 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (10801657)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 神経芽腫 / スフェア / MYCN / シングルセル解析 |
研究開始時の研究の概要 |
小児がんの一つである神経芽腫は、様々なゲノム異常とエピゲノム異常が混在し、治療抵抗性から自然退縮まで表現型が極めて多様である。しかし、そもそもなぜ神経芽腫が発生するのか、特にがん化の時期や細胞特異性、神経芽腫を成り立たせる因子(発生に必須の遺伝子)については不明である。本研究では、独自の培養技術とシングルセル遺伝子発現解析の結果を活用し、マウス副腎組織を対象とした各種細胞タイプの選別、in vitroでのがん化誘導による神経芽腫の起源となる細胞(がん化する細胞タイプ)の同定、網羅的な遺伝子発現解析や介入実験を行い、神経芽腫の時期や細胞特異性に着目した発生機構の解明を目的とする。
|
研究実績の概要 |
小児がんの一つである神経芽腫は、様々なゲノム異常とエピゲノム異常が混在し、治療抵抗性から自然退縮まで表現型が極めて多様である。しかし、そもそもなぜ神経芽腫が発生するのか、まだまだ謎が多い。例えば、がん遺伝子MYCNが神経芽腫を引き起こすことは分かっているが、その詳細な起源と発生機構、特にがん化の時期や細胞特異性、神経芽腫を成り立たせる因子(発生に必須の遺伝子)については不明である。神経芽腫には体の発達と関係した時期特異性(発生~小児期)が存在し、起源となる細胞タイプとの相関(細胞特異性)が示唆されている。研究代表者は独自の細胞培養系(in vitro神経芽腫発生モデル)を用いて神経芽腫のがん化に時期特異性が存在するという予備データを得た。このような背景から、本研究は時期や細胞特異性に着目した神経芽腫の発生機構の解明を目的とし、将来的な新規治療法の開発に資する基盤を構築することを目指した。具体的には、(実験1)生後0日マウス副腎組織中に存在しがん遺伝子MYCNにより形質転換する細胞タイプの同定、(実験2)がん化細胞タイプの週齢別での存在確認、(実験3)がん化細胞タイプの週齢別の選別と遺伝子発現解析、(実験4)時期特異性を担う遺伝子の同定という実験項目について研究を進めている。実験1については、細胞表面抗原に対する抗体を用いた細胞選別を試した。実験2については既に知られている神経芽腫の起源と推定されている副腎組織中の細胞タイプについて週齢別の存在をRNA-ISHで評価した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れの理由は、実験1の表面抗原マーカーを用いた細胞選別で想定通りに実験を遂行できなくなり、その代案である蛍光タンパク質レポーターマウスの導入について検討を行っていたが今年度中には間に合わなかっためである。実験1について、細胞表面抗原に対する抗体を用いた細胞選別を行うため、最も神経芽腫の起源として有力であり副腎組織中に存在している神経芽細胞の表面抗原を既報のシングルセル遺伝子発現データから選択した。その中でGfra3を候補分子として選びフローサイトメトリーで細胞表面での発現を評価した。生後1日マウス副腎組織から酵素処理で単細胞懸濁液を用意し、コントロール抗体とanti-Gfra3抗体で染色を行ったが、アイソタイプコントロールでも染色される細胞が存在し、その割合はGfra3抗体の染色と同等であった。おそらくマクロファージなどの免疫系細胞が発現するFc受容体が非特異的に抗体と結合している可能性が高いと考えた。そこでFc受容体ブロッキングを試したが、結果は変わらなかった。抗体を用いた細胞選別という方法は難しいと考え、代案である蛍光タンパク質レポーターマウスを用いた細胞単離を行うこととし、マウスの選択など準備を進めた。 実験2について、生後1日、7日、14日、21日のマウス副腎組織凍結切片を作成し、神経芽腫起源細胞の候補であるシュワン前駆細胞及び神経芽細胞のマーカー遺伝子を対象にRNA-ISHを行った。生後1日マウスの副腎組織には、シュワン前駆細胞及び神経芽細胞それぞれのマーカー遺伝子の発現が確認できた。興味深いことに、神経芽細胞は副腎組織中の皮質領域によく観察された。一方、生後21日の副腎組織では、シュワン前駆細胞マーカーの発現細胞は確認できたが、神経芽細胞マーカー発現細胞はほとんど確認できなかった。この結果は、神経芽細胞が神経芽腫の起源である可能性を示唆する結果となった。
|
今後の研究の推進方策 |
実験1については、代案である蛍光タンパク質レポーターマウスを用いて細胞選別を試す。具体的には、神経芽腫の起源候補であるシュワン前駆細胞及び神経芽細胞に特異的に発現する遺伝子のレポーターマウスを導入し、副腎組織からの細胞単離を試みる。また、より直接的にMYCNにより形質転換する細胞タイプを同定するために、副腎組織及び培養細胞(in vitro神経芽腫発生モデル)を対象にしたシングルセル遺伝子発現解析を並行して行う。実験1が進まない限りは、実験3及び実験4には取りかかれないため、まずは実験1を最優先事項として研究を推進していく。
|