研究課題/領域番号 |
22K07193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
松井 未来 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (30893953)
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研究分担者 |
大矢 進 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (70275147)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | カリウムチャネル / がん微小環境 / 免疫抑制細胞 / がん悪性化因子 / KCa3.1 / Kir2.1 / 腫瘍随伴免疫抑制細胞 / サイトカイン / ケモカイン |
研究開始時の研究の概要 |
がん微小環境(TME)に浸潤して集積するがん関連免疫抑制細胞群は、がん免疫監視機構を抑制し、がん悪性化や予後不良に関与する。研究代表者は、①がん浸潤性免疫抑制細胞のサイトカイン産生やTME集積におけるKCa3.1の役割を解明することが、がん悪性化の克服に繋がるのではないか、②TMEにおけるカリウムホメオスタシス異常による免疫監視機構の破綻を正常化するために、KCa3.1が重要な標的になるのではないかという問いに辿りついた。 本研究では、TMEに集積してがん悪性化や免疫監視機構の脆弱化に関与するがん関連免疫抑制細胞におけるKCa3.1の役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、がん微小環境(tumor microenvironment: TME)に集積してがん細胞免疫監視機構を脆弱化するがん浸潤性免疫抑制細胞におけるカリウムチャネルの病態的役割とがん免疫賦活薬の標的としてのカリウムチャネルの潜在性を明らかにすることである。がん随伴マクロファージ(tumor-associated macrophage: TAM)や制御性T細胞(regulatory T cell: Treg)などのがん浸潤性免疫抑制細胞が産生するがん悪性化因子[サイトカイン・ケモカイン(IL-1B、IL-10、IL-8)、血管新生・増殖因子(VEGFなど)]の発現・産生におけるカリウムチャネルの役割を解明し、がん免疫療法の新戦略を提案する。 本年度の研究計実施計画では、①ヒト単球様THP-1細胞をM2型マクロファージに分化させたTAM様細胞をカルシウム活性化カリウムチャネル(KCa3.1)阻害薬または活性化薬で処置した際のサイトカイン・ケモカイン(IL-8、IL-10など)や血管新生・増殖因子(VEGF、TGF-β1など)の発現解析を行った。また、②ヒト単球様HL-60細胞を骨髄由来抑制細胞(myeloid-derived suppressor cell: MDSC)に分化させ、MDSC様細胞のカリウムチャネルの分子同定と機能解析を行った。研究実施計画①より、KCa3.1活性化薬により、IL-8やIL-10の発現・産生が抑制されることを明らかにした。また、シグナル経路の解析により、ERK-CREBおよびJNK-c-Jun経路が関与することを見出した。研究実施計画②では、MDSC様細胞において内向き整流性カリウムチャネルKir2.1が機能発現することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ヒト単球様THP-1細胞を分化誘導して作成したM2型マクロファージを用いて、次の①~③を明らかにした。①選択的KCa3.1活性化薬SKA-121の24時間処理により、IL-8およびIL-10の発現が有意に抑制され、KCa3.1阻害薬TRAM-34の前投与によりSKA-121の効果はほぼ消失した。②TMEを模した高カリウム環境によるIL-8とIL-10の発現亢進を、SKA-121は有意に抑制した。③各種細胞内シグナル阻害薬のうち、ERK阻害薬とJNK阻害薬によりIL-8とIL-10の転写が抑制され、SKA-121処置により、ERKとJNKのリン酸化が抑制された。 本研究成果は、第96回日本薬理学会年会と第51回日本免疫学会学術集会で自身が発表するとともに、学術雑誌International Journal of Molecular Sciencesに発表した[研究発表(令和4年度の研究成果)参照]。また、骨髄由来抑制細胞MDSCにおけるカリウムチャネルの役割を検討するために、HL-60細胞を骨髄由来抑制細胞MDSCに分化させ、内向き整流性カリウムチャネルKir2.1が機能発現することを見出した。以上より、研究計実施計画をほぼ達成しており、「全体としてはおおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目1.TregおよびMDSCに機能発現するカリウムチャネルの役割:所属機関で構築されたバイオバンクの各種がん組織(前立腺がん、乳がん、大腸がん)を活用し、がんステージや悪性度によるTregおよびMDSCの割合とカリウムチャネル(KCa3.1やKir2.1)発現の相関関係を定量解析する。(担当:松井・大矢・梶栗)また、TregおよびMDSC をカリウムチャネル阻害薬または活性化薬で処置した後、①ELISA法によるサイトカイン・ケモカイン(IL-8、IL-10など)発現解析、②血管新生・増殖因子(VEGF、TGF-β1など)発現解析、③抗がん剤耐性能の解析、④がんへの集積に関わるシグナル経路の解析を行う。(担当:松井・大矢・学生) 研究項目2.実験的TMEにおけるカリウムチャネル発現・活性変動とその病態生理学的意義: 実験的TMEとして、がんスフェロイド(前立腺、大腸、乳がん)培養上清、低pH、低酸素、低栄養(グルコース)、高乳酸、高カリウムを用いる。各種実験的TMEに曝露した際のTAM、TregおよびMDSCの極性変化、カリウムチャネル発現・活性変動、および研究項目1の①~④を解析する。(担当:松井・大矢・梶栗・学生)上記研究項目が順調に進展した場合には、次年度に予定されている実験(又はその予備実験)を開始する。がん関連データベースを利用した研究も実施する。(データサイエンス学部との共同研究)
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