研究課題/領域番号 |
22K07207
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山下 俊一 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30529095)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | マイトファジー / ミトコンドリア / 抗がん剤 / mitophagy / mitochondria |
研究開始時の研究の概要 |
ミトコンドリア選択的オートファジー(マイトファジー)は、機能不全ミトコンドリアを分解し、ミトコンドリア活性の維持や、活性酸素種の除去に寄与している。また、抗がん剤処理をしたがん細胞でもマイトファジーが誘導され、抗がん剤耐性を上昇させている。申請者は、抗がん剤ゲムシタビンが、これまでの報告にない新奇のマイトファジー経路を介して、ゲムシタビン耐性に寄与していることを見出した。本研究では、ゲムシタビン誘導性マイトファジーの分子機構解明と、マイトファジー抑制を介したゲムシタビンの抗腫瘍効果の向上を検討し、ゲムシタビンとマイトファジー抑制による併用化学療法の分子基盤解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、抗がん剤によって誘導されるマイトファジーの分子機構と生理的意義について解明し、抗がん剤を用いた化学療法において新たな標的を見出すことを目的としている。前年度までに、抗がん剤によって誘導されるマイトファジーにおいて、冗長的に働く2因子を同定し、それらを同時に欠損させたがん細胞の樹立に成功していた。本年度はこの細胞の解析を進めた。マイトファジー完全欠損がん細胞を用いて、メタボローム解析、遺伝子発現解析などを行い、その生理的意義について解析を進めた。その結果、マイトファジー完全欠損細胞は、ミトコンドリア由来の活性酸素種が通常培養時から劇的に増加していた。また、それを除去するために抗酸化ストレス経路であるNrf2経路が活性化され、下流の抗酸化タンパク質の発現が上昇していた。この経路を阻害剤によって部分的に阻害すると、野生型のがん細胞には影響を与えないが、マイトファジー完全欠損がん細胞では細胞死を引き起こした。この細胞死は、細胞内での酸化脂質の上昇や、鉄キレート剤やフェロスタチン1によって抑制されるなどの特徴を呈したことから、鉄依存性細胞死フェロトーシスであると考えられた。フェロトーシスはがんをはじめとする様々な疾患と関係することが報告されている細胞死であるが、その制御機構については未解明な部分が残されている。本研究では、新たにマイトファジーがフェロトーシスを抑制していることを明らかにすることができ、今後フェロトーシス関連疾患において、マイトファジーを標的とした介入法開発の可能性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗がん剤を含むマイトファジー誘導刺激に、冗長的に働く2因子を同定した。この2因子を欠損したがん細胞では、抗がん剤で誘導されるマイトファジーも完全に消失した。この細胞を用いて、マイトファジーがミトコンドリア活性酸素種を抑制することでフェロトーシスから細胞を保護していることを明らかにし、原著論文として報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに同定した、マイトファジーに冗長的に働く2因子がどのようにして、マイトファジーに寄与するかについて、より詳細な検討を行っていく。
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