研究課題/領域番号 |
22K07211
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 格 京都大学, 医学研究科, 助教 (10610454)
|
研究分担者 |
今留 謙一 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 高度感染症診断部, 部長 (70392488)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | CAEBV / オミックス解析 / シングルセル解析 |
研究開始時の研究の概要 |
慢性活動性EBウィルス感染症(Chronic Active EBV infection; CAEBV)はEpstein-Barr Virus (EBV)がT細胞もしくはNK細胞に感染し腫瘍的増殖と制御不能の活性化を起こす非常に予後不良な疾患です。本研究では“何故CAEBV患者ではEBVに感染したT/NK細胞が排除できず致命的増殖と活性化を起こすのか”という問いに答えるべく、最新技術を用いた多角的網羅的解析を行います。臨床的に意味のある変異に重点を置いて総合的に解析する事により治療標的に結びつく因子の抽出を目指します。
|
研究実績の概要 |
今回、CAEBVの発症メカニズムを明らかにするため、CAEBV-NK型患者27名を対象に、メチル化アレイ解析、RNAシーケンス、全ゲノムまたはエクソームシーケンスを実施した。さらには10x genomics社が提供しているシングルセル解析プラットフォームであるChromiumシステムを用いて、シングルセルレベルでのEBV感染細胞の同定を試みた。 CAEBV-NK型は、コントロール(伝染性単核球症:n=4、健康なボランティア:n=2)と比較して、CpGアイランドDNAの高メチル化が特徴的であった。特に、3分の1の患者(n=9)は、CpGアイランドメチル化表現型(CIMP)と呼ばれる、より広範囲なメチル化過剰表現を示し、いくつかの癌抑制因子の転写サイレンシングを有していた。変異解析の結果、CIMP陽性患者はCIMP陰性患者よりもはるかに高い腫瘍変異負荷を持っていた(1例あたりの変異数は40.25対5.75、p<0.0001)。さらに、本コホートで病勢進行により死亡した患者はすべてCIMP陽性であった(4/9、44.4%)。特に、そのうちの2人はARID1Aのナンセンス変異を、残りの2人はPD-L1の構造変異を有していた。T型とNK型の両方を含むCAEBV患者40人の拡大コホートに対するターゲットディープシーケンスでも、ARID1Aのナンセンス変異またはPD-L1の構造変異を有する2例が追加的に同定された。興味深いことに、これらの患者はすべて疾患増悪のため死亡していた。 またシングルセル解析においては、3994細胞が解析され、1379細胞で構成されるクラスターが、遺伝子と表面抗原の発現パターンからNK細胞と同定された。EBER1が高発現した細胞はいずれもNK細胞に認められ、684細胞(NK細胞中の49.6%)で構成されるクラスターを形成していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メチル化アレイ解析、RNAシーケンス、全ゲノムまたはエクソームシーケンスによる多角的オミックス解析は順調に進行している。稀少疾患であり患者検体リクルートがボトルネックではあるが、自施設そして分担研究者、協力研究者の施設における保存検体や新規症例を適宜解析することにより解析症例を拡充している。シングルセル解析においては新規技術の開発であり、当初はEBV感染細胞の同定に難渋しその検出率は低率であったが既存の遺伝子解析技術と組み合わせることで、さらなる解析に耐えうるレベルにまで検出率を上昇させることが可能となった。以上の状況から現在本研究課題は概ね順調に発展していると自己評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
今回、CAEBV-NK型患者27名を対象に実施したメチル化アレイ解析、RNAシーケンス、全ゲノムまたはエクソームシーケンスによる多角的オミックス解析では、CAEBVにおける臨床転帰と遺伝的/エピジェネティックな変化の間に明確な相関があることを初めて示した。シングルセル解析においては、今回は1症例での検討であるが、EBV感染細胞を高率に同定できていると考えられた。今後シングルセル解析症例を増やし、EBV感染細胞の特徴とそれをとりまく正常免疫細胞に関する病態をさらに明らかにしていく。 多角的オミックス解析やシングルセル解析によって同定された遺伝子的特徴、免疫環境的特徴をさらに詳細に解析し臨床的に応用可能な治療標的となる因子を同定していく。現在、免疫不全マウス(NOGマウス)にヒトサイトカイン遺伝子を導入した次世代免疫不全マウスである次世代NOGマウスを用いてCAEBVのPDXモデルの樹立を試みている。PDXモデルが樹立されれば、同定された臨床的に応用可能な治療標的因子に対する治療モデルを作成し前臨床試験として新規治療開発研究を展開していく予定である。
|