研究課題/領域番号 |
22K07245
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
高取 敦志 千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ がん先進治療開発研究室, 室長 (40455390)
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研究分担者 |
丸 喜明 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 発がん制御研究部, 研究員 (30742754)
渡部 隆義 千葉県がんセンター(研究所), がん研究開発グループ, 研究員 (60526060)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 遺伝子増幅 / オルガノイド / MET / 増幅遺伝子 / ケミカルバイオロジー |
研究開始時の研究の概要 |
発がんに関わる増幅遺伝⼦を標的とした薬剤開発の遅れの原因として、その希少性から研究基盤が整っていないことが挙げられる。そこで本研究課題では、がん組織由来オルガノイドを用いて増幅遺伝子を標的とする創薬評価システムを構築する。固形がんから樹立するオルガノイド株の中から遺伝子増幅陽性株をライブラリー化し、増幅遺伝子に選択的に結合するPIP-seco-CBI候補化合物評価に用いる。増幅遺伝子標的PIP-seco-CBI化合物の中から、増幅遺伝子に効果を持ち抗腫瘍効果を示す化合物を取得し、これまで創薬が難しいと考えられてきた治療標的に対する新規治療法の提案につなげる。
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研究実績の概要 |
がんの発生原因の一つとなる増幅遺伝子を標的とした薬剤開発はがんドライバー遺伝子異常の中でも点突然変異に比べ遅れているのが現状である。研究代表者らは遺伝子配列特異的にDNAをアルキル化できる化合物(PIP-seco-CBI)を応用し、増幅MYCN遺伝子を認識するPIP-seco-CBI化合物であるCCC-002がMYCN遺伝子増幅陽性の神経芽腫細胞に対して抗腫瘍効果を示し、MYCN遺伝子のコピー数を減少させる効果を確認した。この結果はPIP-seco-CBIによる増幅遺伝子標的治療戦略の可能性を示すが、その開発には様々ながんにおける増幅遺伝子に対する効果を適切に評価できる薬剤評価系の構築が必須である。そこで本研究では、がん患者組織由来オルガノイドを用いて増幅遺伝子を標的とする創薬評価システムを構築し、増幅遺伝子標的化合物の評価を進めることにより、これまでundruggableであった治療標的に対する新しいがん治療研究につなげることを目的とする。そこで、まずCCC-002が同じく認識配列を持つMET遺伝子の増幅陽性オルガノイドを用いて薬効評価を行い、さらに新しく樹立するオルガノイドに応用を図っていく。2022年度はMET遺伝子増幅陽性胃がん細胞株を用いて構築した化合物評価系がオルガノイドにおける化合物評価に用いることができることを確認した。その中でCCC-002がMET遺伝子増幅陽性オルガノイドに細胞死を誘導し、MET阻害剤に比べ低いIC50値を持つことが示された。一方、他の婦人科がん患者組織由来オルガノイドの樹立も進め、MET遺伝子増幅のないオルガノイドにおいてはCCC-002の効果が弱いことも確認した。これらの結果から、患者組織由来オルガノイドが増幅遺伝子を標的とした薬剤開発に有用であると考えられ、引き続き本研究を推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度はMET遺伝子増幅陽性胃がん細胞株を用いて構築した化合物評価系において、MET遺伝子を標的とする化合物CCC-002の効果を評価した。予備実験で用いた胃がん細胞株MKN45は平面培養が可能な細胞であるが、培養はオルガノイド培養法に準じた培養法で行った。その結果、CCC-002は強い細胞増殖抑制効果を示し、既存のMET阻害剤であるcrizotinibおよびSU11274と比較して低いIC50値を示した。この時のMET遺伝子発現をRT-qPCRおよびwestern blotにより調べたところ、いずれにおいても顕著に発現が抑制されていたことから、増幅MYCN遺伝子陽性の神経芽種細胞における結果と同様の効果がこの評価系においても確認できた。そこで次に、オルガノイドへの応用を試みた。オルガノイドは、すでに樹立したMET遺伝子増幅陽性の婦人科がん患者組織由来オルガノイドを用いた。MET遺伝子増幅はarray CGHおよびFISH法により明らかとした。また免疫染色およびwestern blotによりMET遺伝子の高発現を確認した。このオルガノイドにおいてCCC-002を評価したところ、細胞死が誘導されMET阻害剤よりも低いIC50値を示した。MET遺伝子発現を検討したところ、CCC-002により顕著に抑制されていることが明らかとなった。一方、他の婦人科がん患者組織由来オルガノイドの樹立も進めており、MET遺伝子非増幅のオルガノイドにおいてCCC-002の効果が弱いことも観察されている。これらの結果から、増幅遺伝子を標的とした薬剤開発において患者組織由来オルガノイドが有用であることが示され、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
CCC-002はMET遺伝子領域に結合配列を持つが、この配列がこれら遺伝子における最適な標的配列である保証はない。そこで今後は、それぞれの増幅遺伝子領域において結合配列をもつPIP-seco-CBIを複数選択し、それぞれの遺伝子に対する効果について、CCC-002と同様に評価する。また樹立を進めている消化器がんおよび婦人科がん組織由来オルガノイドにおいて、遺伝子増幅の有無を明らかとするため、qPCRおよびアレイCGHによる一次スクリーニングを行う。新規に遺伝子増幅が認められたオルガノイドについては、遺伝子発現の確認を行った上で培養をすすめ、遺伝子増幅陽性オルガノイド株としてライブラリー化を行う。また、新規増幅遺伝子の中で標的化が可能かどうか検討するため、遺伝子配列を精査し選択的に結合できる化合物の設計を試みる。
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