研究課題/領域番号 |
22K07246
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松本 孔貴 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70510395)
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研究分担者 |
東 大志 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (20613409)
熊田 博明 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30354913)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ホウ素中性子捕捉療法(BNCT) / ホウ素製剤 / 超分子構造 / フェニルボロン酸(PBA) / 加速器BNCT / 放射線治療 / 粒子線治療 / ホウ素中性子捕捉療法 / BNCT / 超分子 / フェニルボロン酸 / 放射線がん治療 |
研究開始時の研究の概要 |
BNCTの普及と適応拡大を実現し、より多くの患者に恩恵を届けるには腫瘍特異的集積性を極限まで高める新規癌ターゲティング技術の導入が必要である。そこで本研究では、これまでの研究成果に新たに ④PBAのみならずがん細胞に高発現する葉酸受容体も標的とした葉酸(Folic acid: FA)修飾=多標的化の実現、⑤超分子の変幻自在な動的特性を活用したPBAへの可動性の付与=がん細胞表面のシアル酸の“空間的”分布を察知した高効率な腫瘍選択性、といった2つの特徴を追加した高効率性・高有効性・高安全性を有しながらも低価格な未来型ホウ素ナノ製剤を検証する。
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研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、放射線治療の中でも1回の照射でがん細胞を選択的に破壊し、患者のQOLを維持できる治療法である。BNCTに使用されるホウ素製剤BPAは、がん細胞に高発現するトランスポーターを介してがん細胞に取り込まれるが速やかに排出され、高用量で持続的な投与が必要である。そこで、分子内にホウ素を有するフルオロボロン酸(FPBA)をポリロタキサン(PRX)に修飾し、がん細胞表面のシアル酸との親和性が高く、がん細胞選択的リガンドとして機能するFPBA-PRXを調製した。PRX中のCyDにFPBAを修飾しFPBA-PRXを調製し、FPBAの可動性が低い比較対照としてヒドロキシプロピルセルロース(CEL)にFPBAを修飾したFPBA-CELを調製した。両化合物を蛍光ラベル化し、細胞内取り込み及び担がんマウスにおける体内動態を検討した。in vitroにおいて、FPBA-PRXはシアル酸を介し、FPBA-CELより有意にがん細胞選択的に取り込まれた。また、担癌マウスにおいて、投与したFPBA-PRXの約15%が腫瘍に移行し、FPBA-CELの約7%より有意に高効率だった。ついで、FPBA-PRXの有効性を評価するため、担癌マウスを用いた中性子照射実験を実施した。BALB/cマウスの右脚大腿部にマウス結腸がん由来細胞 (Colon-26)を移植して担がんマウスを作成し、500 mg/kg のFPBA-PRXを尾静脈投与6時間後に中性子線を照射した。FPBA-PRX投与と中性子線併用群は、対象の中性子線照射群に比べ、有意な腫瘍抑制が確認された。以上より、FPBA-PRXは、FPBAの可動性によりがん集積性に優れ、BNCTホウ素薬剤として有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、がん治療において注目されるBNCTに使用されるホウ素製剤BPAに代わる新たなホウ素薬剤として、フルオロボロン酸(FPBA)をポリロタキサン(PRX)に修飾したFPBA-PRXを開発した。in vitro及びin vivo実験の両方で、想定通りFPBA-PRXががん細胞表面のシアル酸と高い親和性を示し、シアル酸を介してがん細胞内に移行することが証明された。また、中性子線照射実験も1回ではあるが実施することができ、FPBA-PRXと中性子線併用により、有意な抗腫瘍効果が確認された。これらの結果から、FPBA-PRXは、がん集積性に優れたBNCTホウ素薬剤として有用である可能性が一部証明され、本研究の成果は、がん治療においてQOLを維持しながら、がん細胞を選択的に破壊するBNCTの実現に向けて貢献することが期待される。総じて、本研究は、FPBA-PRXががん治療においてBNCTホウ素薬剤として有用であることを示し、研究の進捗状況は順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を推進のために以下の方策を実施し、FPBA-PRXを含むBNCT治療の開発を進め、がん治療のさらなる向上につなげることを目指す。 1.ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)におけるFPBA-PRXの有用性を検証するため、腫瘍モデル動物を用いたさらなる評価を行う。異なるがん種に対する抗がん効果の比較及び異なる投与量・投与スケジュールによる治療効果の検討を行う。 2.FPBA-PRXを含むBNCT治療の開発に向けて、化学的な合成法の改良を進める。具体的には、合成効率や収率の向上、製剤の純度の確保、安全性や安定性の向上などを検討する。 3.FPBA-PRXの機能解析を行うために、分子生物学的なアプローチを取り入れる。FPBA-PRXががん細胞のどの部位に取り込まれるか、どのような機構で取り込まれるかを解明する。 4.BNCT治療の普及に向けて、FPBA-PRXの正常組織障害を検討する。具体的には、治療対象となるがん種に合わせて、周囲および全身の正常組織障害(副作用)の評価を行う。 5.BNCT治療のさらなる発展に向けて、新たなホウ素製剤の開発や、BNCT治療における放射線照射条件の最適化など、さまざまな研究分野との連携を行う。
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